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2022/01

Bespoke Tailor Dittos.
  • 【 BUSH JACKET ③ 】

    2022.01.25 Bespoke Tailor Dittos. STYLE

    【 BUSH JACKET ③ 】

          まだまだ寒い1月の後半では御座いますが、 2月にも入れば巷では春物の立ち上がり商品が並び始める事でしょう。   今週は、BESPOKE TAIOIR が生み出す当店初となる既製服として いよいよ今春デビューに向け 着々と準備が進んでおります 【 BUSH JACKET 】の続きを御紹介させて頂きたいと思います。           KHAKI BUSH JACKET = 1950 PATTERN =           ・・・・・無から丸ごと再生したいガーメント(BUSH JK)があります。 先ずは生地、そして設計(型紙)、縫製仕様を考えつつ準備を進めて参ります。   BESPOKEでは自分が分かれば、出来れば良い訳ですが、 既製品扱いという事は縫製工場さんへ加工委託させて頂く事が 前提となりますので 準備する事柄も山の様に膨らみます。 そして、人様(工場さん)へ拘りと情熱をも含めて 確りとお伝えさせて頂く事がとても重要な事となります。   この度は実益も兼ね、私自身がプロトタイプをこの手で仕立てる事により 全ての具合を確認出来つつ このサンプル自体が工場さんでの大いなる参考ともなる筈です。   という事で、ハンドメイドで仕立ててみました! 兎に角 出来る限り忠実に再現しつつ、ちょっぴり洗練感も出したいです。   リアルガーメント(古着)の持つ歴史から着心地、機能性、格好良さ、そして説得力、、、 全てを踏まえ、兼ね備えつつ それが新品である事。 MY SIZEでHANDMADEであれば正にオフィサー仕様!? (笑)。     今週で3話目となる御紹介ですが、特に2話目を見直して頂けると 再現レベルの高さと拘りが伝わりやすい事と思います。   http://dittos.seesaa.net/article/484599000.html 【 BUSH JACKET ① 】 http://dittos.seesaa.net/article/484793225.html 【 BUSH JACKET ② 】             ・・・・・先ずは生地であるセルラーコットン、 もうAIRTEX社から生地が調達出来れば早いのですが、 調べたところ 随分前から生地は作っていないとの事で、、、、 敢え無く撃沈。 それに代わる生地や素材が出て来てしまったので抗えきれなかったのかも知れません。   私のレベルで調べた限りでは、英国内でセルラーコットンを織ってくれる所を 残念ながら見つける事は出来ませんでした。 ですがイタリアでは既製の生地でも似寄りで良ければ手に入るのです。 そして拘りと共にオーダーとなると、、、ロットが半端では無い事、 そしてイタリア製の生地にしてしまう事自体に抵抗があります。 困りました、突然暗礁に乗り上げます。     !!! であれば、、、。                 ・・・・・世界に誇る日本の技術、、、、 まだまだ様々な分野で日本の技術者、職人の方々が沢山いるではないですか。   日本の尾州といえば奈良時代から繊維産業が盛んな地域であり、 今でも多数の素晴らしい織物工場が頑張って活躍しております。 海外からの評価も高く、超一流メゾンなどにも生地を提供しています。       Kuzuri   見えますでしょうか!? 生地好きの方々には既にお馴染の有名どころでしょう。 1912年創業の老舗 葛利毛織さんに苦労の末 何とか復刻して頂いたのです!!   こいった老舗の長き歴史や技術に裏打ちされた御経験があれば、 生地を分析して同じ様に改めて生み出す事は そう難しい事ではないのでしょう。 現に TAYLOR & LODGE でもそうでした。 ただ、手間とコストも天秤に掛ける必要がありますし、 そもそもこういったセルラーコットンなんて同社でも慣れていない生地である事は明白です。     もう熱意を持ってお願いするしかありませんでしたが、 何とかご協力して頂ける事になりました。 本当に感謝しております。   先ずはAIRTEX社のセルラーコットンを分析すべく、 スワッチ(生地の切れ端)が必要です。 古着のBUSK JKは2点所有しているので、その内の2軍から現物生地を提供させて頂きました。   