BLOG

Bespoke Tailor Dittos.
  • 【 DINNER SUITS:N様のご注文 】

    2025.03.11 Bespoke Tailor Dittos. お客様のご注文

    【 DINNER SUITS:N様のご注文 】

            皆様、今週は服飾史のお勉強から始めさせて下さい。 歴史を知れば納得の度合いがまるで違ってきますので、 時代の流れの中で生き残ってきたスタイルへ 親近感さえ感じて頂けるかもしれません。 同時にそれらを見る目も今までと変わるのではないでしょうか。   先週はお休みでしたし、今週は少し長いので 頑張ってお付き合い頂けましたら幸いで御座います!               エレガントな夜の礼装ですね。 現代におけるフォーマルウエアは DAY FORMAL / EVENING FORMAL に区分けされ 日没前か日没後 という時間枠での括りとなります。   左に正礼装となる EVENING DRESS COAT(EVENING TAIL COAT=燕尾服)は ホワイトのコットン・マルセラで仕立てられたボウタイ、 ウエストコートを合わせて着用致します。   この正礼装に対し、準礼装の位置付けになるのが DINNER SUITS(DINNER JACKET =TUXEDO=晩餐服≒SMOKING JACKET)となり、 ブラックのシルクで仕立てられたボウタイを結びます。 (ディナースーツとの呼称は、1912年頃からとされています。)   上記スタイル(ポジション)により、招待状に記載されるドレスコードはホワイトタイ、 もしくはブラックタイとなり、単にその色のタイを締めれば良いのではなく、 会の格式度合いにより正礼装が必須なのか、 準礼装で良いのかなどスタイルを指定しているのですね、   ディナースーツ(ディナージャケット)にはシングル型とダブル型があり、 ダブル型は1920年代に流行りだして一般化致しました。 双方はピークドラペル(剣衿)ですが、 ショールカラー(へちま衿)もシングルとダブルで御座います。             1936年 フォーマルなウエストコートのバリエーションとなる一部です。 特徴としては胸元が大きく意図的に開けられています。 Vゾーンに対し(一番右側)、Uゾーンと仮に呼称するとして シングル型だとしても釦は腹部のみです。 この意匠の最優先たる目的は、下着であるシャツとトラウザースの帯位置におき それら上下アイテムの分断線を隠す事にあります。 故に同じ目的となるカマーバンドも所謂 腹巻きで分断線を隠している訳です。     ≪ Full Dress or Tuxedo Vest ≫ と記述がありますが 右以外は冒頭のイラストでいう正礼装か準礼装 どちらにも採用されるスタイルという事です。     『クラシックは歴史そのものである』 というお話は当BLOGでも良くお伝え致しますが、 テールコート(現代の正礼装)は少なくともWW2前まで 夜間の正宴、観劇、 舞踏会などでの第一礼装として上流人士たちに着用されて参りました。   そう、夕食の際にはわざわざテールコートの着用が必須だった訳です。 そんな時代では食後に部屋を移し(ラウンジルーム)シガーなどを 楽しみながら寛ぐ際、上着のみ着替えられたのです。 それがテールの無いラウンジジャケット型であり、その状況下より スモーキングジャケット(ディナージャケット=ドレスラウンジジャケット) と呼ばれるようになりました。   その後、エドワード7世より 夕食の際にはテールコートを省き、 尻尾の無いディナージャケットでも良いとし、その流れが一般化されて参ります。 なので『夕食の際に着用する服』と呼称されるのですね。     という事で、この歴史的流れから見ても分かる様に、 正礼装と準礼装は 上着のみを着替えただけ というのが分かります。 故にインナーのウエストコートは Full Dress or Tuxedo (正礼装or準礼装)となっているのです。   ただし、その後の流れでは正礼装と準礼装で本来同じような仕様の中下も それなりに区別化が進む事になります。               上記の話からも、ディナースーツ(晩餐服)と呼称するのがご理解頂けたかと思います。 ディナースーツ(ディナージャケット)はブラックを筆頭に、 ミッドナイトブルー、そしてチャコールグレーなどでも仕立てられますが、 共に深く濃い色であるという事です。     上着のインナーにはウエストコートを着用か、 カマーバンドが着用されていますが 共に腹部を隠す意図によりデザインされ、胸部が広く開くUゾーンスタイルゆえに 上着の釦を留めていればあまり見えませんね。   