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2021/11

Bespoke Tailor Dittos.
  • 【 BUSH JACKET ① 】

    2021.11.30 Bespoke Tailor Dittos. STYLE

    【 BUSH JACKET ① 】

          皆様 こんにちは。 明日から12月、今年もあと一カ月となりました。 随分と寒くなりましたが、冬の装いを楽しんでおられる事と思います。 これから更に寒くなる訳ですが、 洋服業界は既に春夏の準備が着々と進んでいるのです。         さて、今週は私の勝手ながら御紹介させて頂きたいサープラスガーメントがあり 何回かに分けてご覧頂こうと思います。 その お見せしたい本質部分に入る為には前振り(予備知識)が必要です。 それこそ紳士服は歴史であって その奥深さや説得力までをもお伝えしたいからに他なりません。   どうかお付き合い頂けましたら幸いです。             = MILITARY SERVICE JACKET =   1949年 シングルブレスト:ノッチドラペル 4釦でフロント裾部はスクエアカット ウエストには共地のベルトが付き、 キュッと絞ったそのシルエットは正にエレガントの極みです。 この様なアワーグラス型シルエットこそ、ベルトの有無に限らず軍服からの継承であり 現代でのBRITISH SUITSにもエレガントな独特のシルエットを残しています。   胸ポケットにはボックスプリーツが畳まれ、飛んでいるカモメを思わせる インカーブの効いたm字型の独特なフラップ形状に『らしさ』を感じつつ、 コレもそそられるのです。   腰には大きなやはりフラップ付のパッチポケットですが、 それら多くはベロウズポケットと言い マチが内蔵されています。 肩章などが付けられるのも多いなる特徴と言えますね。   氏の恰幅良き個性的な体形へ正にJUST FIT、 見るからに誂えである事が窺えます。 凛々しく威厳があり、軍服の美しさや格好良さはご存知の通りです。                 英国の古き裁断書にも勿論掲載されています。 これはリアルに釦やベルト(バックルまで)、 肩章などもイラスト的に記述されて分かりやすいですね。   他の裁断書では R.A.F(空軍)、ARMY(陸軍)等で分けられ、 OFFICER’S SERVICE JACKETと掲載されています。 将校の方々の多くは誂えられていた訳であり、時代や仕立屋の違い、 そして御注文主である将校の方々によりアレンジなどもあった事でしょう。     更に古き時代の軍服はテールコート型になりますが、 そのテールが取り去られ上記の様な形状に落ち着いて参ります。 これらミリタリーの上着は「チュニック」とも呼ばれております。               ・・・・・ご覧頂きましたミリタリーのサービスジャケットは 完成された美しさとバランスを兼ね備えていると思っています。 多くの国々において同じカテゴリーの軍服はかなり酷似していますが、 それだけ完成されたデザインであるという事に他なりませんし、 大英帝国の強さ、影響力とも言えるでしょう。   機能美でもある このサービスJKは以降において多くの展開、発展をして参ります。 それらの正にベースとも言えるものです。                 では、私が最終的に何をお見せしたいのか、、、 それはタイトルでもある【 BUSH JACKET 】というサープラスガーメントです。   英国好き、サープラス好きの方であれば このBUSH JKの事をご存知だと思いますが、 多くの方々はあまり聞き慣れぬ呼称だと思います。   BUSH = やぶ、茂みと直訳される訳ですが、 では『 SAFARI JACKET 』と言えば皆様も直ぐに頭にイメージが浮かぶ事と思います。 現在 一般的にはサファリJKとブッシュJKは同義語とされております。 されてはおりますが、やはり私は服としてサファリJKとは 勝手ながら区別したくもあるのです。           ・・・・・戦地は多岐にわたります。 生死をかけた兵士にとり、その軍服の役割は大変重要である事は言うまでも無く、 それぞれに適するよう発展を繰り返して参ります。   暑い地方では、当然ながら少しでも快適に過ごせるよう考えられていくのですね。 生地、そして色などは分かりやすい所で御座います。               1942年 北アフリカ戦線 キング・ジョージ6世は最後のインド皇帝でもありました。 ジョージ国王が着用するのは 【 KHAKI DRILL 】 と呼ばれ、 区分けされているサープラスガーメントの類です。   