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Bespoke Tailor Dittos.
  • 【 H様のご注文:VINTAGE ZENITH 】

    2023.07.04 Bespoke Tailor Dittos. お客様のご注文

    【 H様のご注文:VINTAGE ZENITH 】

          梅雨の最中 湿度も気温も高くて過ごし辛き日々が続いております。 これからの時期は何を着ても暑いので耐えるしかありませんね。 その先にある涼しさ、そして寒さを楽しみに顧客様方は秋冬物の誂えを仕込まれます。           皆様におかれまして ダブルのスーツはお手持ちに御座いますでしょうか。 ダブルブレストはシングルブレストより誤魔化しも効かぬ為 既製服ではなかなか扱いづらいアイテムでもありますので、 そういう意味ではダブルブレストのスーツをご着用の方は 誂えられた可能性が高いとも言えるのかも知れません。   打合いが広くて Vゾーンもコンパクト、 布に包まれる面積が大きく 存在感と共に重厚感があります。 ダブルにはダブルの魅力があり、 この味わいは当然ながらシングルでは享受できません。   誂えの世界では そんなダブルブレストの魅力を存分に楽しんで頂ける筈です。             キング・ジョージ6世 このお方もダブルをこよなく愛用され、 エレガントに着こなされたお一人で御座います。 控えめな装いながら、この写真ではボーダーの靴下が印象的ですね。           可愛いお孫さん、現英国王チャールズ3世と共に。 あたたかくて優しい笑顔の英国王、堂々としたラペルの打合い深き ダブルブレストのスーツは素晴らしく、正に見本の様です。           ご自身のスタイルを確立されておられる 多くの顧客様方もイメージされる方は少なくありません。   今週は博識で確固たるご自身のスタイルをお持ちな H様のご注文を紹介させて頂きます。                   なんて端正でエレガントな着こなしでしょう。 この凛とした佇まいを醸し出すには蓄積されてきた 多大なるご経験が無ければ醸し出すことは出来ません。   ご納品の日、このスーツに合うコーディネイトでご足労頂き そのまま着て帰られました。   H様には既に何着かダブルのスーツも誂えて頂いております。 しかし今回の生地をお決めになった時、 既に冒頭のキングが頭の中ではイメージされていたそうです。 今回は更にディテールバランスや匂い出し含め 型紙を引き直してお仕立てさせて頂きました。 完成された美しきダブルのスーツを着用された エレガントなH様を是非ご紹介させて頂きます。             お選びになられた生地はヴィンテージであり、 織元は既に廃業されております。 当時の最高スペックな原毛に、カシミアとミンクがブレンドされた レアで素晴らしい生地であり、大変貴重なネイビーソリッドです。 写真では伝わりませんが、この色、紺具合がまた絶妙な色味でした。   http://dittos.seesaa.net/article/499114742.html 【 EXTRMELY RARE:VINTAGE SUITING 】 (上記リンクは同じ織元 ZENITH より、別の生地を紹介したページとなります。)             ウエストコートもダブルブレスト、 今回はこのウエストコートもデザインバランスを変えてあります。 より雰囲気を感じて頂けましたら幸いです。               ラペルにも随分と特徴があるのですが、野暮ゆえ深くは語りません。 そして 打合いや釦のレイアウトは大きく印象を左右する部分でもあります。 腰ポケット、この微妙な角度のスラントはH様の拘り処の一つで御座います!   クラシックなダブルブレストを着用の場合、ウエストコートは見えません。 そもそもスーツは三つ揃いが前提なので、 見える・見えないで決めるものでもありません。               袖を外してアームホールの深さや幅なども確認して参ります。 何着もお誂え頂き 型紙精度は既に高いと言えますが、 長きお付き合いをさせて頂ければ人間ですから体型変化も御座います。 歳を重ねるごとにお身体の変化は当たり前ですし、 他にもご病気やお怪我、環境やお仕事が変わったりなども 長き人生の中では有り得ますので様々です。   基本的に仮縫いでは その時の最高を目指すのが前提ながら、 意図あって敢えて今まで通りにという事も御座います。 H様と確認しながら調整幅を決めて参ります。                             さて、仕立て上がり いよいよ最終FITTINGの日を迎えました。 トラウザースの持ち出しはレギュラーを『前カン』と させて頂いておりますが、H様は釦派で御座います!   