トラウザースの外脇にはシルクのブレード(側章)が付けられます。 昨今では正礼装は太いブレード、もしくは細ければ2本。 準礼装では細めなブレード、もしくは1本 という事で差別化されています。     ラペルを覆う贅沢な拝絹地は、主に腰ポケットの口布や、釦を包む事にも流用され、 理想ではボウタイやカマーバンドなども同じ拝絹地で一緒に誂えられます。 その拝絹はサテン地でツルっと光沢のあるもの、もしくはグログラン地(コード地=横畝地)で 光沢感は落ち着き、マットなイメージとなる2種が主体となりクライアントにお選び頂きます。                 1932年 C.ゲーブル氏の着用されるディナースーツはシングル型の三つ揃い。 ウエストコートにはショールカラーが拝絹であしらわれています。 衿の返りは直線的Vゾーンですが、Uゾーンは仕立てによる手間と難しさも伴います。   釦はやはり腹部に集中しているのが分かりますね。               ウェルドレッサーの極みであり、ブリティッシュスタイルを語る上では 現英国王から学ばせて頂く事は多く、同時に現代という リアルな状況や解釈さえ垣間見る事が出来ます。   このダブルブレストのディナースーツはモヘア混の生地ではないかと思われます。 2枚衿のシャツにパネルフロント、スタッズも敢えて省略されているのかも知れません。 この辺りはウインザー公のブレーキングルールに因んでいると言えなくもありません。   しかし なんてお似合いなのでしょう、、、 こういった方々にとってディナースーツは生活に密着し、 着馴染みと共に着こなされるご経験値が醸し出す説得力を感じさせてくれます。               おそらく同じディナースーツでありチーフやブートニエールが違いますが、 教科書通りに白無地のシルクチーフでない辺りが既に超玄人です。   袖口にはラペルに同じ拝絹で仕立てられたターンバックカフがあしらわれていますね。 ディナージャケットでは腰ポケットにフラップは付けず、 バックはノーベント、そして総裏で仕立てられます。 (これらの何故⁉ はまた別の機会に!)   トラウザースの側章は1本、裾は必ずシングル仕上げ、靴下はハイゲージであれば コットンでも可ですが 理想は英国王の様にシルクのソックスを履くのが本来では理想です。           では ここからが本丸で御座います! ここまでの予備知識の有無により見る目も少し変わって見られる嬉しいです。   今週は大変な御贔屓を頂戴しておりますN様より、とても素敵なディナースーツの ご注文を頂戴致しましたので是非ご覧頂きたいと思います。 その魅力的なディナースーツと共に、 N様の粋な御心までをも感じて頂ける事と思います。                             今回お選び頂きました生地、これまた素晴らしい生地であり N様らしい審美眼を感じさせてくれます。     STANDEVEN 100% PURE ESCORIAL WOOL 250/270g   http://dittos.seesaa.net/article/500794032.html 【 ESCORIAL : SUITING 】     かなり細かな格子柄のようにも見える織柄、ピケのダークネイビー。 ピケ≒マルセラ でもありフォーマル地としての繋がりもあり、 敢えてブラックではなく、ミッドナイトブルーでもない 深きダークネイビーをご選択されました。     前提と致しましてN様はディナージャケットの類だけでも複数着はお持ちですから 今回のご注文は春夏でも着用出来るラグジュアリーで遊び心も 加味されたポジションと言えるのではないでしょうか。   ただ、この地薄で原毛の細いエスコリアル地はただでさえ仕立てが難しい 部類に入りますが今回は拝絹(シルクフェイシング)が付きます。 これがまた密で織られ結構確りとしていますのでパワーバランスが全く合いません!   それを承知でどの様にバランスを考え調理するのかが腕の見せ所でもあり 遣り甲斐高きご注文で御座います。               この日のコーデはパープルがポイントですね! 穿けばとても軽い春夏地のウエイトであり、 仕様はいつものシャープなシルエットの1-PLEATです。 裾は勿論シングル、側章は一番最後 仕立て上がってから縫い付けます。               春夏着用を考え ウエストコートはバックレスに! N様お気に入りの裾剣付ダブルブレスト型を 今回は更にリデザインし釦を腹部にまとめ、胸部を広くとります。 カーブの効いたショールカラーは拝絹でお作りしますが、 傷や汚れも怖いので仮縫い時は切り躾で上がり型のみ確認頂きます。                 