糸の太さや撚り、織り含めた組織や打ち込み分析、 そして 調達した糸をリクエスト通りに染色、 いよいよ織り上げてフィニッシング、 様々な工程を経てサンプル反が織り上がって参りました。         掛け値なしで この再現力の高さに感動いたしました! とにかく嬉しくて、、、感謝しかありません。 本当に凄いです!   色々と問題やご苦労が多々あった事は言うまでもありません。 渋がる棟梁の声もお聞きしつつ、、、それを乗り越えて頂き、 正に今目の前に復刻されたセルラーコットンがあるのです。 心より感謝しております。   これで改めてこの世にBUSH JKを生み出せます!           BUSH JKを作るにあたり ①②話では沢山のリアルな古着をご覧頂きましたが、 その多くは いや全てはパッカリングがエイジングの味として不可欠でもあります。 オフィサー仕様では無いブロードアロー物は全て既製服であり、大量生産品です。   暑い地方で活躍する服ですから 何度も何度も洗濯を繰り返します。 縮みも大いに貢献し良い塩梅でパッカリングも出てくる訳ですね。   という訳で 私が生み出すBUSH JKも同様です。 洗ったら縮む、だからこそ それを見越したサイズで設計しなければ成りません。   織られた生地の幅は織機により決まります。 長さ JUST  1m で貴重なサンプル反を裁断し、早速 洗濯です!   湯通ししつつ 計2回洗い、これで縮率データをとります。 凄く縮みます、縮みました!   縦横の縮率を把握したら 次は設計です。         ・・・・・洗い込まれたリアルな古着、その結論的なサイズ感、 超細かく様々な個所を計測し、1950 PATTERNの型紙を分析します。 元となる原型は英国裁断書を参考に上記得た情報を落とし込んで 1stパターンの完成です。 シーチングでトワルを組んで確認、若干 型紙修正を得てMASTER PATTERNが引けました。     更に次は このMASTER PATTERNに縮率を落とし込んで また引き直しです。 細かなパーツ含め、縮率が加味されたパターンを全て引きます。   これでやっとプロトタイプを仕立てるべく、裁断へ進行できます。   文章で書くと早いですが、隙間時間にコツコツと、、、、、 時間は相当掛かります。                   ・・・・・プロトタイプ、やっと仕立て上がりました!     BUSH JACKET ② でのリアルな古着と見比べてみて下さい、かなりの自信作です! 再現者が技術を持ったオタクであればある程に 深度が違いますよ(笑)。   結論 3サイズ展開しますが、これはマスターとなる中間サイズです。 そして私自身が着用しますし、洗濯も致します。 着心地や動きやすさ、そしてエイジング含め 全てを検証して参ります。 (ですが寒すぎて まだ試し着くらいですが、、、。)     BUSH JKは完成品を洗濯して縮める事がミソとなります。 という事は、製作段階で出来る限り縮めたくはないのですね。 故に、水もスチームも一切使わず ドライアイロンのみで仕立てます。   これはコットン(植物繊維)だから出来る事であり、 熱だけでも多少縮むでしょう。 サラリと仕上げる必要があります。     では、取りあえず プロトタイプは私が仕立てるので全てハンドという事になりますが 生み出される過程もご覧頂きましょう。   本当に極一部のチョットした所だけ、、、、グレードアップしています。         各パーツの接ぎ目(縫目)は織り伏せという手法により強度と共に、 裁ち目を綺麗に隠す縫い方になります。 ドレスシャツの脇や袖下などに施される縫い方であり、それの幅広版ですね。 工場さんでは専用のミシンが有るのでスルッと簡易に出来ますが、 ハンドだと一度地縫いして縫代を折って巻き込んでステッチ押さえ、、、 という流れになります。   時間が掛かります、だからこそ釦ホールなどに同じく マシーンが開発されるのですね。 これにより 大量生産=安く出来る という事になります。   この写真は既に脇入れです。 前身頃は各ダーツ処理、力芯当て、 ポケット付け、身返しで前返しされています。   裾には小さなサンドベンツ、背中の左右にはプリーツが畳まれ、 肩ヨークとも既に合体されています。         脇織り伏せ & サイドベンツ これら沢山の写真は中間工程さえも工場さんへ渡せます。 ただ、あちら様も勿論プロですから大抵の物・事はサンプルを見れば分かります! (ですが、仕事上では縫製仕様書も改めて作成しなければ成りません。)       ハンドだと取りあえず躾してしまいますね、、、。 勿論 リアルな古着に全く同じ作りです。 全ての工程に付き 綺麗に、丁寧に、正確に出来ますが、時間が掛かります。   