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技術について

Bespoke Tailor Dittos.
  • 【 TAILORING-2 】

    2025.10.28 Bespoke Tailor Dittos. 技術について

    【 TAILORING-2 】

              ロンドンにあったテーラー&カッター社は1866年から1970年代初頭まで 100年以上に渡り沢山の書籍を発行しつつアカデミーも運営し 業界の発展に大きく貢献して参りました。   この製図は紳士服が一番エレガントであったと言われる時代の製図であり、 端正で美しきそのあるべきクラシックなバランスは永遠の財産です。   日本の現代的な製図とはかなり違いますが、 体型も違えば価値観も随分と違います。   型紙は2次元ですから 生地を裁断して3次元の立体にすべく、 様々なテーラーリング(縫製・仕立て)術を巧みに用い紳士服へと仕立て上げます。                   網目のかかった左側のパーツ、これが前身頃を内側から支える『芯地』です。 軍服をルーツに持つスーツの類は、男らしい構築された肩、 そして立体的な胸部やエレガントなシェイプから構成され、 芯地などは大きく貢献し その凛々しき姿はテーラードたる真骨頂でもあります。   型紙は主体として表地の裁断用であり、その型紙には 沢山の様々な体型的情報が内蔵されている訳です。 芯地の裁断(裁ち合わせ)はそれをベースに抜き取ります。 一般的には先に裁断された前身頃の生地に重ね、 その情報を転写するといった具合ですね。       此度のクライアント様は どの位のボリュームがどこに必要なのか、 ラペルの返りについては、、、そもそも芯地としての強弱は、、、 芯地の構成、組み合わせは果てしなく、 芯地のカッティング自体も価値観により多岐に渡ります。   英国の、そして古いテーラードであればある程 芯地の役割と共に 担うポジションも広く、単にフォルムの形成や支えだけでなく、 補うという要素さえ多分にありました。   芯地とは多少ズレますが例えば昔の紳士たち、一つの例を挙げれば 女性がバストにパットを入れる事がある様に、男性も臀部やふくらはぎ等に 増しパットなどが施されていた時代があります。         ベースとなる芯地に対し、胸増、肩増 など増芯を重ね、 ハ刺しを使ってそれぞれの芯地を一つにマッチングさせます。 このイラストでは最終的にフエルト(ハ刺しされているパート)を足し、 蓋をするように構成されております。   分かり辛いと思いますので一応イラストをご説明すると、 右側のイラストは右前身頃、左側の網目イラストは左側用の芯地単体、 真ん中のイラストが右前身頃(右のイラスト)のひっくり返された裏側(内側)となります。 右のイラストでは腰ポケットのフラップが見えますね、 ひっくり返すと その腰ポケットの袋地、 そして脇ダーツの縫割りされた縫代が見受けられます。         カッティング(製図・型紙作り)や芯の作りなどは どんな服を仕立てたいのかにより手法が違いますので、 それぞれテーラーの(カッターの)思惑、 もしくはクライアント様のご要望により最適解を導き出します。     今週は久しぶりに仕立て術の続きをご紹介したいと思います。 真剣に集中して作業している最中、気付いた都度にしか写真を撮っていないので 結構分かり辛いと思いますが どうかお付き合い頂ければと思います!                 これは出来上がった芯地であり、この上に前身頃を乗せ 躾糸で据えて参ります。 前身頃は 肩から裾に至るまで、ラペルの端から脇下までホールドされます。   ベースとなる芯地、これは毛と綿の混紡芯地です。(Body canvas) 勿論種類は沢山御座いますが、ベースとなる芯地選びは 私の価値観により選んでいるものをレギュラーとし、 あとはクライアント様のご要望次第で変える場合が有り得るといった具合です。   向かって左側が前端側であり、切り躾がみえますが ラペルの返り線です。 薄いグレーのテープが見えますが、それぞれにそれぞれの分量を切り開いたダーツがあり、 切り抜き突合せにしてテープで止めます。 これらのダーツにより欲しい位置へ欲しい量のボリュームを生み出します。   この意図するボリュームを内側から支え、維持させるのが胸増芯となります。   膨らみにはポツポツと見えるのが貫通しているハ刺しの糸であり、 アームホール側の肩部のみハ刺しされていないのでポツポツしていませんね。 この肩の部分は骨格に伴い前肩(個人差あり)にする処置を施すのですが、 この部分だけは後ほど行います。                   