特筆すべき事なく至ってベーシックで洗練されたダブルブレストは 正にクラシックの極み、N様らしくとてもお似合いで御座います。   この仮縫いではラペル含めフロントのエッジに至るまで 既に出来上り線で仕立てられています。 拝絹は絹ですから傷や汚れに注意、シルクゆえ冬のガサガサな指さえ引っかかります。 更に水滴がついてしまったら水染みになりますし、コテあたりはとれません!   全て総手縫いで掛けていくのですが、その前に一手間掛ける事と、 何かあった場合 高価な拝絹の買い直しも痛いですから やはり仮縫いでは拝絹を付けません! なので全然ディナージャケット感がないかも知れませんが、、、。   唯一この時点では 腰ポケットの口布として拝絹地が使用されています。                         さぁ、ほぼ修正無しで仮縫いを終え これからFINISHへ向かいます。 仮組みされた上着を分解し、いよいよ拝絹掛けに入ります。   拝絹を迎える上で、実はわざわざ布団(ドミット)を敷くのですよ! ドミッドはフワフワでガーゼの様な織地?編地?であり イセ込みながら躾で据えて参ります。     拝絹が付く(掛かる)であろう面積一杯に布団を敷いて拝絹をお迎えです。 据えられたドミットはシルクの細い糸でハ刺しにて緩めにとめ、 エッジは表地の縫代(折代)に 対し突合せでカットして千鳥縫い。 唯一ゴージライン部はドミットが無く 端打ちテープ(伸び止め)が見えていますね。 剣先やその他エッジは既に前身頃の縫代が折り返され、 その縫代と高さ合わせ含め突合せなのですが、ゴージラインには その様な縫代は現状では無く 拝絹の縫代(折代)がこれらか発生しますので 見越して拝絹縫代と突合せになる様 ドミットを控えてあるのです。   同色ゆえ、、、ハ刺しも千鳥も全然見えませんね、、、、 手間を掛けて手縫いで敷かれた布団なのですが(笑)。                     片面終了です。 これで躾(白糸)を外し、馴染ませたらいよいよ拝絹を据えます。   もう拝絹掛けは超慎重で集中モードですから 中間写真なんて撮っていられません! 切り込みや剣先も慎重に、、、、。       と いう事でいよいよお仕立て上がりです。                       側章(シルクブレード)はサテンかコードがあり、 ラペルに採用された織りに合わせますので今回はコードの側章となります。   シルクは水に弱く、プレスしたらアタリが付いてテカってしまいます。 シルクでなければ付いてしまったアタリは取れば良いのですが、 シルクは特性上とる事がかなり困難です。   故に、仕立て上げ、最終の仕上げプレスを行った後 湯通しして縮絨したブレード(単体時ではプレス出来ます)を 丁寧に手縫いで縫い付けて参ります。   ピリが出ないように、、、ブレードの両端を縫う訳ですが片側を 裾まで行って折り返して帰り道の逆側を縫ってくると 微妙にブレードが捻れる懸念があります。 なので、、、片側15㎝縫い進めたら針をおき、 逆サイドをもう一本の針で15㎝縫いすすめ、それを交互に繰り返して上から下まで、 裾まで到達すれば折り返してヘムにも縫い付けていきます。   確りとした秋冬地のドスキンやバラシアなどであれば随分と楽なのですが、 生地が薄くなれば、原毛が細く成れば難易度は増します。   こってりと時間がかかる訳ですし、そもそもシルク地(拝絹・ブレード)は 本当に高価なのでどうしてもイブニングフォーマルは高額になってしまうのです。   お尻のポケットにもフラップは付けませんよ、シルクの包み釦が見えるでしょうか!                 ウエストコートも良い感じで仕立てあがりました! 美しいカーブを描くショールカラー、返り止まり前端のエンドがゼロになっていますが これもここまで綺麗に卒なく処理するには高度のテクがいるのですね~。 実際にここをゼロにせず 畳まれ角張ったエンドであれば沢山見受ける事が出来るでしょう。                       上着も完成しました、、、 傷も汚れも付けずにここまでたどり着き、あとは御来店を待つのみ!               表地ピケ(エスコリアル)の織柄がとても素敵ですね。 腰ポケットの玉縁には畝の方向をラペルに合わせて拝絹地を使用し、 ポケットとして作ってはいますが あまり使われないので口は控えて中綴じしてあります。 しかしご使用になるのであれば解けますからいつでもご使用頂けます。                 拝絹はコード(グログラン)をご選択頂きました。 横畝が見えますでしょうか。 同じ生地で包み釦は畝方向を合わせて付けてあります。   