工場さんでは これらをどれだけ効率良く綺麗に早く作れるのか、 ここに頭を使います。         左側胸ポケット、左上の楕円はアームホールであり、白糸の印は袖付けに使う合印です。   フラップの両端には閂を入れました。 古着は省略されていますが、やはり入っていた方が見栄え含め 実用的にも良いに決まっているので取りあえず入れますね! 釦ホールもマシーンが無いのでハンドホールになります。 スーツ等はシルクの糸を使いますが、これはもっと強度があって シルクの様に光沢感もないスパン糸を使用します。     左前身頃フロント、及び腰ポケットフラップが見えます。 こちらにも閂を。 フラップ等の角丸自体もR加減を忠実に!         胸・腰ポケットも、蓋を捲ればポケット口に補強の閂です。 本当に使う事を前提とすれば 閂は入れるべきです。           古着のオリジナルをイメージに、今回ネームも作りました! 拘りはですね、生成りの綿地で 敢えてチープなプリントのネームです。 古着もみなそうですが、織りネームと違い 洗濯でどんどん字が薄くなるでしょう。 それが、それで良いのです!   2022 これは開発、製作されたという年号ですが ブロードアロー物にもみな製造年、工場名と共に責任もって記載されています。         左前身頃裏側です。 胸部、腰部のポケット口に補強用の共地力芯の帯が 前端から脇まで付けられています。 これは主体となる地の生地がデニムの様に頑丈でない限り 補強の為に行われる手法であり、サープラスやワークエアでも 頻繁に見受けられる事でしょう。         クズリさん製のセルラーコットン、素晴らしい雰囲気です。 通気性の高さもオリジナルにそのままです。         左右前身頃、後身頃が合体し、次は肩入れです。 肩が結合するとアームホールが生まれます。 これで7合、8合目位まできました。         各ポケットはですね、、、外回り量が加えられて据えています。 ハンドだと 当たり前の行為であり、呼吸するかの様に普通な事柄です。 こういった言わねば分からぬ小さな技術が自然に内蔵されていると言えます。           ウエストベルトも予め作っておきます。 このハトメ(菊穴)もマシーンが無いのでハンドでかがります。               袖も同時進行しておきます。 バレルカフスにケンポロでシャツの様に腕まくりがしやすいディテールとなっています。 ここはかなり機能性向上に貢献した1950年型の進化ですね。           当店ドレスシャツのケンポロ(丸ポロ)袖開き止りにも閂が施されていますが、 こちらも当然閂を入れておきます。 袖のアウトシームになぞる様 袖開きが作られています。           袖が出来ました。 袖山は低く、かなり腕が上げやすく動きやすい設定です。 シャツの袖は1枚袖ですが、こちらは2枚袖でジャケットに近く 腕に伴った緩い 『くの字』形状を描け、シャープで綺麗なシルエットを生み出します。   これ、、、私個人分なので 袖丈は長いです! 自分に合わせてありますが、既製サイズはもう少し短く。   また、私は右肩下がりですが こんな所もちゃっかり 右肩下がりで仕立てられているのでした(笑)。         肩を入れ、袖を付け、そして衿を付けました。 最後にベルトを付けて組み上がりです。             ベルトも付けました。 バックルは、2話目でも書きましたが 金属製は重過ぎ、強過ぎ、BUSH JKにはパワーバランスが著しく合いません。 その支障(解れ・破けなど)が古着には多く出ている個体が沢山あります。     故にここも変更箇所であり、軽くて丈夫で見栄え良くテイストが合うものへ。 レザーでトリミングされたバックルは 英国サープラスガーメントにちなんで2爪です。 トレンチコートなどでも多く採用されているタイプのバックルですが、 あちらは1爪ですね。 このバックル自体はベルト裏側のボタン一つで簡単に 着脱出来るので、洗濯時には外します。 古着もそうなっているので着脱は楽な分、 古着としてはバックル紛失個体がやはり多いです。   そして このウエストベルト、背中から脇までBODYに縫い付けられています。 縫い止められていないベルト先は動き、 遊んでいるので縫い止まりには随分と力が加わります。 (バックルが重ければ尚更ですね。)   縫い止め部は力芯を兼任させる為 脇ダーツの縫代を有効利用しつつ、 ステッチワークでも補強工夫を施し、更に閂で万全に 目立たぬグレードアップを図っております!           内側衿腰には衿吊りループをオリジナル同様につけてあります。 