【 VINTAGE MOXON:K様のご注文 】
2024.04.02お客様のご注文
誂える上での最上級なステージとなるのが BESPOKE です。
洋服でも、靴でも、鞄でも、宝飾から車、家も、、、
専門技術者たる職人との二人三脚により、
お客様のご要望を最高のハンドメイドにて具現化されるのです。
様々な効率・簡略化と共に最大公約数的な企画により作り出される既製品とでは
ご満足度も違いがあって当然でなくてはなりません。
Duke of Windsor
昔ながらの 2面によるダブル型上着の型紙です。
型紙は設計図でもあり、お客様の体型的に関する様々な深き情報は勿論の事、
デザインやシルエット、バランス、そして着心地までをも左右致します。
ただし、設計だけが良くても仕立てが伴わなければダメですし
仕立てが良くても設計が良くなければ やはりダメなのです。
全てが高次元でまとまったとして、更にそれが顧客様にご満足頂けるのか、、、
とても難しく遣り甲斐のある仕事であり、知識や技術はあればある程に
顧客様の期待値を超える答えに近付ける術が多くなると言えます。
皆様 こんにちは、早くも4月に入りました。
今週は K様にご注文頂きました大変貴重な生地で誂えられた
エレガントな三つ揃いをご紹介させて頂きたいと思います。
K様におかれまして、当店でのBESPOKEは初めてのご注文となります。
極上の VINTAGE SUITING をご予約頂いており、いよいよ進行開始となります。
採寸のご当日、まだ出来立ての三つ揃いをご着用されて御来店下さりました。
実は英国:サビルローへ行かれた際に注文され、
仮縫いを経ていよいよお仕立て上がりが届いたそうです。
とても嬉しそうでご満足げなK様の笑顔が印象的でした!
現行のサビルロースーツを拝見する機会はそう多くはありません。
私にも 『見て欲しい!』 と言われ着て来て下さりました。
お写真も頂戴しつつ、その素敵なスーツを拝見させて頂いた次第です。
クライアントであるK様に対し
お店違えば、カッターやテーラーが違えば 様々な価値観と共に
回答たるアプローチがありますし、掛ける・掛かる時間も全然違います。
何が正解なのか、、、BESPOKEはご要望を伺いつつ ご注文主様の為だけに
仕立てられますので(表現・具現化)その答えはK様のみ出す事が出来ます。
私は愛弟子でありチームメイトの彼らにも見せたく お写真を頂きましたが、
BLOGをご覧下さる皆様も
超老舗の現行スーツを見るご機会は少ないのではないかと思いました。
とても良い機会ゆえK様にも『是非に』とご快諾頂きましたので、
今回は皆様も一緒にご覧頂ければと思った次第です。
クライアントは同じK様のご注文である事を前提に、価値観やアプローチ、
美意識含め 表現された それらスーツの違いを楽しんで頂けましたら何よりで御座います。
先ずは超老舗の名店、サビルロー製の三つ揃いをご覧頂きましょう!
グレナカートチェックのダブルブレストですね。
超老舗の名店ですが、現行では私の予想より遥かにモダンな印象を受けました。
クラシックは長い年月を掛けて変化して参りますので 当然とも言える訳です。
また、サビルロー含め 最近の多くの上着は冒頭の型紙写真と違い
3面設計にして細腹を入れたマニプレーション(和製英語)を施す
裁断法(型紙)が圧倒的に多くなっています。
ここでは語りませんが、やはり理由もあるのですね。
技術には 無限に時間を掛けられるわけでもないですし、
なかなか100点という手法が存在しにくいのです。
とある手法には メリットもあればデメリットもあり、何を尊重し、何を優先するのかにより
そのテクニック(技術・手法)をチョイスすると言えます。
それこそご要望頂いた内容や、モノ作りの価値観、美意識も関係して参ります。
K様、とても素敵ですしお似合いで御座います‼
皆様にはどちらで誂えられたスーツなのかお分かりでしょうか?
この名店の歴史から見れば、当店なんて生まれたての赤子ですね。
K様のご期待に添えるべく、そして名店の胸を借りるべく
私なりにM様のご満足を得られるよう全力を尽くしてお仕立てさせて頂きます。
= VINTAGE MOXON =
SUPER 120s WOOL
WITH VICUNA
ABOUT 330g
グレーのヘリンボーンにストライプが重ねられています。
この生地が織られた当時は高級な希少獣毛をブレンドし、
耳には金糸を使ってこれ見よがしに特別感や高級感をアピール!