この高価で繊細なシルク地にラペルホールをかがるのが本当に怖い! 針も新品に、手も洗いつつガサガサではないか注意し汚れと傷、 皴に気を付けながらかがります。     布団(ドミット)の上に鎮座する拝絹、それなりのボリューム感が出ますし アタリなどの軽減含め段差をフラットにすべくドミットがその役割を担います。 このほど良きボリューム感は触るとポフポフしています!   この拝絹掛けにおける所謂 『本仕立て』、本来BESPOKEでは昔ながらに 当たり前の仕立て方ですが、昨今ではかなり省かれてしまっています。 同時に縫製工場さんではこういった本仕立ては勿論無理ですから 簡易仕立て用には拝絹に工夫を施すのです。   拝絹地の裏に接着芯を貼るのですが、その接着芯自体が ドミット状(スポンジ付き)になっていてボリューム感を持たせた 接着芯をベタっと貼るのです。 その拝絹地を通常の身返しを返す様にミシンで縫ってひっくり返します。 このやり方では段差軽減が本仕立て並みに出来ないので 段差やアタリが出やすく様々なデメリットがあります。 雰囲気や触り心地も本仕立てとはまるで別物です。   ですが、大いなるメリットとして早くて簡単にできる、だから安価で済む という側面があるのですね。 既製品や貸衣装の類は全てソレとなります。   ですから技術者であれば例えばウエルトポケット(胸箱ポケット)や ジェッテッドポケット(腰玉縁ポケット)、上襟掛け、拝絹掛けなど 所謂昔ながらの本質的な『本仕立て』で仕立てられているか否かは直ぐに分かります。 それだけ機械化や接着芯の仕様、そして機械化が進んでいるのです。   昔の服は逆にその殆どが本仕立てですから、、、 良くも悪くもベクトルの違う技術の発展、効率化により 安価で大量生産も出来るようになったと言えるのです。                     上から下まで拝絹が鎮座していますが、これが標準です。 ですが、中にはラペルの返り止まりより下は表生地と接ぎ合わせる事もあるようです。   安価な仕様で考えれば、少しでも高価な拝絹の面積を減らせます。 ですがデメリットの方が多く、本来ではNGであり、意味合いから見てもNGなのです。     今回の裏地は英国製のヴィスコースであり、シルクではありません。 シルクライニングも良いのですが、、、 シルクは摩擦と水に弱いので汗含め裏地としては本来不向きです。 ただ、ビジネススーツなどと違い着用頻度は下がりますから 贅沢着としては全然アリですね。   耐久性や滑りなどもヴィスコースの方が勝りますので 実用的で考えるとコチラに軍配が上がります。               テールコートやモーニングコートの親でもあるフロックコート。 最早 ご先祖様レベルになってしまいましたが、 このフロックコートは現代の様な昼夜に分かれず着用されていました。   スリムなチャーチル氏が着用するフロックコートのラペルをご覧下さい。 エッジから半分は表に共地、途中から拝絹たるシルク地になっていますね。 こんなデザイン(仕様)を古い写真では多く見る事が出来ます。   そもそもテールコートやディナージャケットのラペルに付くシルク(拝絹)、 あれは何で突然別布が、、、とお考えになった事があるでしょうか。 拝絹の由来につき ネット検索で出てくる説はいまいち信頼度が低くて、、、。   その答えはご先祖様に聞いてみましょう!       上着の衿とは 上衿と下衿 に区別され、 その分断・区分け線は襟ぐり線であるゴージラインです。 下衿 = 返り(折返り)衿 = ラペル そう、本来ではラペルとは内側を表側に捲られているのですね。   捲られて見えている内側部分は 『身返し』 というパーツであり、 一つ上の写真では拝絹部分全てが その呼称対象となるパーツです。 そして更にその身返しの奥に裏地(今回ではヴィスコース)が縫い付けられていましたね。 身(身頃)を折り返して下衿となり、ラペルと呼称されます。       ラペル(返り衿)を起こせば(元に戻せば)学ランの様な 立ち襟(スタンドカラー=詰襟)ですね。 そのスタンドカラーの第一釦、更には第二釦を開け 開襟シャツの様に ネック部を捲り返して着用した場合 見えるのは身返し(共生地)と、 チラッと見える その奥のライニング(裏地であり、当時の多くはシルク)なのです。 故に見えている半分のシルクは『ライニングが見える』という体を リデザインしていると言えます。   このハーフシルクを更にリデザインし、 前面にシルクで覆ってしまったという流れがテールコートであり、 その更に流れをくむドレスラウンジ(ディナージャケット)ではないかと推測できるのです。     