【 キッドモヘア混紡スーチング 】
2018.02.20生地に付いて
平昌冬季オリンピックもいよいよ終盤を迎えております。
多大なる感動を与えてくれたアスリートの方々、本当に素晴らしいパフォーマンスです!
あの舞台に立つだけで どれだけの努力と苦労、そして苦悩もあった事でしょうか。
限界に挑戦し続ける姿に勇気を与えられ、多くの方々にこれだけの感動を与えられるというのは本当に素晴らしいですし、凄い事です。
人様の心を揺さぶる仕事が出来る様 改めて精進したいと思います。

さて、3月も目の前に 植物たちも着々と芽吹く準備を進めている事でしょう。
皆様、まだまだ寒いですが
今年の春夏の装いには 御構想がおありでしょうか。
春夏用のスーチングと言えば、通気性の良い平織で
当然生地も軽く、薄く織られた爽やかな ウールトロピカル(パナマ)は代表的です。
他にも春夏用スーチングには優れものが沢山ありますが、モヘアが混紡された生地も欠かせぬ存在ですね。
http://dittos.seesaa.net/article/321867264.html
( ↑新旧KID MOHAIR のページでも、詳しく触れております。 )

MOHAIR
アンゴラ山羊から採取される毛であり、繊維も長く、光沢感があります。
ハリやコシが強く、夏は涼しく、冬は暖かいという最高の特徴を持ち合わせます。
また、その毛はウールの様に縮械性や巻縮性がほぼ無いに等しく だからこそ融通性が無いのでハリ・コシが強くなり、成形もやや難しいという側面があります。
皺にも強い事は大いなるメリットであり、言い換えれば反発力・復元力も強いという事になります。
そんな素材的特徴は、仕立てる上ではいくつかの考慮、テクニックを有する素材でもあります。
モヘアの持つ個性的で魅力的な特性と共に、その付加価値性を更に追求した
モヘア:100% の生地さえ今では織りあげられる様になりました。
ただし、大きな特性があるという事は 逆にデメリットをも許容しなければ成りません。
モヘア:100% にて織り上げられた かなり高級なスーチングは、付加価値的な要素が強く、当然ながら個性も強い事になりますので お好きな方向けの生地ではありましょう。
魅力的なモヘア、その特性は是非欲しいところながら
クセが強いだけに どの様に上手く付き合いましょうか。
生地を織り上げる事を生業とする多くの生地メーカーでは
モヘアの持つメリット・デメリットをバランス好く尊重し、補い合える生地作りに着手し、生み出されたのが モヘアにウールを掛け合わせる混紡ファブリックとなります。
その多くは、ウールを4割前後の比率でブレンドするのが一般的な黄金比率という結果に至ったのであろうと推測出来ますが、これは一つの到達した答えでもあり、 企画によっては その比率を変え、新しい素材感や尊重性を模索され続けてもいるのです。

・・・・・気付けば もう10年目を迎えた 自身の KID MOHAIR混紡スーツです。
ネイビーよりグレー派の私が選んだその生地は、ダークグレーのTaylor & Lodge製です。
こう上から見ると、ハリ・コシのあるパリッとした生地感と共に、モヘアがもつ光沢感が 光の陰影を綺麗に描写しているのが分かり頂けますでしょうか。

・・・・・シングル・ブレスト 3釦のピークドラペルです。
軽くて涼しく、モヘアは独特な『 ひんやり感 』があります。
また、好みは分かれるでしょうが この光沢感はやはりモヘアの特徴であり、らしさ溢れる大きな魅力です。

・・・・・反発力が強いモヘアは、各縫い目自体も縫代を片側に倒して ハンドステッチで押さえておくべきです。
縫い目に段差が付き、立体的になった様は 独特のシャープな感じに仕上がります。
今週は、幾つか厳選して モヘア混紡スーチングを御紹介させて頂きましょう。

CHARLES CLAYTON
・・・・・1959年 ヨークシャー地方で創業されました。
厳選された最高品質の天然素材を用いた織物を得意としておりますが、その顧客層も世界中のBESPOKE TAILORだけでは無く、名立たる多くの超高級ブランドにも生地を供給しております。
創業100年レベルの老舗ミルがまだまだ残る英国において、
歴史は浅くとも、同社は短期間にそれだけの顧客層をつかむ程の物作りをしているとも言えますね。
また、1767年創業の超老舗である Joshua Ellis の傘下でもある事は良い意味での関係性を築いているとも言えるでしょう。
C.クレイトンのバンチは、どのメーカーよりも格好良く、高級でコストも掛けられていまして、、、アンティークの古書をイメージしたそのバンチブックは 並べておくだけで様になります。 (しかし、当店には御座いません!)