この衿腰部のみ、実は共地の力芯を抱かせているので 返り具合・落ち着きに伴う安定性が向上されています。 ここにも目立たぬ工夫とテクニックを!         やっと、やっと完成です!!!             先ず 下記は『古着』であり、柔らかくて良い意味でクタっとしています。 リアルでオリジナルのガーメントであり、1967年製です。     年代と工場が違えば同じ1950 PATTERNでも多少違いがあります。 これは工場さんのレベルや価値観の違いがモロに出ています。 この1967年製 古着をメインに 2話目を御紹介致しました。     次の写真が『自作のプロトタイプ』です。             完成し、1回洗濯しました。 洗い加減はまだまだこれからですし、 着込めば着込む程にクタっと感が増してくる事でしょう。 着るのが、育てるのが楽しみでなりません! 無から やっとここまで来ました。         最後に小さなアップデートをもう一つ、 プロトタイプには顎グセを入れました。 1950 PATTERN以前の物は顎グセが入っていましたし、 やはり入っている方が立体的でもあり身体に馴染みます。 他にも別のメリットがありつつ、この縫目一本で格好良さが増します。 (と思っています!)   それ以外はかなり忠実です。 古着の釦にかなり近い英国製の釦をわざわざ取り寄せて採用しています。   釦も似寄りの国産製が多々あるのですが、微妙に違うのですね。 なのでコスト高にはなりますが 自己満含めて英国物で!       脇ダーツはアームホールまで到達していません。 脇下が無駄にゴロゴロと堅くなる事も無く、スッキリとしますよ。 アームホール自体も織り伏せ始末なので 出来れば厚くなる縫代は軽減したい所です。             ベルトを止めていない感じです。 ベルトを止めず 邪魔である様なら、腰ポケットに突っ込んでも良いですし、 背中で留めてしまうもの有りとはなります。 トルソーが小さいので あまりシルエットが出ませんが、 結構なシェイプがカット的に入っています。                       内側は見事なまでにスッキリとシンプルです。 便利な内ポケットもありません。 縫代は全て織り伏せ含めシャープに始末され、勿論裏地も無く、肩パッドも無く、 共地力芯はありますが 当然接着芯などは絶対に使いません。 (勿論 量産品もです!) 究極にシンプルで正にシャツジャケット、地肌に直接でも着用出来ます。                     ・・・・・如何でしたでしょうか。   既に工場さんでも この私製プロトタイプなるサンプルもお渡しし、 試作反の生地で 1stサンプルを作って頂きました。   上手くて小回りも効き、腕が良いのでこういった面倒臭いサープラス物も 手掛けている素晴らしい工場さんです。   これから本生産が始まります。   サイズ展開は 5 ・ 7 ・ 9 の3サイズ展開です。 ネームには参考値としてオリジナルに同じく胸囲・腰囲の数値が入っていますが 分かりやすく S・M・L と御認識下さい。       店頭デビューは4月か5月頃を予定しております。 お値段もまだ決まっておらず、これから計算しますが 【小ロット生産】これが響いてしまうのは否めぬ事実ながら、 こんなにも高い復刻率のBUSH JKは絶対に無い筈です。   食材たる生地などもそうですが、同じく重要なのはカットです。 表層的なデザインやバランス、ディテールを追っかけたレベルだけであれば 探せばもっと安価でいくらでも見付けられるでしょう。   しかし、BESPOKE TAILORが生み出した物はあまり無いと思います。 私が好きで生み出す分、それだけ深く拘りが満載されています。 繰り返しになりますが、オタクな技術者だからこそ 深度のレベルが段違いの筈です。   現時点では サイズ 7(M)でしたら店頭でもご試着頂けますので ご興味が御座いましたらお気軽にお声掛け頂けましたら幸いです。         BUSH JACKET ④ では、 このアイテムの幅広い活用性(着こなし)を御紹介しようと思っております。   今春デビューです 、是非ご期待下さいませ!!           では、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。 今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。                      

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  • 【 LOVAT TWEED:5P-SUITS 】