このカーキドリル、KHAKI は色でありインドに駐留していた英国軍が 汚れを気にして当地の土で服を染めたのが始まりとされている正に軍服の色でもあります。 DRILL は綾織で密に織られたコットン地であり、チノクロスと同じく考えて下さい。 英国ではドリルです。   保護色でもあり、汚れを気にせず、 丈夫で洗濯も出来るサープラスとなりますね。 ご覧の様にデザインのベースは冒頭で御紹介したサービスJKに似ている事が分かります。   テーラードJKの様に芯や肩パッドなどで成形する事も無く、 基本的には一重仕立てかそれに近い手法で仕立てられています。 シャツJKやアンコンJKにも近いとも言えますね。 これらカーキドリルというカテゴリーで区分けされた類では、 上着だけでは無くてシャツやショーツ(短パン)などにも展開されております。   国王のお隣は バーナード・モンゴメリー中尉です。 モンティとの愛称でも呼ばれ、この方も有名ですね。 服絡みではダッフルコートと共に検索すると出てくるでしょう。             チャーチル氏のお隣にもモンゴメリー中尉、 そしてアレグサンダー将軍が写っています。 カーキドリルの上着、ポケットの特徴は冒頭のサービスJKに同じですが、 衿は『 STAND & FALL COLLAR 』になっています。 要はシャツ衿の様に台衿と羽衿に分けられた衿となります。   ご覧の様に これらカーキドリルがどれだけマストで着用されていたか分かり頂ける事でしょう。               RAF OFFICER’S KHAKI DRILL   当時なリアルな現物ですね。 素敵です、、、、、メタル釦が付き、正にオフィサー仕様でしょう。 ウエストのベルトは英国らしく 2爪タイプのバックルですが、 アジャスト出来る穴は3連しか空いていませんね。 この辺りも、クライアントの為だけにサイズを合わせて仕立てるのであれば 既製品の様に何連も必要が無い訳です。 むしろ手穴で何個もかがるのは大変です(笑)。   また、袖口のデザインバリエーションも多いのですが、 この仕様を覚えておいて下さい。         では、将校など一部の方々は誂えていたサープラスガーメントですが その他多くの軍人さん達はそうは参りません。                 【 Broad Arrow 】   国が準備した『官有物』として支給されるわけですが、 英国ではこれら官有物にブロードアローという矢印の様なマークが付けられています。 サープラス古着がお好きな方々にとってはお馴染のマークですね。 (このマークデザインにも由来と歴史があるので お好きな方は調べてみて下さい!)       様々なアイテムには アイテム自体の呼称や時代、 製造元などが記載され ブロードアローのマークが付けられます。 既製品ですからサイズも細かく展開され、身長、バスト、ウエスト等で 区分けされているのが分かりますね。 PATTERN というのは型紙であり設計図の様なものですから、 時代と共に発展・展開されていきますから どの時代のガーメントであるか 一目瞭然であり、その時代の流れと共にディテールやバランスの変化や発展、 逆に排除・簡素化という流れも追える事になります。                   SINGLE-BRESTED FOUR POCKET BUSH JACKET OF KHAKI DRILL   上記リアルなヴィンテージですが、記載呼称にある様に ある程度大きな括りで『 KHAKI DRILL 』というカテゴリーがあり、 その中で 『 BUSH JACKET 』というスタイルが存在していた という感じに御理解頂ければと思います。     サープラスを語りだすとキリが無くなりますが、KHAKI DRILL の他に JUNGLE GREEN というのも御座います (ここでは割愛させて頂きます。)               ・・・・・如何でしたでしょうか。 取りあえず前置きである今回のお話はここまでとさせて頂きます。   サープラスは御説明を上手く簡潔にまとめるのがかなり難しく、 なかなか分かり辛くて意味不明な点もある事と思います。 ただ、実際に存在した本当に沢山のサープラスガーメントの中で、 暑い地方で任務をこなす方々が着用されていた BUSH JACKET(KHAKI DRILL)が あまりにも魅力的で格好良く、大好きなので是非皆様にも知って頂きたいと企画した次第です。   続きを書いて参りますが、以降は写真も多く より具体的にご覧頂けますので どうかお付き合い頂けましたら幸いです。 何卒宜しくお願い申し上げます。     今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。              

