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【 BLACKLOUNGE SUITS 】
2023.09.26 STYLE
9月も後半であり、先週末は秋分の日でもありました。 最高気温もやっと30度を下回る日が出てきてホッと致しますね。 さて、今週は私が個人的に大好きで 追及やまぬ念を抱くスタイルをご紹介させて頂きたいと思います。 紳士服は長き歴史の中で、常にカジュアル化の波が進行しています。 現代における正礼装、これはモーニングドレス(モーニングコート)、 そしてイブニングドレス(イブニングテールコート)のスタイルが君臨しますが 昔は更にその上へフロックコートが鎮座していました。 そのフロックコートが退き、その時代でのセミフォーマルであった モーニングコートやテールコートが格上げになりました。 この時点までで共通するのは『コート』というスタイルであるという事であり、 モーニングコートの別名は カット アウェイ フロックコート であるという事も付け加えておきます。 そもそも前裾含め長かったコートは乗馬の際に前裾が邪魔であり、 カットしてしまいましたので尻尾のみ その着丈を維持する形状になった次第です。 その堅苦しく丈の長いコートから楽に寛げる服をと考え、 コートの特徴でもある着丈(尻尾)を切り落とし LOUNGE SUITS という 今におけるコート(ジャケット)の外観が生まれます。 ・・・・・ここで理解しておくべき事があります。 日本において、スーツの上着は一般的にジャケットと呼ばれています。 そしてコートと言えば外套であり、着丈も長いものという認識ですね。 しかし、英国では(ラウンジ)スーツの上着自体をコートと呼び、 外套は外套であるからこそオーバーコートとなります。 イギリス英語とアメリカ英語の違いですが、日本では圧倒的にアメリカ英語が強いです。 更にもう一つだけ付け加えさせて下さい。 コートには中衣の上に上着として着用するボディーコートと、 コート(ジャケット)の更に上から着用するオーバーコートに分けられます。 前者はフロックコート含め、モーニングコートやイブニングテールコートがその範疇になり、 チェスターフィールドコートなどは後者の外套でありオーバーコートとなります。 DAY FORMAL フォーマルウエアは 『 DAY 』と『 EVENING 』に分かれています。 その機会である時間により装いが違うという事になり、 昔の人は一日の中で時間と機会により着替えていました。 その DAY FORMAL はモーニングコートが筆頭ながら、 そのポジションに対しやや砕けた下のポジション( SEMI FORMAL )が BLACKLOUNGE SUITS となります。 このブラックラウンジスーツに対する装いのルールは モーニングコートのスタイルにほぼ同じであり、上着の尻尾があるか無いか、 これが最大の違いと言えるでしょう。 尻尾の無い上着のスタイル、これが BLACKLUONG SUITS なのですが、 英国的呼称であり 米国では STROLLER(ストローラー)、 欧州各地では STRESEMANN(シュトレーゼマン)とも、 そして日本では DIRECTORS SUITS(ディレクターズスーツ)が一般的でしょうか。 尻尾の無い黒い上着、中衣も昔は上着に同じく黒ですが 今では別の色を用いる事もありえ、ここもモーニングドレスのスタイルに同じです。 下物は共通してグレーの縞柄(コードストライプ)のドレストラーザースとなります。 (こちらも昔は小格子柄なども合わされていましたが、 コードストライプが生き残ったと言えます。) 3のイラストでは、中衣であるダブルのウエストコートが見えますが バックレスで仕立てられているのが見てとれます。 その左、マチ針の様な、、、これは(アスコット)タイ・ピンですね。 呼称において、ラウンジスーツと言えば尻尾の無い上着のスーツを全般に表しますが、 ここにフォーマルウエアの色でもある 『ブラック』 を付ける事により 総称とは明確な違いを見出したとされています。 