どうでしょう、この考え方が理に適う筈であり、歴史的繋がりを感じる事が出来ます。 この繋がりこそ歴史であり、進化を繰り返した本当のクラシックな紳士服なのです!         はい、お疲れ様で御座いました。 今週の授業はここまでと致します!           では、大変長らくお待たせいたしました。 最後に美しくエレガントなN様のお姿をご覧下さいませ。                 ドレッシーな内羽根のプレーントゥ、なんと穿き口にはシルクのトリミングが、、、。 この日は着用を想定してきて下さりました。   実はこの日の夜、早速今回のディナースーツをデビューする御機会があるとの事。 その時は本式にオペラパンプスにも履き替えられるようご持参されているそうです。 早速のデビューが楽しみですね。                 ご着用されているT&AのBESPOKE SHIRTSはパネルフロントですが、 スタッズとシェル釦の両方が楽しめる仕様との事。   兎に角エレガントで決まっており、生地も黒ではない辺りがN様らしく思います!                             ・・・・・如何でしたでしょうか。 少し語り過ぎましたが、、、 説明しだすと中途半端で終えられませんので恐縮で御座います。   今回はイブニングフォーマルな歴史の勉強と共に 素晴らしきディナースーツをご注文下さったN様に心よりの感謝を申し上げます。         御納品してまだ間もないのですが、既に2回もご着用頂け 評判も良いとの事で嬉しきご報告も頂戴致しました。 流石にそれだけご着用頻度があるのですから ディナージャケットだけでも様々に楽しまれるべきで御座いますね。   昨今では様々なファンシースタイル、それに伴う付属のバリエーションも御座います。 また拝絹自体もシルクにブレンドなどの交織や化繊地など品質も様々です。 お値段がピンキリになるのも少しはご理解頂けましたでしょうか⁉         フォーマルウェアを誂えるのであれば、お店選びも重要です。 それなりに歴史含めた知識、そして経験が必要ですあり、 その有無により生み出されたフォーマルウェアは 服の発する説得力自体が俄然違う筈であると私は思っています。       N様 この度も素敵なご注文を賜りまして、誠に有難う御座いました。 そして長きに渡り最後までお付き合い頂きまして 重ね重ねお礼申し上げます。            

    Read more
  • 【 2025春夏 / お勧めスーチング② 】

    2025.02.25 Bespoke Tailor Dittos. 生地に付いて

    【 2025春夏 / お勧めスーチング② 】

            店内の アセビ(馬酔木)が可愛い花を咲かせております。 グリーンが強めなアセビの葉には有毒成分が含まれており、 葉を食べた馬が酔ったようにふらついてしまうその様より名付けられたとの事。 小さくて白い壺が幾つもぶら下がっている様でとても可愛らしいお花ですね。 ささやかな「癒し」を享受しております!             さて、今期仕入れの生地は全て揃い 徐々にご紹介をさせて頂いております。 お陰様により既に光栄なるご予約や ご注文を頂戴しており誠に感謝しか御座いません。 お仕立て上がりが楽しみですね、私もで御座います!   今週も続きをご紹介させて頂きますが、生地ばかりでは飽きてしまわれると困りますので 次回は別のカテゴリにて更新したいと思っております。 とは言え、今週紹介の生地も素晴らしく かなりお値打ちな仕入れが出来ました。 昨今の値上がり状況下を垣間見れば、 間違いなく入手しておいた方が良いと心底お勧め申し上げます。                     エレガントでクラシック、正に非の打ちどころ無き そのスタイルに憧れを抱かずにはいられません。 ダークスーツにはそれなりの意味とポジションがあり、 どんな時代でも紳士にとっては欠かせぬスーツです。 故にこのポジションは年中常にあり得ますので、頼りになる相棒を シーズンで分けてワードローブにラインナップされているべきアイテムでもあるわけです。   F.アステア氏のダブルブレストスーツ、 ソフトな仕立てによる美しきドレープがとても素敵です。 生地は皴よりやや軽めな印象でもあり、 袖にはピシっとプレスされたクリーズラインが見受けられます。               2月も後半になりましたが まだまだ寒く、 装うには好都合ながら 春夏は必ずやって参ります。 ネイビーのスーツはブルー系で単色コーデされ、 清涼感と共に清々しく暑さなど感じさせませんね! 帽子と靴で春夏らしい季節感や抜け感が良い感じです。   