胸増芯は『バス芯』と呼ばれ、昔ながらに馬の尻尾を使った芯地です。 とても弾力が強く、ハリコシに富んだ高級な芯地です。(Chest canvas) この弾力が程好くボリュームを内側から押し支え、 立体的な胸のボリューム形成に繋がります。 コスト面含め、この本バス芯を使用していない所もありますし、 そもそも毛芯の代わり含め今ではポリエステルなどで代用する芯地もあるくらいです。 皆様におかれましてはやっぱり昔ながらに天然繊維の芯地が良いですよね! どんな芯地が使われ、どんな作り方をされた服なのか、、、 分解してみないと分かりませんので幾らでも、、、、 お分かりですね、お安い服にはそれなりの理由も必ずあります。     これはベースとなる裁ち合わせされた芯地から更に胸増芯を抜きました。 これからベース芯で発生させたボリュームを こちらでも合わせて発生させる必要があります。   出来芯(既製服含め既にアバウトなサイズで出来上がっている芯地)や 多くのテーラーでは このバス芯にさえ表側のベース芯と同様に 鋏を入れダーツによりボリュームを出させています。 しかし それはナンセンスです!     折角の高級な弾力のあるヘアー(馬の尻尾:緯糸に使われています。)に 鋏を入れてしまうと 願わぬとても大きな副作用が出ます。 では どうやってベース芯に伴うボリュームをダーツ無しで発生させるのか、 それはアイロンによる『クセ取り』です。   右側は裁ち合わせたばかりで素の状態であり、フラットですね。 左はクセ取りを行ったバス芯であり、 グワっと大きなボリュームが出ているのが分かりますね! このクセ取りという行為で成形できなければダーツで処理するしかない という事になりますので大量生産が前提の縫製工場で作られる 出来合いの芯地は全て基本ダーツ処理です。   これをベース芯に据え、ハ刺しで留め付けるのです。 これが胸増芯ですから肩増芯含め重ね合わせ、 部分的強弱を付けながら芯地を組み上げて参ります。                 カタカナの『ハ』の字に見えるのでハ刺しと呼ばれます。 一針一針ボリュームをKEEPさせ、 『この場にいろよ!』とメモリーさせているのがハ刺しです。 少し波打って見えるのは意図的であり、縦方向にユトリを強制的に入れ込みます。   接着する事なく、それぞれの芯地の個性を活かす為にフラシで仕立てられます。 ハ刺しのハの字に伴う大きさやピッチにも意味・意図があり、大き過ぎては勿論ダメ、 細か過ぎても時間が掛かり過ぎであると共に硬さも増してしまいます。 何事も程好く、意図するファジーさがこの位であると私の価値観です。   使われる糸はシルクの手縫い糸、細過ぎず太過ぎない程度です。 若い頃に習った時は綿糸(カタン糸)であり、コストも関係しているでしょう。 (因みに、カタン糸は「コットン」がなまってカタンと呼ばれるようになったとか!)   絹糸はその分高額ですが、芯地と同じ動物繊維である事、 綿糸より滑りと馴染みが良く絡み辛い事などがメリットとなります。 (カタン糸は水通ししてから使っていたので、それはもう絡まりやすかった!)   糸色はですね、、、これ、たまたまの水色なのですね。 全く透けない表地・裏地であれば 使用頻度の低い色を 優先消化する為に使っているので色は色々です(笑)。 もし透ける可能性があれば芯地に色合わせですね。   ハ刺しの糸を良く見て下さい、緩く遊び(たわみ)が見えるでしょうか。 これも意図的であり、狙ってこの緩さなのです。                   ハ刺しを終え、組み合わされた芯地として完成です。 私はフエルトを基本的に増しません、フエルトの役割・意図を欲しないからです。 むしろ無い方へメリットを見出しています。 ただし、必要なケースやリクエストがあれば別ですよ。       次の工程は『芯据え』となりますが、その前に芯地、表地それぞれに クセ取りと共に馴染ませるプレスを確りと行い、寝かせます。   織物は生地でも芯地でも 基本的には撚糸により構成されています。 撚糸は熱で一時的にキュっと強く撚りが強くなりますし 動物性繊維は特に動きます。 冷めると元に戻りますので、戻る前に次の工程へ進んではなりません! 寝かしている間は他の作業を進めますよ。     良く寝かせたら『芯据え』というとても重要な工程です。 芯据えとは 表地と芯地を躾糸によりポジション同士を適合させ、 ボリュームを馴染ませ合体させる工程です。 かなり重要なパートであり、ここでも腕の差が出るでしょう。 仕立て上がった服へ多分に影響を及ぼし、 この工程が上手くなければ仕立服のレベルは上がりません。             本気で集中して芯据えを行い、次はポケットを芯地に綴じます。   