故に ブラック というのはスタイルやポジションを表しますが、 必ずしも黒に限定されたものではありません。 ブラックを筆頭に、チャコールグレーなどがそれに当たります。 ディテールについて、これはモーニングドレスを念頭においてみると シングルブレスト / ピークドラペル / 一つ釦 が順当な系譜である様に見る事も出来ます。 しかし、そもそもラウンジスーツに『ブラック』と差別化されたわけであり、 初期のスタイルではノッチドラペルが多く、30~40年代になると その時代では人気であったピークドラペルが幅をきかせます。 同じ様にフロント釦も一釦だけではなく、二釦、三釦もあるわけであり、 シングルブレストだけに限らず、ダブルブレストの上着も有り得ます。 当時のバックスタイルでの多くは NO-VENT であり、 シンプルかつエレガントです。 ドレストラウザースの灰色、そして縞柄、 これらも基本モノトーンばかりが生き残っておりますが、 昔は控えめですが色縞入りもありましたし、 グレーのトーンや縞柄の太さなどでフォーマル度合いや 慶事・弔辞で向き・不向きなども区分けする事が出来ます。 今となってはグレーの縞柄(コードストライプ)であれば みな一緒くたですね。 実にエレガントで控えめ、特に昔は弁護士や公務員の方などが好んで着用されました。 ブラックスーツ(ダークスーツ)の下物を履き替えるだけ、 それだけでセミフォーマルとしての厳かな装いへとなるわけです。 最高にエレガントであり、言葉も出ぬほど惚れています! 当時のリアルな写真をみれば、冒頭のイラストが かなり忠実に描かれているとお分かりいただけるでしょう。 写真にてご登場頂きました英国首相をも務めたチャーチル氏やイーデン氏だけではなく、 時代を跨ぎ 他の欧州の代表者(独:シュトレーゼマン氏)や米国の大統領まで。 日本ではある意味独自な洋装解釈も多々ありますが、 洋装文化の根底無きゆえ仕方がない事なのかも知れませんが、、、、 昭和初期くらいまでは結構確りとしていたと思います。 その日本でもブラックスーツというポジションは今でも健在であり、 多くの方々が所有されておられる事でしょう。 このスタイル(ポジション)は厳密にはブラックに限らず、、、 という事になりますが、そんなブラックスーツにドレストラウザースを 合わせるだけで楽しめるのも このデイ・セミフォーマルだと言えます。 黒ではなく、限りなく黒に近いチャコールグレーを 選んで三つ揃いを仕立ててみては如何でしょうか。 黒を着ていると慶事や弔辞ですか? と言われそうですが、 チャコールグレーであればビジネスの場においても目立ちすぎる事なくご堪能頂けるわけです。 ( 実際は目立つかもしれませんね、昨今では、、、。 ) カジュアル化が進むからこそ、敢えてそんなエレガントな装いに拘りたいのです。 しかも強き『黒』ではなく、限りなく黒に近いエレガントなチャコールグレーにて。 ・・・・・そんなポジションたる装いのお話でした。 多くの皆様はスーツの本当の魅力を、歴史を、力を理解されておりません。 特に不便も問題もないからですが、私にとってはとても勿体無いと思います。 今からでも遅くありませんし、改めてスーツの魅力を探求するのも 衣・食・住の『衣』を充実させる事でもあると思います。 ですが皆様が急に勉強する必要もありません、 分からなければTAILORに、知る人に聞けば良いだけです。 だからこそTAILORは専門職種でもあり、技術だけではなく 歴史的背景やセンスさえ磨き続ける必要があります。 勿論フォーマルに限った事ではなく、ご自身のエレガントで意思・意図の通ったお姿より 今まで気付かなかったご自身の魅力さえ引き出される事であると思っております。 では また後述に繋げたいと思います。 今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。 ・・・・・次週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。 次回は 10月10日(火) を予定しておりますので どうか引き続き宜しくお願い申し上げます。