クレリックシャツにネイビーのソリッドタイ、 H様のエレガントなセンスが出ています。                   胸幅いっぱいに広がる堂々とした衿、 打合い深く 逆ハの字を描く釦レイアウト、 裾も敢えてポインテッドにしていません。             端正で凛々しきお姿も正にH様の『らしさ』が滲み出ています。 腹部の4釦は四角形を構成しますが、時代も遡れば打合い深く横長の長方形を描きます。   反面、この重厚感を嫌うイタリアンなスタイルは 打合いを浅くしていきますので(全ではありません) 正方形から縦長な長方形さえ見受ける事も出来ます。 この打合いはVゾーンとも密接な関係にあり、 打合いが浅ければ浅いほどにVゾーンも深くなります。   そもそもスーツの祖先は軍服であり、グレートコートやトレンチコートなどの様に ダブルの下衿(ラペル)は基本全閉めが出来るものです。 故にシングルと違い、ダブルのラペルには今でも両側にホールがかがられますし、 胸部の飾り釦も本来ではラペルが閉じた時に来るであろう位置に 著しく乖離しているとおかしいのですね。 今では意識されていないダブルのデザインは本当に多く、ゴージライン然りですね。   こんな事 どうでも良い事かも知れません、 しかしこれがクラシックであり、その服の説得力にも繋がるのです!           この度はノーベントでお仕立てしております。 綺麗なバックスタイルです!               蘊蓄ついでにもう一つ触れておきます。 それは フロント釦のサイズです! 先ずこれら写真で気付かれた方は相当オタクであり、 マニアな方ではないでしょうか(笑)。     古き重厚感あふれるエレガントなダブルブレストは打合いが広いです。 故に通常サイズの釦でも良いのですが いまいちパワー不足感も否めません。 となると、通常スーツ用以上 オーバーコート未満 となる中途半端なサイズの釦が欲しくなります。   実は英国には昔から普通にあるのですね! (オーバーコート用でも選択できるサイズの奥行きを持ち合わせます。)   古着でもシングルブレストより ほんの若干大きなサイズの釦が 付けられているダブルの上着が探せばありますよ! ほんの若干、、、これが重要であり、私はともかく H様も良くご存じであり流石で御座います、確りとリクエストに入っておりました。   ( リクエストが無くても この系統なスタイルでご注文を お受けすれば私からご提案もさせて頂いております!)             このフロント釦もそうですね。 この洋服サイズに対して釦サイズのバランス、間違いないでしょう。   かなりマニアックなところですが、、、私にとっては大事であり、 H様におかれましても大事であったという事で御座いますね。 言われなければ気付かれぬほどのサイズ差ですが、 付け比べると随分と印象が変わります。             ご予約されていた生地を前にご注文内容の確認で御座います。 ロングターンな着こなしもキング・ジョージ6世ですよね。   好きでない方々から見れば ただのオタク話にしか 聞こえないかも知れませんが、、、私は楽しくて仕方がありません! H様、いつも遣り甲斐のあるご注文を有難う御座います。                     ・・・・・如何でしたでしょうか。 本当に素敵なダブルブレストのスーツでした。   H様のようにお詳しく、拘りのある洋服好きな方もおられますし、 片や拘りや洋装的知識もほぼ無く、ただただ自分に合ったスーツを 気持ちよく着たいので ほぼお任せという方もおります。 別に知識など無くても全然良いのです、その為に私が沢山勉強しておりますので ご注文主様に、ご注文内容にベストなさじ加減を私が行うのです。   私の知識や技術は顧客様方の為にあり、存分にご利用頂けましたら幸いです。 限界はありますが結構沢山の引き出しは用意しているつもりですので、 なんでもお気軽にご相談頂ければと思います       ご自身の為だけに誂えられた掛け替えなき テーラードガーメントを是非ご堪能下さいませ。 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。               ・・・・・当店 HOUSE STYLE ORDER よりのご連絡で御座います。 既に何件かお問い合わせを頂戴しておりますが、夏に開催される工場さん企画の 【 早期受注フェア 】につきまして、 8月1日より 約3週間くらいでの開催で検討中だとの事で御座います。   日程は確定ではないので多少の前後はあり得ますが、大きな誤差は無いでしょう。 ご新規様も含め、もし宜しければ このご機会も有効利用して頂ければと思います。   何卒宜しくお願い申し上げます。                        