競合多き当時、少しでも差別化を図ろうと
切磋琢磨に素晴らしい生地が沢山織られていました。
深き股上にゆったりとした吊り用の2-PLEATSです。
ウエストコートは襟付きのダブルブレスト、
センターシームを設け アルバートチェーンホールも携えます。
ノッチドラペルの三つ釦:本返りですが、
敢えて返り止まりは高めにリクエストを頂いております。
マニアックなご注文ですね、K様のお好みが垣間見れるというものです。
こちらは2回目の仮縫いですが、実は袖だけ別布を使用しています。
かなり珍しいケースですが、思うところがあり この貴重な生地は
買い足せませんので安全・安心の為に別生地裁断しました。
ここから微調整も入りますし、完成したボディーのアームホールに対して
袖の型紙を改めて引き直して袖の本裁断を致します。
K様はこの時点でも2店での違いを多く感じられている事でしょう!
不思議ですよね、自分は自分、変わらないのに
自分に作られた服の着心地やバランスは結構違います。
良い・悪いではなく、勝ち・負け でもありません。
それぞれTAILORの個性や価値観、
そしてK様より受け取ったご要望に際し どの様に表現されているのか。
判定を下せるのは やはりクライアントであるK様のみで御座いますね。
ではお仕立て上がりをご期待くださいませ!
サイドアジャスターをリクエスト頂きました。
後は名店に同じく ハイバックスタイル です。
腰への登りが腰にとても馴染んで綺麗です、腰の安定感がありますよね!
本日お履きの靴は個性的なブラックシューズ。
K様は靴もBESPOKEを嗜まれており、
同じく英国でご注文されて来られた靴も拝見させて頂きました。
顧客様の姿勢や脚のフォルムに合わせ 緩やかなS字を描く
クセ取りされたシルエット、これは筒としての太さにも そのクセ取り度合いは比例します。
折り返し付きの裾口は前後で3㎝の傾斜が付けられています。
こう見ると分かりやすいですね!
踵のホールド感を基準に股下寸法を設定すれば、
傾斜を付けていない場合は 写真の状態から前丈(靴の甲上)に 3㎝の長さが加わり、
結構ボリュームのあるクッションが付きます。
反面、軽いクッション度合いを尊重し、フロント側で股下を設定すると
傾斜を付けなければ 踵側が3㎝も短くなってしまいます。
このモーニングカットとも呼ばれる傾斜を付けた裾上げは
主にシングルでは一般的であり、その傾斜度合いも様々です。
例えばセレモニーなどで着用されるエレガントな軍服などは
相当量の前後差が付けられているものも御座います。
そしてこれらは前後差の度合いにより裾の上げ方も技術的に変える必要があります。
とてもエレガントでクラシックな顔立ち、ダブルのウエストコートは
前裾の剣が無い分 余計に腰位置が高く見え、足も長く見せます。
ですが、本来 一番重要な事はトラウザースとの連動性です。
仮縫い写真の時に少し触れましたが、
センターシームにはチェーンホールを開けています。
これによりシングル型のウエストコート同様に
ダブルのアルバートチェーンは左右均一になります。
同時にシームを利用し ほんの若干だけクセ取りを施し
曲線である身体へ寄り添わせる効果をもたらせます。
今回のスーツに付けられる裏地には、
昔ながらにアルパカの裏地をリクエスト頂きました。
K様、とてもお似合いで御座います。
ご要望されたイメージ(リクエスト)は線となり、仕立てで活かされます。
勿論 ご体型も前提である事は言うまでもありません!
とても素敵な笑顔を頂くと共に、大変お喜び頂けました。
これからは着る楽しみが待っています!
着れば着るほどに TAILORの価値感や表現力も より顕著に感じられてくるでしょう。
名店のスーツも、当店のスーツもK様にとっては記念すべき1st- BESPOKE です!
ここからは型紙を育てる楽しみもご堪能頂けましたら幸いです。
技術を担保に、型紙がある以上は これ以下のレベルに下がる事は絶対になく、
これが最低基準となりますので 以降は上げる・上がるしかないのですから。
BLOG掲載のご協力も含め、
此度は素敵なご注文を頂戴致しまして誠に有難う御座いました。
次のご注文はオーバーコートを頂戴しておりますが、
そちらも是非ご期待くださいませ。
1944 HENRY POOL
お楽しみ頂けましたでしょうか。
本当に沢山のTAILORが存在しますので品質もお値段も価値観も様々に全然違います。
知識と技術が伴えば基本的には何でも具現化できますし、
ご要望であれば その何かに寄せる事も可能です。
ただ、各TAILOR のもつテイストや価値観がご自身に合うところを
探した方が よりご満足が近いとも言えるでしょう。
お店選びは難しいと思いますし、何を基準に選ぶのか、、、
沢山のお店の中から『あそこなら!』とお選び頂けるようなお店になれますよう
これからも精進して参りますので、どうか引き続きよろしくお願い申し上げます。
今週も最後までお付き合頂きまして、誠に有難う御座いました。
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