ここまで芯地と合致すれば 次はいよいよ極薄な部分増芯を噛ませラペルのハ刺しです。 この工程は分かりやすく、かつ有名でもあり目にされた方々も多い事でしょう。   ラペル=下衿 は内側が表側に反り返っている状態で成り立ちます。 ですから綺麗なロールを描き、重なりあった生地たち (表地、芯地、増芯など)を捲ると『内回り・外回り』の作用により フラット時とはズレが生じます。   例えば折り紙を半分に畳み、更に半分、更に半分、、、 角を合わせて綺麗に折れませんね。 それは折り紙の厚みも作用し内側と外側で距離差が発生しています。   ハ刺しというのはメモリーであると言いました。 「ここに、こんな感じでいるんだよ!」という形状を手で作り出し、縫い留めるのですね。 ラペルで言えば捲ってロールを作り、その発生した距離差を そのままKEEPさせておくという事になります。   同じ事を肩パッドでも行いますが、 肩パットの作り出す立体度合いはもっと複雑です!   技術論は説明が難しく、、、文字ばかり増えますね(汗)‼                         刺せましたね! ラペルの角だけ 更に細かなハの字、かつ方向性を変えてあります。 角のその部分だけ更に絞り出すように刺します。 より強く内側に反り返るよう巻き込まれているのが分かるでしょうか!     糸は芯作りで使った糸より更に細い絹糸を使用します。 細い糸でハの字も芯地より細かいですね、そして糸のタワミほぼも無し! ハ刺しは色々な個所で多分に採用されますが、 それぞれのパートでアプローチが違います。 各箇所での役割、担う目的が違いますから 見合う糸やピッチ、 緩さなども違っていて当然なのです。                         ラペルのハ刺しの糸色は必ず生地に合わせます。   ハ刺しは掬い縫いでもあり、その時使われる表生地の厚さ、この厚さの半分を掬う訳ですが、 生地が春夏地の様に薄くなればなるほど 当然難しくなります。 そう、芯地でのハ刺しと違い ラペルは裏側に糸が貫通して走っている様ではダメなのです。   故にポチポチとくぼみの様に見える感じとなりますよ。 修業時代は糸が出まくりでしたが練習・経験あるのみです! 段々と指が感覚を覚えますし、針を刺す向こう側(裏側)には 部位を摘まんでいる指を置いていますからその裏指に刺さったら貫通ですね、 そこから引いて針を戻す感じです。   なので慣れない時は指の腹がとても荒れて、、、懐かしい話です。     このラペルへのハ刺しが終われば意図的に付けた折角のロールをガッツリと 本気で潰し込むようフラットにプレスを掛けます。   まっ平らでぺったんこ、平たい板みたいになります。 矛盾した行為の様ですが、 植え付けたハ刺しによる「メモリー」は決して無くなる事はありません。 程好く馴染んで芯地と表地が正に一体化し、一つの下衿として確立されます。                   次は端打ちテープ(伸び止め)です。 正確なラペル、そしてフロントの線を引いてキャラコ(縦地の綿サラシ)を付けます。 サラシを湯通ししてプレス、割いて正確な縦地の目でテープ状へと二分割にします。   ですがこの端打ちテープは既製テープもあり、麻のテープなどもあります。 出来上り線に対して据え、部分的に引っ張りめであったりと そこら中に『手加減』が操作として内蔵されています。   カラゲ縫いにより丁寧に表地と、そして芯地へとカラゲて参ります。 このテープは伸び止めでもあり力芯でもあります。 ゴージラインからラペル、フロント、 裾へと芯地の有る所(もしくはもう少し延長)まで!                       ・・・・・ふぅ~、この度はここまでとさせて頂きます。 見えない所で どれだけの考慮や手作りによる時間が掛かっているのかが 垣間見る事が出来ましたら頑張って書いている甲斐が御座います。   一つ一つの小さな技術には 狙った意図があります。 その技術を用いつつ、更に微妙な手加減が内蔵されているのです。   技術(手法)は一つではなく、多岐に渡りますが、 それぞれにメリット・デメリットが存在します。   全てを理解した上で、この生地ならば、このスタイルならば、 このリクエストだからとチョイスされるのです。 故に技術の懐は広ければ広い方が良く、様々な技術に興味を持つ事が大切です。   服作りとして100点を目指しますが手作りではほぼ有り得ません、 だから楽しく、そして難しく遣り甲斐があるのです。 どの道でも職人は同じですよね!     ではまた続きを書きますので、その時まで、、、、、 最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。                   ・・・・・恐縮ながら来週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。   次回は 11月11日(火)を予定しております。 2025年も2か月を切っているではないですか、、、!   どうか引き続き宜しくお願い申し上げます。                  