日本の様に高温多湿な国だからこそ、 春夏のスーチング素材ではモヘアが欠かせません。   MOHAIR(モヘア)はアンゴラ山羊の毛から作られた繊維であり、 吸湿性に優れている為に重宝され訳ですね。 その他にも沢山の特徴があり、光沢感の強さや ハリコシが強くて皴になり辛いなどが挙げられます。   http://dittos.seesaa.net/article/321867264.html 【 新旧 KID MOHAIR 】 ・・・ 気付けば12年も前の記事!     そのモヘアの中で まだ生後間もないKIDS達より頂いた最高に綺麗で 細くしなやかな毛こそ最高のスーチングに使用されています。 豊かな特徴のモヘアでもデメリットはあり、ゼロではありませんが ウールの様に100%で使用される事は極僅かです。   そのモヘアたる特徴を どのくらい表現したいかにより 混率を変えるという事になりますね。 暑い夏でも清々しく着る事の出来るキッドモヘアはお好きでしょうか。                   SMITH WOOLENS   1921年 ロンドンのゴールデンスクエアで創設されたロンドンマーチャントの雄。 ここも沢山の名作がありますが、一番有名なのは ソラーロ でしょう。 登録商標を有し、本来では唯一 SOLARO を名乗れるメーカーという事になります。   同社よりキッドモヘア混の極上スーチングを特価にて仕入れる事が出来ました。 昨今の価格上昇にもれず、キッドモヘアも高級獣毛ですから 混率が高ければお値段も比例しますので この度の出物仕入れはかなりのBIGチャンスとなります!                   ライオンがトレードマークな同社のネーム、 迫力のあったライオンさんは発色良きレッドで、、、、 今では随分とシンプルになり、ライオンらしく勇ましい鬣(たてがみ)は オールバックに整髪され モデファイ進んで なんかスフィンクスみたいになってきたような!                   60% KID MOHAIR 40% Super100‘s WOOL 260g     6:4 鉄板混率のブレンド、HARRISONS社の最高級で知れた 名作『CAPE KID』に同じ品質であり、 織元はモヘアを得意とするあのミルではと推測されます。 左に吸い込まれそうなシックで美しきダークネイビー、 右に英国らしいブルーグレー。   双方同じシリーズ、色違いの兄弟です。   これは間違いありません、春夏用のスーツとしては 是非ワードローブに入れておきたいポジションである筈です。                       先ずはダークネイビーからご覧下さい。 実物は写真よりもっと濃い色であり、なかなか表現が難しいです。 本当に深く濃い色味で引き込まれる様な魅力を持ち合わせています。   特徴である光沢感は美しき光の陰影を生み、 ハリコシある弾力は豊かなドレープを生み出します。 吸湿性も高く、常にシャリシャリしていて冷んやりと感じられる肌触りなのです。                         こちらはブルーグレーです。 これも英国的で欠かせぬ色味でもあり、英国王も良く着用されておられますね。   強き日差しを避けるがためにも色のトーンを下げ、 良い意味で春夏地らしい清涼感も生まれます。 単にライトブルーではなく、グレーシュな色味である事が前提であり この色の魅力でもあります。   若い頃にはその魅力を微塵も感じられませんでしたが、 今となっては大人の落ち着きと渋みを感じさせてくれる素晴らしい色味です。                   今一度 兄弟揃って色味の比較を。 皆様、ここまで高品質な英国製KMは もうこんな価格帯では手に入りません。   真面目に大きなチャンスであり、鉄板な色、そして最高な品質です。 KMを堪能するなら是非 混率6割レベルでご堪能下さいませ。         では次に参ります。 (今週ご紹介の生地は 全て SMITH WOOLLENS です。)               84% FINEST MERINO WOOL 16% SUPERFINE KID MOHAIR 230g     FINEの最上級でFINEST、SUPERなFINE具合、、、 一体どっちが上ですかね⁉   という冗談はさておき、こちらの生地は妖艶で美しい『 茄子紺 』です。 濃紺に赤みが入り、青紫色の濃い色、、、まぁ正に茄子の色味です。 とても色気のある色ですよね。   この生地には小技が効いていて、同社のソラーロよろしく交織織になっています。 150㎝幅の生地端を合わせて二つ折りに畳んであります。 内側が表側となり、中表状態を捲っているので見えているのが表側となります。   