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  • 【 T様:バンカーストライプ 】

    2021.11.23 Bespoke Tailor Dittos. お客様のご注文

    【 T様:バンカーストライプ 】

        皆様 こんにちは。 11月も後半です、『小雪』も過ぎ いよいよ寒くなって参りました。 そろそろオーバーコートの季節が目の前までやって参りましたね。       今年のコートに対する御注文は、 カバートコートがとても多く頂いております。 天候の優れぬ日でも気兼ねなく御着用でき、皺にも強くて耐久性があり 、かつスーツやジャケットでのスタイルでなくとも幅広く御着用頂けるスタンスは カバートコートの正に大いなるポジションメリットです。   http://dittos.seesaa.net/article/407464018.html 【 COVERT COAT 】   http://dittos.seesaa.net/article/407856620.html 【 COVERT COAT② 】         さて、今週のお話はコートではありません。 インナーであるスーツの方で御座います。         バンク・トートにバンカーストライプのスーツ。 クラシックなストライプのスーツは、着用すると気も引き締まる感じが致します。   几帳面そうで真面目、仕事が出来る男に見えますよね。 装いの持つ力でもあり、仕事だけに関わらず 装いは戦略としても使う・使われるべきものという事で御座います。 皆様はどんなバンカーストライプのスーツをお持ちでしょうか。 凛としたクラシックでダークなバンカーストライプは 是非ワードローブに入れておきたいスーツです。               前置きが長くなりましたが 今週は 極上のGOLDEN BALEで織り上げられた 3シーズンウエイト の 一番頼りになるスーチングをお選び頂きました T様の御注文:バンカースーツを紹介させて頂きます。                       お選び頂きました生地はコチラです。 仕立て映えのする最高の生地であり、正にど真ん中とも言えるバンカーストライプです。   http://dittos.seesaa.net/article/472541207.html 【 X様:バンカーストライプ 】         例え同じ日本人であっても 人は十人十色、顔も性格も個性も全然違います。 当然ながら体型も違いますし、皆それぞれの個性をお持ちであり、体型もそれに含まれます。   体型的個性が強いと、いわゆる最大公約数である既製服の範疇では 適合し辛くなりますし、逆に当然の事でもあります。 様々な個性ある方々に対し、寄り添い その方らしさが滲み出る様な 着心地良きクラシックな洋服を仕立てさせて頂く事が私の仕事です。     T様の素敵なスーツをご覧下さいませ。             やや小柄でシャープなボディーラインのT様、三つ揃いでのご注文を下さりました。   トラウザースのフロントは利便性に優れたファスナー仕様です。 フロント開閉部、前中心線は股に近付くにつれカーブ線を描き 尻縫目へと繋がっています。   写真だと分かり辛いですが、本質的な仕立てによるトラウザースの フロント開き止まりはそれなりに深く設定され 仕立てられています。 深いというか当たり前の事であり、男はフロントを開けて用を足しますので それなりに開いていないと行為がし辛いですね。   最近では既製服でも股上の深い物が増えましたが、 既製品はどれもこれも用が足し辛いですよね、、、、。 これは、フロント前中心線が股付近で カーブ線に変わる前に(直線間の距離)ファスナー止まりを 設定しているからであり、自ずと開き止まりは高くなります。   単純にそれが縫製的に楽だからであり、カーブ線までファスナーを回してくると 高度な技術と+αの手間を要するからとなります。 ジーンズとかは分かりやすいですね。 当然ながら男のシンボルは股にありますので 用が足し辛くなります。   こんな所も仕立ててみて 初めて気付かれる方々も多い事でしょう。 