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  • 【 TAILORING-1 】

    2025.07.01 Bespoke Tailor Dittos. 技術について

    【 TAILORING-1 】

            皆様 こんにちは。 今日から7月、関東も異例の速さで梅雨明けが発表されそうですね。   これからピークを迎えつつある夏の暑き中、 時間のかかる BESPOKE は秋冬のご注文も頂いております。 また、H.S ORDERの方は今月末より 『早期受注キャンペーン』も開催されます。 最後に改めてご紹介させて頂きますので御確認頂けましたら幸いです。                   さて、随分と長くBLOGも続けて参りました。 これも一重にご覧下さる多くの皆様方のお陰により、応援により継続してこられました。 以前は技術的な事柄もボチボチ書いておりましたが 気付けば10年前とか、、、。 重複するところは多分にあるでしょうが、改めて大きな写真と共に そろそろアップデートさせて頂ければと思います。   仕事の手を止め、ご丁寧にわざわざ写真を撮る行為は滅茶苦茶にロスタイムでもあり、 真剣に集中していれば撮影し忘れて随分と工程が進んでいたりも!   意識して納めた限られた写真より、部分的な工程にはなりますが 改めてご紹介させて頂きたいと思います。       掛け替えなき手作りの洋服、どれだけ長い時間を掛け、 手の込んだ工程と共に技術を駆使して仕立て上げるのか、、、 BESPOKE TAILOREDがどうしても高額になってしまう理由も 垣間見る事が出来ましたら何よりの幸いで御座います。                 ONLY ONEとなる顧客様の型紙を丹精込めて引いております。 その型紙には本当に沢山の情報が含まれており、サイズからデザイン、 ユトリの加減など 誂えるその洋服の設計図となる訳です。     そんな設計図である型紙の重要性ですが、どんなに卓越した職人が手間暇をかけ 高度なテーラーリングで仕立てたとしても 型紙が悪ければ無用の長物となってしまいます。 ご注文を重ねられ、熟成した型紙は TAILORと ご注文主様の財産でもあります。 靴で言えば木型ですね。         打合せ(Be Spoken=BESPOKE)を入念に行ったにしても 1stオーダーではどうしても 私のご提案的な要素が多分に含まれますし、 ご注文主様も着てみなければ分からぬ事は多々御座います。 そういう意味でも仮縫いの恩恵はお互いにとって大変重要でありつつも、 裏地もつかぬ仮組みは滑らず動き辛いので ご注文主様にとっては慣れぬと分かり辛い事と思います。   お仕立て上がって納品された洋服は一回や二回の御着用で判断しようとはせず、 もっともっと着て その服と沢山対話をして下さい。 服が馴染む頃、持たせたポテンシャルは解放され、与えられたユトリ感などは 好みや生活(動き)によりリクエストも出る事でしょう。 そしてご注文主様の『着慣れ』も大切な要素です。   次の御機会を頂戴できるのであれば、1stオーダーからの意見や感想、お好み踏まえ よりご満足度の高い設計図となるよう活かし、引き直します。   TAILORとの付き合いは ご自身様の型紙を『育てる』という側面もあるのですね。   最初は特に拘りなど無ければ 私へお任せの丸投げでも全然良いのです! むしろ光栄です! 素敵なレストランがあれば、旬を活かしたシェフお勧めの料理、、、 食べてみたいですよね。   ですが、着てみれば絶対に意見や感想は出てくるでしょうし、 全くなければ勿論それも良しです。     では そんな時間を掛けて練り上げられた型紙を使って裁断し、 以降の工程(TAILORING)よりご覧下さい。               前後の身頃は左右2パーツに分けられ、袖は両腕ありますね。 生地の幅は織機の企画次第、大抵は150㎝幅であり 端と端(ミミ)を合わせて二重に (内に表側がくるように)畳んで左右パーツを効率よくいっぺんに裁断します。   生地に型紙をおき(マーキング)、チョークで線を引いた後に裁断する訳ですが その重要な『チョーク線』は片面にしか引かれません。 当然ながら重ねられた下側となる生地には線が無いので その線(情報)を写す必要があります。   