・・・・・とても品のあるダークグレーです。
SUPER 120' WORSTED:70%
KID MOHAIR:30%
7:3 の比率であり、質の良いウールを主体に
程好くキッドモヘアの清涼感と、ハリ・コシ、そして光沢感を加えたスーチングというポジションの生地となります。
比率は半分以下でも、その個性強きモヘアの特徴は 余すことなく享受する事が出来ます!

・・・・・冒頭で着用していた私のスーツに色味は近いながら、あそこまでモヘアの特徴が出過ぎないという意味では モヘアへの好みに関係なく受け入れやすき生地と言えますね。
風合いや仕上がり具合は流石です!

・・・・・もう一種ご覧頂きましょう。
同じくグレーながら、今回は控えめなストライプ入りです。

・・・・・かなり控えめで同系色ながら、捻りの効いたストライプです。
少し離れれば、そのストライプは沈み込み、無地に近い感じで御着用頂けます。

・・・・・控えめなストライプだからこそ、趣きを感じるスーチングです。
上品さは とても大切な要素ですね。

Reid & Taylor
・・・・・こちらも御紹介せずにはいられません。
スコットランドは Reid & Taylor より、貴重で贅沢なスーチングが 出物で手に入りました。残りはあと僅かとなります。
KID MOHAIR:50%
ESCORIAL : 50%
ESCORIAL(エスコリアル)
http://dittos.seesaa.net/article/455011187.html
エスコリアルは当店のBLOGでも沢山御紹介して参りましたが、一言で説明してしまうと
限りなくカシミアの様なウール、、、と言えば伝わりやすいでしょうか。
そのウットリとするような肌触り、ソフトな風合いをもつエスコリアルと
片やハリ・コシが特徴であるモヘアを半分ずつブレンドしたらどうなるのでしょうか!?
そんな夢の様な共演の生地が目の前にあります。
キッドモヘア混のスーチングをご存知の方であれば、この生地の風合いは正に独特で不思議な感じでもあり、、、完全に独自のポジションを持つスーチングと言えましょう。

・・・・・美しい生地です。 ウットリとする程に素晴らしいスーチングです。
こういうレベルの生地も有るのです。

お値段は出物価格ですから、ご興味のある方は是非纏ってみて下さい。
以後 こんなレアで独自な高級生地を このお値段で仕入れられる確率は限りなくゼロに近いです。

・・・・・先のチャールズ クレイトンのグレーと比べてみます。
色味のトーン、そしてグランドの表情も多少違いますね。
チャールズ クレイトンは、経糸と緯糸でコントラストを狙い 色を変えているので やや独特な霜降り感が生まれます。
反面、リード&テーラーは、縦・緯かなり近い色糸で織りあげておりますので、コントラストが出ません。 原毛や織り糸自体の細さも有るでしょう。
また、分かり辛いですが ドレープの入り方にも自ずと違いが出ます。
良い・悪い という基準では無く、生地作りに馳せた意図が違います。
皆様はどちらがお好みでしょうか!!
・・・・・グレー派だとは言いましても、ネイビーを抜きには語れないことも事実であり、それが紳士服です。
超ど真ん中 を最後にお勧めさせて頂きましょう。

Taylor & Lodge
・・・・・もう 流石にこのミルは説明入らずですね。
私が信頼の置く超老舗のミルでもあり、当店オリジナルの生地も織って頂きました。
その Taylor & Lodge より、説得力のある黄金比率な品質と共に、エレガントなダークネイビーです。

・・・・・・本当に深く美しきダークネイビーです。
モヘアの混率により、余計に光の陰影も美しく 大変にエレガントな生地です。
SUMMER KID MOHAIR:60%
SUPER 120’WORSTED:40%
6:4のある意味では 王道比率ですね。

・・・・・冒頭で私の着用していた生地も同じく T&L製であり、限りなく近い品質です。
ハリ・コシ、そして光沢感などは同じ感じとなるのでご参考に成りましたら幸いです。
好きなグレー、それがあるからこそ こんなエレガントなネイビーが欲しい訳です、、、、。
涼しき顔してエレガントにこんな綺麗なスーツを着こなす紳士でありたい。
・・・・・如何でしたでしょうか。
この他にも 一部VINTAGEも含め、まだ御用意があります。
日本の夏は暑い、だとしてもクルービズでだらし無く崩れた昨今の状況は正に痛々しくさえ見受けられます。
もう少し自主性に任せるべきだとは思いますが、逆に今では品のあるクラシックな装いが新鮮に感じる部分もあるのではないでしょうか。
春夏のスーツには、春夏用の個性含めた良さや魅力があります。
それを楽しまなければ勿体無いです!
今週御紹介の生地は それぞれにかなり個性が違いますし、なかなか写真では伝わりません。
是非ご来店頂き、御自身の目で見て、触って、そして感じて下さい。
きっと、その生地で仕立て上がったスーツを纏う御自分が想像出来る事と思います。
口角が上がってしまいますよ!
では、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
余寒なお去り難き折り、くれぐれもご自愛下さいませ。
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