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Bespoke Tailor Dittos.

【 M様の御注文:OVER COAT 】

2022.03.01お客様のご注文

 

 

 

あっという間に3月へ入りました。

東京は先月末から少しずつ寒さが和らいできております。

この業界では春夏物の御紹介が増える中、

まだまだ実際に寒い冬を体感していたからこそ

そのイメージを元に冬物のご注文も頂いております。

 

皆様におかれまして、この冬はどんなスタイルのコートが活躍されたでしょうか。

コートもポジションにより様々にバリエーションは広がります。

 

mc1

 

 

2月の寒いうちに、、、、先週のTWEED SUITSもそうですが、

OVER COAT含め冬物の御納品に毎年バタバタな時期となります。

 

今週は 何とか2月中に御納品させて頂けました

素敵なコートを御紹介させて頂きたいと思います。

 

 

mc2

 

 

 

 

大変な御贔屓を頂戴しておりますM様より、

この度はオーバーコートのご相談を頂きました。

 

M様はお仕事以外での御着用に BESPOKE SUITS を楽しまれており、

カチッとし過ぎないポジションを御所望されております。

故にオーバーコート自体もダークカラーでドレッシーな

チェスターフィールドコートの様なスタイル以外で考えたいとの事でした。

そんなに重々しい色やウエイトの生地ではなく、でも暖かい。

着丈はそれなりに長めが良い。

 

■ 打ち合いはある程度深めでありつつ、Vゾーンはコンパクトな感じが好き。

■ チェスターFコートほどではないにせよ、ある程度はシェイプされたシルエットが欲しい。

■ デザイン自体はシンプル・ベーシックな感じにしたい。

エレガントに成り過ぎず、スポーティに成り過ぎない。

■ 普段サラリと着こなせ、直ぐに手が出てしまう様な幅広く着用出来るコートだと嬉しい。

 

 

 

Be Sopken は続きます。

 

 

 

では、ご要望を踏まえ まとめて参りましょう。

シングルブレストでセットインスリーブ、打ち合いの深めなノッチドラペルをベースに、

丈は膝をホールドし、そしてナチュラルなシェイプが見受けられるシルエット。

 

 

mc3

 

 

大まかなバランスは このイラストに近いと言えます。

シンプルながらも 腰はスラントポケット、

袖口にはターンバックカフが程好いアクセントに!

 

ですが、これは完全な チェスターフィールドコートです。

上衿にはベルベットも掛け、かつ大きな特徴としてフロントは比翼スタイルです。

これをベースにドレスダウンすれば かなりご要望に近いですね!

 

 

 

mc4

 

それなりに丈があり、

かつVゾーンもコンパクトがお好みなのでフロントは4つ釦にしましょう。

比翼仕立てはドレッシーになりますので、フロントは貫通でホールを開けましょう。

 

背中にプリーツなどの機能や装飾はいらないとの事。

では せめて良いアクセントになりますので、背ベルトをお付けしましょう!

良き意味でこのベルトを利用し、ご要望のシルエットを作り出します。

真ん中・後ろ向きの紳士が着るコートはバックベルト付きですが、

ヨークもプリーツも無く リクエスト通り極シンプルに参りましょう。

 

デザインや仕様は定まって参りました。

これらイラストはBLOGを書く際に 後付けで探したイラストです。

説明に丁度良いのがあったのでご覧頂きました。

 

 

次は生地です。

この度のご要望に対し、M様には是非

『これぞ!』 というお勧めが御座いますのでご覧下さいませ。

 

 

 

 

 

mc5

 

Joshua Ellis

100% CASHMERE

470g

 

= TAUPE =

 

http://dittos.seesaa.net/article/445269848.html

【 繊維の宝石 】

 

 

 

 

J.エリス製の最高に素晴らしいカシミア地であり、

コートとしてみれば軽量級ですので軽快に着て頂けるでしょう。

 

 

 

mc6

 

いつもミミズを探している愛くるしいモグラさん、、、眩しそうですね。

TAUPE(灰褐色)とは色の事で

フランス語では『モグラ』を指しており、そこからの色呼称となります。

分かり易く言えば、グレーにブラウンを混ぜた色であり、

汎用性も高く非常に上品な印象を与えます。

もともとは かなり濃いトーンでの認識ながら、

ことファッション界でのトープはもう少し明るいトーンでの解釈・利用であり、

トープ ≒ グレージュ というニュアンスに近いでしょう。

 

とにかく この上品で落ち着いた色味はONにもOFFにも使えますね。

 

毛足を長めにとり、リップルフィニッシュされた極上な触り心地。

ヌメリと光沢感がカシミア自体の最高品質を感じさせてくれます。

見ているだけで柔らかく、暖かそうですね。

 

mc7

 

 

 

 

・・・・・早速 イメージ・デザインを型紙に起こし、裁断して仮縫いを組み上げます。

 

仮縫いの御当日、K様は昨年御納品させて頂きました

フランネルのスーツでお越し頂きました。

そろそろ丸一年が経ちますね、確りと縮絨された昔ながらのフラノは

コシも強いですが 随分とこなれた感じが出てきております!

この冬は随分と重宝されたとの事で光栄な限りです。

 

mc8

 

http://dittos.seesaa.net/article/480846609.html

【 M様の御注文:Gray Flannel 】

 

K様はご覧の様に大きく逞しく、男らしい御体型の持ち主です。

迫力が御座います!

 

 

 

 

mc9

 

いよいよご試着頂き、フィッティングのチェックです。

ご自身のリクエストが具現化され、洋服となって纏う瞬間です!

