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【 A.W : STANDEVEN 】
2024.10.22
生地に付いて
国王ジョージ6世の装いは英国の歴史とスタイル, そしてエレガンスを見事に表現されており、 学び多きスタイルでもあります。 ダブルブレストの4釦2掛けは打合いも広く、 コンパクトなVゾーンが雰囲気満点です。 ターンバックカフを携え、とてもベーシックな チェスターフィールドコートであり ダブルの見本の様でもあります。 そもそもチェスターフィールドコートはモーニングコートや イブニングテールコートの上にも着用が出来るコートでもあるわけです。 故に着丈は膝下丈がマストでもあり条件でもあります。 何故ならば、インナーとして有り得る上記フォーマルコートは 基本的に膝丈で設定されます。(時代など含め 多少違いもあります。) そのインナーの裾が外套裾から覗いていたら大変ですね! ウエストコートの裾からシャツやネクタイが 覗いてしまっているほどに恥ずかしい事です。 ジョージ6世もこの写真(1937)では 裾をシングルで上げられたコードストライプの モーニングドレストラウザースを穿かれているよう見えます。 温暖化やカジュアル化に伴い、テーラードなオーバーコートの需要は 減っているかも知れません。 されど、テーラードを愛される紳士方におかれまして 冬となればチェスターに限らずともオーバーコートは嗜みたいものですよね。 TAILORで誂えられるオーバーコートはインナーの精度次第であり、 唯一無二な相性を持ち合わせ 格別な着心地をお約束いたします。 今週は冬に向けてラグジュアリーな生地を沢山ご覧いただきましょう。 Joshua Ellis Pure Cashmere (Ripple Finish) 500g カシミアと言えば もはや同社を欠かす事は出来ません。 最高のカシミア含め 高級獣毛を最高のレベルで織り上げ、 その品質は あのHermèsでも扱われているのは有名であり、 当然の成り行きなのでしょう。 500gといえば、コート地としては中肉級であり 重過ぎないレベルとして一番使いやすくもありましょう。 シックなダークネイビーは私の大好きな リップルフィニッシュで仕上げられた至高な逸品です。 さざ波のように流れるような表情は濡れている様にも見え、 その瑞々しさは触ればウットリしてしまう事でしょう。 あと2着分しか御座いませんが、このお値段で皆様へご提供出来る日は もうこないと無いと思います、、、、。 キャメルやカシミア含め、同社には大変お世話になって参りました。 極上なネタを小さき発注量でも随分と長きに渡って仕入れさせて頂いておりました。 シーズンになればカシミアやキャメルの巻きがドカンと 店頭に存在感をしめしていたものです。 ですが、今では体制も変わり もうそんな仕入れは不可能と言えます。 では、極上ネタはどうすれば、、、、 ご安心ください、全て STANDEVEN にて揃います! STANDEVEN 1885年 ウエストヨークシャーで創業された老舗のミルです。 1926年には プリンス・オブ・ウェールズ(ウインザー8世) も表敬訪問されております。 同社は紡績から織り、仕上げ工程までの全てを賄える事の出来るミルであり、 最盛期には700人の従業員がいたそうです。 現代ではLUXURYFABRIC社の一翼を担い、そのグループ内における各老舗のミルと連携し 高級かつ総合的なマーチャントとしての顔が色濃くなっております。 この様な動きは FOX にも見受けられますね。 そんな同社より、冬の装いに欠かせぬ生地たちをご覧頂きます。 先ずは EVEREST・・・全て極上なカシミア100%で織り上げられた ジャケッティング、コーティングのシリーズとなります。 ウエイトは 300g でまとめられたジャケット地です。 軽めなので秋口より楽しめそうですが、 軽めとは言えカシミアの暖かさは皆様も知るところですね。 この辺りはコート地であり、ウエイトは 470g と贅沢な肉味があります。 確りと縮絨され、とても密で温かそうです! ありました、リップルフィニッシュ! 私にとってカシミアのコーティングと言えば やはりコレが好き。 ウエイトは 500g、仕上げはリップル、、、 そうです、この生地のダークネイビーが 冒頭で紹介した生地に同じなのです! 後ほど出て参りますが、カシミアやキャメルの類は J.Ellis より 完全仕入れによりラインナップされているので、 J.Ellisの定番もほぼ内蔵されていると言えます。 