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  • 【 ESTATE TWEED:Glenurqhart check 】

    2023.06.20 Bespoke Tailor Dittos. 生地に付いて

    【 ESTATE TWEED:Glenurqhart check 】

            6月、梅雨の最中ながらも好天になれば気温は30度を超えたりと、 既に厳しい暑さも感じさせますね。 そんな時期だからこそ、誂え慣れされた顧客様方は 秋冬用のネタを仕込まれる時期でもあります。               秋冬となればツィードが恋しくなります。 ウインザー公は格子のスポーツスーツに フラットキャップも合わせて誂えられていますね。 ゴルフやシューティング、フィッシングなどのスポーツウエアでさえ 当時は丈夫なツィードがその役割を担っていました。   http://dittos.seesaa.net/article/485242277.html 【 LOVAT TWEED:5P-SUITS 】                   LOVAT MILL   ツィードの発祥地であるスコットランドのホーイックにて 1868年に設立された老舗のミルです。   ≪ エステートツィード ≫ ツィードの理解を深めるのであればエステートツィードを知る必要があります。 簡単に説明すれば、貴族や領主が広大な領地内で着用する 専用の格子柄を生み出したのですね。 丈夫で自然に溶け込むアースカラーを巧みに、 そのバリエーションは各家多岐に渡りました。 このエステートチェックに有名なタータンも含まれるという事になります。   http://dittos.seesaa.net/article/486092629.html 【 LOVAT TWEED ① 】               厳密に言えば タータンチェック とは和製英語であり、 本来はタータンのみで格子柄共々あらわされます。 スコットランドの正装としても有名であるスカートは 男性でも着用されます。                 ウインザー公の多くの愛用品はサザビーズのオークションにでました。 これは当時のカタログであり、 公の愛用品は言わずもがな目を見張るものばかりです。               中身を覗いてみましょう。 公のワードローブのうち、 カントリー系に特化した極一部の写真だと思われます。 左側の方に小豆色のグレナカートチェックの上着が見えるでしょうか。                   1923年製 公が贔屓にしていた Scholte により仕立てられたものです。 ショルテ、ショルト、スコルト、、、日本語に置き換えられると 私が見てきた記述だけで様々な読み方がされております。 確か生まれはオランダの方だったような、、、 袖のカットを見れば等袖裁断(等分配袖)が成されており 時代を感じさせてくれる一つの手法です。   日本語ではグレンチェックと呼ばれる格子柄がありますね。 正確には Glenurqhart check (グレナカートチエック)となり、 スコットランドにあるアカート渓谷(グレン=渓谷)を指し、 この地域の領主のエステートチェックとして作られました。   Glenurqhart check は Prince of Wales check とも言われています。 多くの方々の認識ではモノトーンベースで多様な織地柄で構成された格子柄であり、 スーツ地含め良く見る格子柄である事でしょう。   ですが、ウインザー公(エドワード8世)の着用していた Prince of Wales  は この色柄であり、HARRISONSがこのデザインを復刻した際には TRUE PRINCE OF WALES とし、モノトーンベースで一般的な格子は CLASSIC PRINCE OF WALES と区別されていました。   どちらもグレナカートチェックですが、 ウインザー公の格子(Prince of Wales)は別途認識する必要があるという事になります。     この格子は、MAROON『マルーン:栗(マロン)に由来する赤味帯びた茶色』 がベースであり、ブルーのラインを帯縞に加えられていると記載されています。 まぁ見れば分かりますね!   とても印象深く、魅力的な色、格子、、、、 洋服好きな方にとって公のスタイルは避けて通れませんし、 どこかしらで目にしているのではないでしょうか。               ・・・・・エステートツィード(エステートチェック)を 現代へ復刻・再生を目指し、担うのがLOVAT社の役割であると謳われています。   もうピンときましたね!                       絶対に意識されたであろうデザインですね。 因みに この帯縞はグレンストライプと呼称されますが 横方向の帯縞にはリアルに同じくブルーが採用されています。 気付かれた方はいらっしゃるでしょうか、、、 リアルのPrince of Wales checkではブルーは飛び飛びで入れてあるので、 青の入る横縞、入らない横縞と交互に織られています。 反面 LOVATは全ての横縞にブルーを入れていますね。   これ、、、、もし同じように飛び飛びで織った場合 ただでさえ格子は柄合わせの為に用尺を+α必要とするにも拘らず、 飛び飛びにした場合は 1クールのデザイン区画が大き過ぎ とんでもない尺を有してしまうのです。 故に現実的な側面により HARRISONSでもそうでしたが この様にデザインされているのでしょう。 と考えると、公の格子は相当に贅沢でもあると言えるのですね!       縦の縞を見ると、分かり辛いのですが オリーブグリーン も 帯縞色に加えられていますね。 この深みとエグ味、流石のセンスとしか言いようがありませんね!                   ・・・・・英国通で博識な顧客様より、 フラットキャップ含めたスポーツスーツの御依頼を頂戴しております。 光栄な事に 拘り深きスタイルを持たれる別の顧客様からもご注文依頼を承りました。   この生地を選ばれる方は偶然ではなく、必然で選ばれているのですね。 私は洋服バカですが、皆様も相当お好きです!!   どんなスタイルで仕立てられるのか、、、、 どうか皆様も妄想を膨らませて楽しまれてくださいませ!                 ・・・・・如何でしたでしょうか。 当店BLOGは宣伝的側面もありますし 今回の様にマニアックな話も多いかと思いますが、 普通に無難でベーシック、クラシック、シンプルなご注文も 勿論お受けしておりますし、むしろそちら側の方が圧倒的多数ですので ご検討下さる皆様もお気兼ねなくお声掛け頂けましたら幸いで御座います。     真夏を前に既に気温は高めですが、 お店を涼しくして皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。 今週も誠に有難う御座いました。               ・・・・・来週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。 次回は 7月4日(火)の更新を予定しております。   どうか引き続き宜しくお願い申し上げます。                    

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