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【 ESCORIAL:SUITING 】
2023.09.19 生地に付いて
= エル・エスコリアル修道院 = この美しい宮殿は 16世紀にスペイン王によりマドリードに建設されました。 今では広大な宮殿、修道院、博物館、図書館などからなる複合施設となっているそうです。 ユネスコの世界遺産でもあり、極めて人気の高い観光スポットでもあります。 その昔、寄贈された個体の小さな羊をスペイン王は王室専用にと敷地内で育成する事にし、 その羊たちは『エスコリアル』と名付けられました。 この羊から採取されたウールは正に別格で特別なものでありました。 軽く、柔らかく、そして伸縮性の高さに秀で、 しなやかで正にカシミアの様なタッチは王族や貴族たちを虜にします。 エスコリアルの毛(繊維)はとても縮れ毛であり、コイル状に巻かれたバネのようです。 これが独特な高い伸縮性に繋がっており、同じ型紙でエスコリアルウールと 他のウールを着比べた場合 生地(羊毛)の性能差で動きやすさが全然違うとされます。 また、カシミアの様に繊維は細く シットリとした最高の肌触りでありつつも 実はウールですから弾力性と共に耐久性的な側面もウールに同等となります。 美しきドレープを生み、軽くて動きやすく、しなやか極まりなき夢の繊維、、、 それがエスコリアルなのであり、王家の羊とも言われる由縁です。 当店でも多くのエスコリアルを扱って参りました。 このエスコリアルに対する詳しき蘊蓄は 下記リンクよりご参照頂けましたら幸いです。 http://dittos.seesaa.net/article/481995724.html 【 ESCORIAL:JACKETING 】 http://dittos.seesaa.net/article/482531122.html 【 ESCORIAL:COATING 】 現代のスペイン国章にも描かれている幻獣の様な、、、 これはライオンさんであり、エスコリアルの紋章にも使われています。 この度も光栄なご縁により、夢のスーチングをお得に 入手する事が出来ましたので是非ご紹介させて頂きたいと思います。 ネイビー系 3種、グレー系 2種、計5種をとくとご覧下さいませ。 PURE ESCORIAL WOOL 250/270g 経緯共に双糸使いで確りと織られた英国製の生地、 このウエイトは 4シーズン用 とも言われています。 300g前後で3シーズン用ですから頷ける事ながら、昨今の日本では 春秋が短くなり、残暑含め夏場が長くなってきている印象を受けます。 そういった側面から見れば、このスーチングは正にこれからの気候変化に伴い 必ずや重宝頂けるウエイトでもあるという見方も出来ますね。 深きダークネイビー地は細い縦畝を表現したコード織りの生地。 有名なのは乗馬服でも使われているBEDFORD CORD が頭に浮かぶでしょうか。 厳密には平織と綾織を融合させた織地であり、 デザインの如く縦に安定感が頗る高くてコシもあると言えます。 原毛の細さ故、とても上品な光沢感に富み、光の陰影を美しく奏でます。 無地ながらも大変表情のあるスーチングであり、 これを最高なエスコリアルで味わう贅沢を是非ともご堪能下さいませ。 こちらも無地範疇で更に深きダークネイビー地です。 目を凝らすと見えてくる独特な織り地、 一見は細かく正確に整った蜂の巣⁉ のようでもあります。 これは ピケ(PIQUE)ですね。 刺し子繍された意味のフランス語に由来し、浮出織りとも呼ばれるそうです。 縦・横・斜など 畝で表現し、表面に凹凸を持たせた織地となります。 ピケについて、これはかなり広範囲に使われる語であり、 厳密に言えば先に紹介したコード織り(BEDFORD CORD)も入ります。 一般的にはワッフル、ハニカム、スモールダイヤモンド(マルセラ:MARCELLA) などが挙げられ、織柄が細かいほどにエレガントになります。 この凹凸により光沢感は落ち着いてなりを潜め、 いぶし銀かの如く 落ち着いてじんわりとした表情を奏でます。 