ブラウンやグレー、ブラックなどであれば S.EVENよりの仕入れますが たまたまダークネイビーがご希望あれば それはかなりのラッキーであると言えます! 冒頭の仕入れ時は今のようにお値段が跳ね上がる前であり、 此度 その同じ生地での値段差に驚きを隠せません、、、 本当に最後のチャンスである2着分の当店在庫です。 http://dittos.seesaa.net/article/482432560.html 【 ROYAL CASHMERE : OVER COATING 】 ↑ コートの仕立てにも触れており、リマインドにも是非‼ ラストに君臨するヘビーウエイト、その重さは 720g となります。 メルトン級なカシミアは贅沢なダッフルやピーなどに置き換えても良さげですね。 実はこの生地、ダブルフェイスといい 2枚のカシミア地を 繋ぎ合わせて1枚の生地にするという独特な織りとなります。 二重ですから当然ながらボリュームが出ますし、 場合によっては2重にする生地同士を色違いや柄違いで といった事も可能です。 ですが これだけの重量分となるカシミアをふんだんに使うのです。 上着用2着分で1着となりますので それはお値段も、、、、(涙)。 SNOWDONIA 山塊(山岳)の名称でもあるスノードニアは、オーバーコーティングの生地を 総合的にまとめられたシリーズとなります。 バンチも分厚くなりますね! お待たせいたしました、毎年お問い合わせも多い キャメルヘアー の登場です! これらも J.Ellisの定番ですね! 当店在庫は既に完売しておりますが、店頭でも一番の 存在感を放っていたキャメルの巻きでした。 640g / 520g / 340g と用意され、このラクダさん色に癒されますね。 キャメルはカシミアと比べ色展開が頗る少ないですが、お気付きでしたでしょうか。 大抵は素のラクダ色、もしくはこの写真の様なネイビーなど。 実はラクダの毛はカシミア山羊の毛のようにうまく染まってくれないらしいのです! なので かなり強制的に染め上げるダークな色味しか存在しないのだとか、、、。 ラクダさんも相当上がってしまいました(涙)。 凄い、850gです。 ラムズウール(100%)製であり、ヒツジさんが小さい時に刈られた細くて綺麗、 しなやかな羊毛がラムズウールとなります。 しかし、そう感じさせないほどにハリ・コシ強きメルトンですね! 100% LAMBSWOOL 850g ヘリンボーン柄で この発色綺麗なオレンジ、、、見た事ありませんか⁉ えっ、、、ちょっと、、、何て巨大なグレナカートチェックなのでしょう。 ここまでのサイズは見た事がありません! もし仮に この生地へ惚れたお客様がいらしたら、、、、 このサイズで柄合わせを考えると 実際にプラス用尺は 一体どの位になるのか想像すらつきません。 これらは別途値付けが必要ですね(汗)。 恐ろしい、、、デザイナーさん、絶対に柄合わせなど考えていないですよね⁉ 100% WOOL 670g ヘリンボーンまで⁉ 泣ける(笑)‼ 千鳥格子もありましたですよ。 度肝を抜かれたところで 次は渋いのが出てきました。 かなりの打ち込み密度でハリ・コシが半端ではないレベル、皴なんて無縁の様なタフネスさ! 100% WOOL 580g これはフランス綾と呼ばれ、幅を決め向きを変えてヘリンボーンにしています。 ツイル目がかなり鋭角に見えるのが特徴であり、コシが強くてボリューム感もでます。 それをヘリンボーン織りにしたこの生地は、 杢糸使いもありカントリーテイストなオーバーコートにも向きますね。 あらっ、正にこれからの紅葉を彷彿させてくれる様な 多色使いによる糸で織られた生地ですね。 これは同社での カバートクロス でしょう。 ダークグレーと2色展開です。 100% WOOL 510g 右下に少し見えますが、最後にはヘビーなキャバルリーツイルが 結構な色バリエーションでラインナップされています。(630g) どうですか。お腹一杯になってきましたでしょうか! 次が最後のシリーズです。 ESCORIALで織られた特別な生地、ESCUDO というシリーズです。 エスコリアルさんは現在 オスとラリアとニュージーランドで 確りと管理され、少しずつ増やされています。 王家の羊とも言われる希少価値性高きそのウールは、 当店BLOGでも沢山登場してもらっていますね。 http://dittos.seesaa.net/article/500794032.html 【 ESCORIAL:SUITING 】 見開きでスーチング、ジャケッティング、フランネル、 そしてコーティングとして区分け展開されています。 おっと、このクラシックなモノトーンによるバーリーコーン柄は 随分とお世話になっております。 (店頭出物在庫:ラスト 1着分あり) http://dittos.seesaa.net/article/481995724.html 【 ESCORIAL:JACKETING 】 N様の上品な ODD 3P、 そして記憶に新しい T様のベルテッドスポーツコート(ジャケット)です。 美しき上品な顔立ち、グレーは何色にも調和してくれ 幅広いコーデを楽しませてくれます。 エスコリアルの独特であり特徴でもあるナチュラルな ストレッチ性は動きやすさにも直結します。 ウーステッドフランネルのスーチング、これも出物仕入れがあり 最近ご紹介したばかりですね。 出物は単発ですが、結構なラインナップが揃います。 こちらはシットリとしつつも密に縮絨されたコーティングであり 480g 御座います。 グレージュも素敵ですね! 以前には S様にダブルのオーバーコートをお仕立て頂きました。 こちらは 2016年のお仕立て上がりですから、早くも8年選手ですね。 今は素敵なエイジングで掛け替えなき魅力を放っている事でしょう。 ・・・・・以上で御座います。 最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。 オーバーコートには男のロマンがあるのです。 必ず寒き冬はやって来ます、その時に楽しめる冬服も 是非ご用意頂けましたら幸いです。 食に四季折々 旬な食材がある様に、衣でも旬を味わって頂きたい。 それがTAILORとして私からの願いでもあります。 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
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【 P&B:M様のご注文 】
2024.10.15
お客様のご注文
随分と秋らしくなり、朝晩はかなり涼しくなりました。 陽が出れば秋晴れの清々しささえ感じられます、 が、まだ気温は高めですね。 やっとスーツが気持ち良く着られるようになりつつあります。 暑さを感じずにスーツを着られる事がとても嬉しく感じます。 とは言え、気温25度レベルではヘビーなリネンのスーツが丁度良い位でもあり 毎年残暑が長引くようになると共に 日本に最適なリネンの着用期間は伸びつつあるとうものです。 1957 HERBERT JOHNSON (ハーバートジョンソン) 1889年創業の超老舗帽子店はロイヤルファッションにも欠かせぬ存在です。 数々のロイヤルワラントだけではなく、英国軍や景観などの制服用の帽子も手掛けています。 ダブルブレストのスーツを着込んだ紳士はロイヤルアスコットへの準備でしょうか。 この紳士ように、バッチリと決めてお買い物に出掛けたくもなりますね。 さて、今週はヴィンテージスーツの様なヘビーウエイトの生地でご注文を下さった M様のご注文を紹介させて頂きます。 HARRISONS UNIVERSAL CHARCOALGRAY HERRINGBONE 100% WOOL 465g 旧 Pedersen & Becker Universal 通称 P&B のシリーズとして展開を続けていたヘビーウエイトまで揃う 超クラシックなスーチングのシリーズであり、以前はそのP&Bを傘下に収めた LEAR,BROWN & DUNSFORD よりの展開でした。 http://dittos.seesaa.net/article/491416929.html 【 HERITAGE SUITING 】 素朴で飾り気など一切無し、ハリ・コシに富み 古き良き英国服地の生き残り⁉ の体を成し、 こういった生地でこそ『 誂え服は子の代まで 』と言えます。 「そんな生地でこそ是非BESPOKEで」 M様のイメージは固まっておりました。 男気に溢れたこの生地から見れば、シットリとした生地や高番手の生地などは 女々しくさえ感じてしまうのかも知れませんね。 このウエイトは軽量級なコート地クラスでもありますが、 P&Bには更に地厚の生地さえ御座います。 打ち込み強きこのレベルの生地は皴にも強く、復元力も高く、 メンテさえ必要最小限で賄えます。 M様より、ベーシックでクラシックな三つ揃いをご注文頂きました。 先週の顧客様に同じく、M様も当店とのご縁は H.S ORDER より始まりました。 当店での初となる BESPOKE SUITS です。 1st仮縫いを経て、2nd仮縫いよりご覧いただきましょう。 M様は背が高くてスリム、モデルのように足も長く スタイルが良くてスーツも大変お似合いで御座います。 IN-2 PLEATS でFOBポケット付き、ゆったりとしたシルエットに 深き股上が一層足を長く見せています。 