対角線に左上と、右下、明らかに色味が違いますね! 左上は経糸が強く反映、右下は緯糸が強く反映し、 見る角度によりこれだけ色味の印象が変わります。             生地の裁ち端(横地)ですが、刷毛の様に見えている 黒っぽい糸が経糸であり 先ほどの左上色です。 緯糸にはネイビー(青紫)が使われ、それらが交織となり 独特な表情を醸し出すのです。                 本当に美しくて綺麗です。 先の兄弟2色と比べれば華やかさがあります!   そしてこの生地は先の2色より薄地で軽く、 キッドモヘアの混率が少なくて 16% しかブレンドされていません。 故にウールの柔軟性が主体に、光沢感とハリコシが 加えられているという感じでKM感はそれほど強くは感じません。   そこが良くも悪くも特徴であり、企画された意図という事です。 桜色のシャツがとても似合いそう、、、、。   では次が今週のラストです。                           27% CAPE MOHAIR 73% SUPERSPUN MERINO WOOL 290g     また中途半端に刻んできた混率は約3:7、 CAPEは南アフリカ産のモヘアであるという事であり、 今では世界でも有数のシェアを誇る産地となっています。 SPUNは撚糸ですからSUPERで強撚糸を指しているのでしょう。   ウール側の糸も強撚糸にして弾力を持たせ、 KMのハリコシと共に防皴に特化していると言えます。 また、この生地のみ 290g と3シーズンウエイト並みに ボリューム感があるのも特徴です。                   色は正に KHAKI(カーキベージュ)です。 カーキとは軍服色としても有名であり、とても振れ幅の広い色でもあります。   そもそもカーキとは「土埃」を意味するヒンディー語のKhakiであり、 本来では黄色に茶色を混ぜた様な色味を指します。   ベージュでも良いのですが、カーキと敢えて区別すると ベージュは茶色を明るくした色、カーキは黄色に茶色を混ぜた色との事。 絵画などを嗜む御方は色のブレンドによる変化や違いが分かりやすいと思います。   別に大した事ではないのですが、色のもつイメージと共に 印象を与えるであろう呼称は大事です!   前々回でご紹介させて頂いたFOXのサンドベージュより濃い色味でもあるのです。 乾いた土が風に舞う色、これまた美しきアースカラーでもあります。                 涼しさを念頭に入れれば生地は薄い方が良い、 ですが強度や耐久性を尊重すればこの位のウエイトが望ましい。 平織地で通気性も良く、皴にも強くて頼りがいもあります。   なにより この色のもつ魅力が素晴らしい。 こういったベージュ系のスーツもワードローブには入れておきたいですね。                     では最後に 今週ご紹介分の4種を並べてみました。 ダークネイビーの濃さ、茄子紺の色気などは分りやすいです。 反面 カーキが白っぽ過ぎる印象な写真です。   それぞれの混率やウエイト、そして色味、シャリ感の度合いが織りなす肌触りと ご自身の目で見て、触って、そしてリアルを感じてください。                     このイラストは一目瞭然で分かりやすい! 装いは主にTPOに応じたスタイルになりますね、 春夏のワードローブ内でのバリエーション。   春夏用のスーツはビジネスやタウン、リゾート。 そしてお気楽なオッドジャケットでの装いも加え、靴や帽子も様々です。 センターのダークスーツは浮いている様にも見えますが、 欠かせぬからこそ仲間にいる訳ですね‼ クレリックカラーのシャツが素敵ですが、双眼鏡を持っている辺り 競馬⁉ どちらに行かれるのでしょうか⁉         皆様、春夏に向け 丁度良い仕込み時で御座います!   皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。 今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。               ・・・・・誠に申し訳御座いませんが 来週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。 地味に動き続けているシャツの受注再開に向け、諸々行動に伴い時間が必要です。 顧客様方からの再開を願うお言葉も強く、もう少しお時間をください。   次回は 3月11日(火)を予定しております。   どうか引き続きよろしくお願い申し上げます。            

    Read more
Bespoke Tailor Dittos.