正礼装のイブニングフォーマルで着用されるテールコートには、 コットンで織られたホワイトピケの生地を使い、シャツやウエストコート、 ボウタイを仕立てて合わせられる正統的なフォーマル地があります。 通称ホワイトピケと日本では呼ばれていますが、 これが英国ではMARCELLA(PIQUE)となります。 そんなエレガントなポジションたるピケのスーチング、 様々なシーンでの活躍が見込まれますね。 アクセントとなるロイヤルブルーの色が効いたモダンなグレナカートチェック、 そして目立つ事なく 隠れ過ぎぬ重ね格子も入った美しき格子柄です。 ネイビー地ですが、グレー味も入って絶妙にくすんだ感じが何とも言えず、 ニヒルかつ妖艶な雰囲気を漂わせます。 先にご紹介した2種は大変エレガントなポジションですが、 格子柄ですから肩ひじ張らず気楽に着用でき、されど品良くまとめられた様は ビジネスシーンでも大いに活躍してくれる事でしょう。 このロイヤルブルーが上手いですね、、、渋くさせ過ぎず、派手な若々しさもなく、 正に大人の着るべき格子柄スーチングです。 では次にグレーの2種をご覧下さいませ。 グレーにはグレーの魅力が溢れています! エレガントなチャコールグレーにきられたクラシックなピンストライプ。 このストライプの色がまた大変映えて 堅苦しくもあるダークさに彩を与えてくれています。 このロイヤルブルーは先の格子柄で使われていた色味に近く、担う役割も重なります。 ストライプはクラシックな種類だけでもピン・ペンシル・チョークなど様々にありますが、 個人的にはこのピンストライプが一番好きであり、一番縞が細く繊細です。 この縞がアイボリーやライトグレーであれば この色気は出ません。 出す必要が無ければそれまでですが、このエスコリアルでは出したいのでしょう。 コントラストが強過ぎないピンストライプは 弱く細い縞なので遠目には溶け込んでしまいます。 だからこそ、近くで見た時のささやかなインパクトが効くわけです。 お手持ちのブルー系シャツは驚くほどの抜群な相性を見せ、 鮮やかな色味(縞色)にも関わらず それを微塵も感じさせません。 高貴なエスコリアルだからこそ、この色気がより美しく調和するというものです。 最後のご紹介となります。 これも美しく素晴らしい生地であり、グレーだからこその落ち着きと渋みがたまりません。 トーンはミディアムか、ダークというべきか 暗すぎないグレー地に シャドーチェックが施されています。 近くでよく見ないと分からぬレベル、こういったテイストはTAILOR泣かせでもあり 裁断も縫製もキツイ戦いになるでしょう(笑)。 されど、『あれっ、よく見ると・・・』 これがキモなのですね。 その魅力を尊重し、頑張るしかありません! ベースの織はPICK&PICKに同じであり、程好きミックスされた 細かき霜降り感が よりグレー味を際立たせます。 離れればPICK&PICKのスーツにも見えるかも知れませんね。 こういった目立たぬ名優こそが優れた映画に魅力的なスパイスを与えているのです。 (主演は常に御着用者様であります。) 色味も濃すぎず、正に普段使いのスーツとして 頼りになる存在になる事は言うまでもありません。 こんなにも有能な名優を相棒に持つ事が出来たなら幸せな事でしょう。 ・・・・・如何でしたでしょうか、王家の羊を是非味わってみて下さい。 王が囲った特別なエスコリアル、一時的には絶滅したとされていました。 幸運にも生き残っていた純血種がおり、管理し守りながら大切に育てられています。 されど現存する全ての羊という括りの数からみれば 1%未満に過ぎません。 確かに贅沢品ではあります、あるからこそ この御機会を幸運な縁と捉えて頂けましたら嬉しい限りで御座います。 VINTAGE SAVILE ROW 古き良き伝統的でエレガント、タイムレスなスーツスタイルに対し 個性とモダンを加えたONLY ONEを求める皆様へ、、、 ご来店を心よりお待ち申し上げております。 今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。
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