後はハイバック仕様にされております。 お尻も立体的で引き締まり 格好良くて羨ましいです。 ウエストコートもベーシックなシングルブレスト:6B-5掛けです。 撫で肩傾向はM様の個性、首周りのフィット感も良く、 トラウザースとの連動性もバッチリですね。 上着は本返りのノッチドラペル 3釦、そぎ落とされた 美しきベーシックなクラシックスタイルです。 この生地と御依頼のスタイルを反映させたスーツを纏えば、 英国的でエレガントな匂いが漂ってくるようです。 ストンと落ちたフロントカットは、スーツの先祖が軍服でもある証であり 昨今の国内市場ではほぼ見る事の出来ぬカットでしょう。 同じく軍服ライクで色気のあるウエストシェイプがそそりますが、 男性的ならではの色気(魅力)と美しさを感じさせてくれます。 鍛えられ 引き締まったお身体のM様にとてもお似合いで御座います。 では、微調整を加え FINISHへと駒を進めます。 いよいよお仕立て上がりです。 チャコールグレーのヘリンボーン、私も大好きですが 改めてエレガントな空気を纏っていますね。 コードストライプのモーニングドレストラウザースを誂え足せば 即BLACK LOUNGE STYLE にもなります。 生地の色味はダークグレー位に見えますが、 実物はもっと濃くて深きチャコールグレーとなります。 ヘリンボーンならではのシャドーストライプ的な縦縞織柄が M様のシャープさを一層際立てます。 この日はホールカットですね! シンプルの極地な靴もM様のお好みが伺えるようです。 (ご来店当日の装いに合わされたものです。) トラウザースの裾丈も別妙なバランスでご判断いただき、 此度のシルエット(裾幅)には抜群なレングスですね。 しかしウエストが細くて本当に羨ましい。 ドロップ寸法(B 引く W 数値の半分)が大きければ逆三角形で格好良いのですが、 逆にスタイルが良すぎて既製服範疇ではM様の御体型にシックリとくる サイズの服は先ず用意されていません。 大手テーラードメーカーであれば、同サイズ内でドロップ別、 そして丈バランスもS/R/Lなど幅広きサイズ展開もあり得るのですが、、、 揃えれば揃える程に在庫リスクとなりますので多くのお店では難しいのです。 だからこそ、昨今のアパレルメーカーは簡易だとしても受注生産となる オーダーの対応を展開する事により在庫リスク軽減も担う為 ここまで広がったとも言える訳です。 ただ、オーダーでも簡易で安価であれば補える体型補正範囲も頗る狭く やはりTAILORでなければ本当の意味での MY SIZE には辿り着けません。 吊る事を前提としたハイライズ(高い股上)のトラウザースのウエスト位置に 合わせてウエストコートの丈が設定されますので、 自ずとウエスト丈なウエストコートとなる訳でもあり、 各アイテム同士の調和をとる事が必須となります。 分かりやすいですよね、三つ揃いでは 全てのアイテムが連動し、 調和するよう設計されていなければなりませんし、 正に ONLY ONE ならではとなります。 この中下に伴うウエスト位置は上着にも当然連動しているので 三つ揃いでの美しきハーモニーを奏でる事が出来ますし、 それを生み出すのがTAILORの仕事でもあります。 M様、とてもエレガントで素敵で御座います。 大変お喜び頂きまして安心致しました! 長らくお待たせする分、この日を楽しみにお待ち下さっておられた事と思います。 しかし このスーツのデビューまではもう一段 寒くなってほしいですね。 古き英国の良心たるこのハードな生地を馴染ませる為にも是非沢山着て下さい。 ローテーションなんてあまり気にせずとも、 この生地のタフさがあれば余裕耐えられます(笑)。 お次のご注文も検討中との事で光栄な限りです、 いつでもご相談をお待ちしております。 M様、改めて素敵なご注文を誠に有難う御座いました。 ・・・・・如何でしたでしょうか。 HOUSE STYLE ORDER と BESPOKE は そもそもステージが違うので比べてはなりません。 それぞれのメリットがあり、デメリットがありますので それらは皆様の価値観によりご選択されれば良い事で御座います。 先週のF様、今週のM様、お二人共に H.S ORDER からのステージアップでした。 双方着れば様々な違い、気付きがある事でしょう。 着ていて気持ちが良く、気分も高揚してしまうような誂え服を 是非ご堪能頂けましたら幸いです。 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
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