    2022.01.18 Bespoke Tailor Dittos. お客様のご注文

    【 LOVAT TWEED:5P-SUITS 】

        寒中見舞い申し上げます。 店頭では 梅ちゃんの花が開いて参りました!     明後日の1月20日には『大寒』を迎えます。 2月4日の立春まで 一番寒い時期とされていますが、2月はまだまだ寒く もう少し寒き冬を堪能致しましょう。   こんなにも寒い時期では御座いますが、店頭の生地も今月末までには 秋冬から春夏生地へと入れ替えさせて頂く予定で御座います。   2月14日まで、H.S.ORDER限定による【早期受注キャンペーン】も開催中で御座います。 宜しければ是非この機会を御利用頂けましたら幸いです。                 ウインザー公ご夫妻です。 公の着用されているスーツは今の時代 ほぼ見られませんね。 シングルブレストの2釦ですが、2個掛けです。 釦ポジションはWラインを跨ぐ高い位置に設定されています。   通称 パドックカットと呼ばれますが、認知度含め一般的ではないでしょう。 当BLOGでも4話くらいにあたって掲載致しております。   http://dittos.seesaa.net/article/418036041.html 【 PADDOCK CUT 】   1920年~30年代には極一般的なデザイン・仕様の一つとして 普通に着用されていた2釦スタイルですが、これが今では釦ポジションは下がり 上一つ掛け・下は飾りで留めない というスタイルで落ち着いています。   パドックカットは こういったカントリースーツは勿論の事、 ビジネスシーンなどでのダークスーツでも採用されていました。 A.イーデン氏も有名な御愛用者ですね。   公の着るこの上着にはもう一つ特徴がありまして、腰ポケットをご覧下さい。   傾斜の付いた スラントポケット は今でも普通に見受けられますね。 しかし このポケットはカーブを付けて仕立てられています。   クレセントポケット(ハーフムーンポケット)などと呼称され、 このカーブを『三日月・半月』で表しています。           公のワードローブは膨大ですが、パドックカットの服も少なくはありません。 こちらのカントリースーツはベージュとブラウンの格子がそそるツィード、 プラスフォワーズ(4より6気味!?)でのスーツで誂えられています。   時代的な部分(カット)も踏まえ、ラペル幅は比較的にシャープであり、 ゴージラインの鋭角な傾斜角度なども特徴となり、 やはり打ち合いも今より深めにとられています。             さて、大変博識で御自身のスタイルを若い頃より確立されておられる大変お洒落なH様より この度も素敵な TWEED SUITS をご注文頂きましたので御紹介させて頂きます。             ヴィンテージと呼ぶほどでは無いレベルでの 古い LOVAT TWEED は、 ベージュとブラウンが美しきコントラストの クラシックなハウンドトゥース(千鳥格子)柄です。 LOVATと言えばスコッチツィードの雄ですね。   イメージは正に公のスタイルよりリクエスト頂き、 私なりにH様だけの服へと落とし込みさせて頂いた PADDOCK CUT です。   手前味噌ながら本当に渋くて素敵です。 釦は2個掛けであり カチっと打ち合いは定まり、 Vゾーンも小さくなる分 引き締まった印象になりますね。         先ずは裁断です。 全ての生地は『地のし』と言い、縮絨を掛けつつ 地の目を整えるという工程が必須となります。 その後に生地を冷ますと共に寝かせてから裁断です。 格子柄は縦横 直角、、、であってほしいのですが、生地は巻かれて保管されていますし、 何かと歪みつつ、ミミ側とワナ側では格子感覚さえズレていたりもします。   格子柄ですから 本当に様々な個所で柄合わせが必要です! その為にも 正確な裁断が無ければ成し得ないのですね。   縦地、そして横地、 直線具合と直角具合を合わせつつ型紙をおいて線を引きます。 更に本来は左右で2枚取り裁断しますが、柄物は片方1枚で裁断し、 左右パーツの柄をキッチリと柄合わせして 残りの片側裁断を致します。   この1枚裁ちは縞柄や格子柄には不可欠な手間であり、無地では行われない事です。 表裏では案外本当にズレているので、それだけ注意して裁断しなければ成りません。   という事は、、、、無地も実はそれだけズレているが、 見えない・分からない という事になります。 こういった柄物裁断の経験値を無地裁断では出来る限り予測対応する事になります。             仮縫いが組み上がりました。 