あるべき姿・あるべき事柄に伴って仕立てられているのが本来のTAILOREDであり、 そんな開き止まりを見るだけでも物作りに伴う価値観含めた物差しの一つとなるでしょう。             T様は羨ましい程にウエストが細く締まっております。 反面 腰は確りとしており、そのギャップが特徴でもあります。 ウエストバンドはハイバックの様に上げる事無く、ノーマルなストレートで御座います!           ウエストコートは悩まれた末に衿付きのデザインを選ばれました。 後付けの仕様では無く、本返りのリクエストを頂きましたので 上着に同じく『ハ刺し』をして衿を返す仕様となります。               T様の背はS字曲線が比較的に強めな事も個性的な所。 確りとネックは首に吸い付き 安定していなければ成りません。 トラウザースとの連動性も大変良いですね。             さぁ、お仕立て上がりで御座います。 3シーズンの生地は夏以外 いつ御納品しても着用シーズンなのは嬉しいメリットです。 クラシックにFOBポケットも携え、 ゆったりとした股上に優雅なユトリが入った2-プリーツにて。           T様、とても素敵です。 こんなにもお身体に合ったウエストコートは誂えなければ存在しません。 本返りの衿は如何でしょうか。               首の位置含め こんな所も人それぞれです。 やはりネックは首へ確りと寄り添っていなければ成りませんし、 FITTINGでも大変重要なポイントです。   また、背中も丸味感や肩甲骨のボリューム、ウエスト(腰)への括れ度合いなど これらも背中を描くS字ライン度合いが変わってくる要因です。           とてもエレガントです、、、、、。   上着は三つ釦の段返り、チケットポケットもお付けになり 雰囲気満点です。   三つ揃いは 3アイテム揃って調和していなければ成りませし、 特にウエストコートは重要です。 上着とはVゾーンでの関係があり、 トラウザースとは丈バランスやシルエットの連動性などが挙げられます。   このスーチングは、縞自体がグレーでもあり 御着用されてみると そこまで縞の主張は強く出ません。 だからこそ使いやすくもありますね。   冒頭の私が着用していたストライプは、 ダークネイビー地にオフ白の縞なのでコントラストが大変強く出ます。   縞の太さや色などにもより、様々に表情を変えるのがストライプであり 魅力でもあります。           T様の肩傾斜、非対称具合、ウエストとヒップのドロップ寸等も踏まえ 選ばれた NO VENTにて確りと立体的なお尻を包みます。 T様のXラインが表現された背中です。   多くの方々は鏡の前に立たれると 意識せずとも姿勢が良くなってしまいがちです。 更にカメラを向けさせて頂きますと尚更です。 自然体で仕立てられている服ですから姿勢次第で歪みも出ます。   写真は本当に役に立ちます! ただ、その一瞬にとらわれ過ぎない事も重要です。         フロント釦を開けてみたりと いろいろに御着用確認です!             普段のお仕事でのデスクワーク、背幅含め腕の稼働なども御確認下さい! 凛々しくて本当に素敵です。 ホワイトシャツにネイビーのソリッドタイ、 当たり前なものこそ上質で着心地よく、満足度も高い物を。   小物類まで御贔屓頂きまして誠に有難う御座います。 物作りへの思想や価値観が伴ったアイテム通しは当然 相思相愛の関係になります(笑)。   T様、この度も素敵な御注文を頂戴致しまして誠に有難う御座いました。 この上着から導き出された チェスターフィールドコートの仮縫いもいよいよです。 ご期待下さいませ。               ・・・・・街では少しづつクリスマスムードも高まりつつ、年の瀬に入って参ります。 本格的な寒さはこれからですので、 冬の装いを存分に楽しみつつも どうかご自愛下さいませ。   今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。                              

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