最高の肌触りと共に着用された時の軽さに驚かれます。

 

 

 

 

mc10

 

 

背はベルトを付けます。

仮縫いなので取りあえず別生地で代用しましたが、絞り具合を確定して参ります。

背中は特にダーツなども摘ままずに 敢えて制御せず、

自然なプリーツ・ドレープの流れを、襞を優雅に表現させます。

 

 

 

 

mc11

 

この胸板の厚さ、、、羨ましいです。

レングスも打ち合わせ通りの丈となっております!

 

お陰様で御提案サイジング含め、全てOKにて修正無しで仮縫いを終えます。

M様のご期待感も相当膨らまれた様です。

 

 

 

 

 

 

・・・・・全貌は出し惜しみしましたが、いよいよ仕立て上がりました!

御納品前にこのコートの雰囲気をご覧下頂きましょう。

 

mc12

 

 

mc13

 

mc14

 

裏地は深い色目のボルドーです。

経糸に黒、緯糸に赤を使った交織織りですので、裏側は赤く緯糸が出ます。

 

丈の長いものは表地と裏地の伸縮性含めた性格の違いから、

互いに影響を及ぼさぬようフラシ仕立てで手間をかけ仕立てられます。

女性のスカートも同様なフラシで始末されていますが、同じ理由ですね。

 

mc15

 

mc16

 

 

 

 

・・・・・・M様にご足労頂きました。

では、仕立て上がりホヤホヤのコートを御着用頂きます!

 

mc17

 

前から見た様、これで比翼仕立てのダーク色生地であれば

冒頭のチェスターFコートを彷彿できますよね。

食材含め、調理次第で顧客様のお好みに応じた

最高の料理として御提供させて頂きます。

全ての調和は私が取ります。

それがCUTTERとしてみた場合の職域でもあります。

クライアント様の価値観による最高の料理です、

さぞ御満足度の高い美味しい御馳走として堪能頂ける事でしょう。

 

このコートのポジションや着こなし、

御利用のされ方ふまえた調理にも考慮が入ります。

今回の生地、コートにしてはライト級ですし

とにかく軽くてソフトな着心地を前面に出します。

内部のキャンバス芯に宛がうバス芯(馬の尻尾を利用したハリのある芯)を

使わずに増芯を代用し、アームホールの袖付け部に内蔵される裄綿という芯も

フエルトのみにしてアームホール全体も柔らかく表現しております。

このオーバーコートを立体に支える真の芯たるは、インナーの上着であり、K様のBODYです

 

 

 

 

mc18

 

御自身では見えませんが、、、ベルトで背中に寄る無造作に絞られた

美しきドレープが程好いアクセントとなり、スポーティーな風味を味付けいたします。

 

丈がある分、裾のケマワシ分量はたっぷりととりつつ、

センターベントがありますので足さばきを邪魔させません。

 

mc19

 

mc20

 

 

mc21

 

フロントの4釦は、レングスと共に

コンパクトなVゾーンを尊重すべく配列されています。

ですが、着こなしにより律儀に全部留める必要もありません。

ラペルは段返りにも返れる様にしてありますので、

センターの釦2つだけでも安定致します。

 

一番上を外せば力の抜けたラフな雰囲気を演出しますし、

一番下を外せば より足さばきが良いので歩きや階段などでは楽でしょう。

寒い時には勿論全留めです。

 

 

 

mc22

 

北風吹く寒い日、コートの衿を立てて首元を守る事もあるでしょう。

上衿の裏側は 通常『カラークロス』と呼ばれる専用のバイアス生地を使用しますが、

贅沢に共地であるカシミアで仕立てておりますので一体感が演出されます。

 

 

 

 

mc23

 

腰のスラントポケットは 片玉縁でリクエスト、

袋地は最高に上質なコットンフランネルを使っていますからフワッとして暖かいです!

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・如何でしたでしょうか。

M様には凄く喜んで頂け、本当に嬉しい限りです。

 

おぼろげなイメージを膨らませ、御提案させて頂きながら構築し具現化された

正に ONLY ONE のオーバーコートですね。

インナー(スーツ)とのサイズ的適合性の高さなど言うまでもありませんが、

上着抜きでニット等での御着用も気軽にお楽しみ頂けます。

 

 

 

チェスターFコート、カバートコート、ポロコートなどは分かりやすく伝わりやすいですが

独自での価値観によるコートも無から生み出せるのが BESPOKE でもあります。

結論的な結果として、このデザインであれば HOUSE STYLE ORDER でも可能です!

 

 

まだまだ寒の戻りも御座いますし、油断出来ない季節の変わり目です。

春になりきる前まで 少しでもお楽しみ頂けましたら幸いで御座います。

 

M様、この度も素敵な御注文を頂戴致しまして 誠に有難う御座いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・本日の3月1日より、誠に恐縮ながら

BESPOKE、及びHOUSE STYLE ORDERの価格改定を施行させて頂きます。

(当店HP上の表記も近々に修正させて頂きます。)

 

値上がり率自体は小さいものの、低価格レンジ層の生地自体が存在しなくなってしまった為

所謂スタート値自体が それなりに上がってしまうという感じが強くなります。

 

どうかお汲み取り頂けましたら幸いであり、

一層御満足度高き洋服作りに精進してまいりますので

ご協力の程 何卒宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

 

では、春夏物でも秋冬物でも 季節など問わず、いつでも・なんでもご相談くださいませ。

皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

 

今週もお付き合い頂きまして、どうも有難う御座いました。

 

 

 

 

 

 
Bespoke Tailor Dittos.