H様の御注文の多くは スラントポケットを採用されていますが、お好きな指定角度が御座います。 今回は その指定角度から乖離し過ぎないレベルで カーブの付いたクレセントポケットにてご注文を頂戴致しました。           今回のご注文は 3Pに加え、ご覧のプラスフォワーズ(+4)、 そしてFLAT CAPにて 計5P-SUITSでのご注文となります。   +4は海外含めカントリーサイドへ御旅行なさる時などに御愛用下さっておられ、 素敵な写真も送って下さり光栄な限りで御座います。 (もう随分と欧州には行けておられませんから寂しいですね。)           いよいよ仕立て上がりました。 胸のウエルトポケット、柄が合い過ぎて 無いみたいです(笑)!   この堂々としてハッキリとした格子、サイズも大柄に感じるかも知れませんが、 逆にカントリースタイルですし この位ないとパンチ不足です。 この柄サイズだからこそ、美しきコントラストも生み出せるのですね。 もっと拡大しないと分かりませんが、TWEEDゆえ 絶妙にミックスされた糸で(特にこのブラウンは)表現されています。   シャープなノッチドラペル、鋭角なゴージライン、お好きな方々は こんな所にまで目を向けておられますし、本当に良く研究されお詳しいのです! それだけお好きであり、拘りがお強い訳ですね。 逆を言えば、こういったご注文になると カッターが理解出来ていなければ 上手く具現化出来ず 説得力も乗りませんから お店選びは自ずと大切な事になるでしょう。           胸部のボリュームがとても綺麗に出ています。 横地はどこまでいっても限りなく 真横に見える事、、、とても当たり前な事です。   しかし、洋服な複雑な立体によって人体を包んでいます。 様々なカーブで構成されており、『 限りなく真横に見える様に 』 という技術・テクニックが使われております。 アイロンによるクセ取りは勿論前提ながら、 芯据え含め 様々な個所で気が配られているのです。               最終FITTINGでのご来店の日、 この度のTWEEDに合せたコーデでご来店下さりました。       ウエストコートは 5釦・全掛け のスタイルです。 よりコンパクトな雰囲気が出ます。 ウエストコートのバリエーションも多岐に渡りますが、 これも時代性がマッチしたセレクトと言えますし 流石はH様のセンスで御座います。           格子柄のシャツはダブルカフス、素敵なカフリンクスが見えますね。 H様のカフリンクスコレクションは半端では無く、 博物館級の貴重な物まで本当に沢山お持ちです。   こちらはアンティークで犬のモチーフが描かれており、左右でDOG君も違います!   この形態は半球体の水晶にモチーフを彫り込みます。 多くの場合、犬やキツネ、鳥など様々であり、 ODD WAISTCOAT等に付ける釦も御座います。 掘った後、そこに少しずつ慎重に 一番表面に出す(出る)色より 色を落とし込む様に付けて参ります。 着色が終わり 捲ってみれば、、、、立体的なモチーフの登場です。   この類のアンティークでは、古ければ古い程に モチーフの表現も精工・精密であり、 犬やキツネなどの表情も多彩で精悍な表情の顔立ちを見せてくれます。 お好きな方はご存知でしょうが、本当にレベルが全然違います。 このDOG君の端正な顔を見れば、 このカフリンクスの価値が分かる人には分かる代物と言えるのですね。         靴もBESPOKEされた素晴らしい品質のスェードフルブローグ、 タッセルがお茶目なポイントですね。           素敵です、、、、、、。 タイはキツネ君のプリント・モチーフタイ、 カントリーテイストでバッチリまとめて頂いております。                     +4にFLAT CAPも加えてポーズも! 流石の着こなしであり、H様らしさが滲み出ています。               ・・・・・大変お喜び頂け、私自身も嬉しい限りです。 この日は寄る所があるとの事で そのまま着て帰られるとの事。 トラウザーズに着替え、チーフも加えて完璧な装いです。     御予約・お取り置きの貴重な生地達より さて「次は…」   H様、この度も素敵な御注文を誠に有難う御座いました。 次のスーツも是非ご期待下さいませ。               ・・・・・如何でしたでしょうか。 皆様も是非 冬の装いを存分にお楽しみに下さいませ。     では、皆様のお越しを心よりお待ちしております。 どうか引き続き宜しくお願い申し上げます。            

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