その役目を担うのが 『 切躾 』 です。 躾糸(綿で素朴な太く荒く安価な糸)は白毛(毛ではないのですが)と呼ばれます。 その白毛でチョーク線を地味に縫って参ります。   掬って、掬って、掬って、、、渡った糸は鋏で切りながら!   そして、多くの方々は左右非対称もあり そんな箇所は 間違えぬよう左右で糸色を変えています。               必要な線に全て印となる躾を打ち終えましたら 今度は二重になっている左右のパーツを分離です! 生地をペラっと捲ると縫われている躾糸が顔を出します。 更に引っ張る事で躾糸の「脚」を作り、その脚を鋏で分断します。   慎重に、、、、ここで糸脚を切ったつもりが チョキンと生地を切ってしまう事がありますので要注意!                     重ねてある生地を躾糸で縫い、捲って糸脚をカットして少しずつ慎重に。 全てカット出来ましたら分断は完了です。   上側に残った糸は草が生えているように見えますね⁉ その草(躾糸)を刈り落とします!                   線に躾を打ち、切って糸の印を作り出す(写す)。 この行為を 切り躾 と言います。   これで重ねてあった下側の生地にも必要線が写った事になり、 更に生地の表側にも糸印(切り躾)が出る事になります。 これで表裏どちらから見ても正確で左右対称な線の情報が共有できました。   イギリスでもイタリアでも この様に切り躾を利用しますが、 イタリアのサルトはもっとビロビロに糸脚を敢えて残していますね。 刈り取ろうが残していようが目的・意図は同じであり、 双方にメリット・デメリットがあるだけです。                   お次はダーツ処理です。 型紙を見ると この裁断では『腹癖』がありますので、先ずはそこから! 下方に腰ポケットのフラップ型(横長四角形)が見えますね。 左上に胸ダーツ、右は脇ダーツ、腹癖(ダーツ)は フラップの頭上 青矢印の三角形となります。   このダーツは丁度 腰ポケット作りで切り込みを入れる箇所を利用して取られます。   腹癖は本来であれば腹部の出ている方や反り腰体型に 有効であり、必要なダーツでもあります。 腹部が出ていれば前裾は跳ねがちになりますのでケマワシ(底辺距離)を摘まんで 跳ねを抑え腹部を包み込むという目的と効果がありますが、 同時にそれは結果的に前裾を後脇へと吊り上げる効果もありますので、 むしろ後者の恩恵が欲しいがゆえに普通体型でも分量を少しにして採用されたりしています。 主に2面裁断より 3面の細腹を入れた裁断に多いですね、3面は処理も楽です。   こんな所にダーツがあるので、赤矢印のカマ底、 そしてウエスト位置でも「ズレ」が生じていますね! 腹癖が処理されると これら赤矢印のズレは解消される事になります。             腹癖となるその三角面を切り取ってしまいます。 切り取られた辺と辺をくっ付けると意図するダーツ効果が生まれる訳です。   この辺同士をくっ付ける際に 簡易な接着芯などで貼り合わせてしまったら 腰ポケットが硬くなってしまいます。 そもそも良いテーラーリングであればある程に接着芯は使用しません。   故に糸でからげますよ! ヘリンボーン柄ですから勿論柄も合わせて、、、。                         これで辺と辺が綺麗に突合せで繋がりましたね。 クセ取りも行うので この口が空いていると まともにクセ取りすら出来ません。 (この糸は後に切られます。玉縁幅よりはみ出なければ 残しておいても支障はありませんが毛抜きで抜いています。)   これで胸ダーツ、脇ダーツ、そして顎ダーツの処理へと進行しますが 勿論全てを同時進行でも構いません。 今回は解説もしやすく順繰りと!                   先の型紙写真での 赤い矢印のズレが解消されていますね! これで腹癖は無かった事になりましたが、その持たせたポテンシャルは 確りと生きていますので 服になった時に違いが出るのですね。                 チャコールグレーの生地が なんだかネイビー調に⁉   これで全てのダーツ処理が終わりました。 平面であった生地はダーツ、そしてクセ取りによりかなり立体的になります。 むしろ平らにはなりませんし、平らにしてしまったらダメですよ。   次はいよいよポケット作りです。                   2面2ダーツ裁断の上着、ダーツにより腰ポケット線が歪みます。 歪んでもクセ取りにより強制的に戻してポケットを作ります。   早くも両玉縁が出来ましたよ!                 予めテクニックを駆使して作られたフラップ、 ポケット口径よりほんのり大きめに作るのがミソです! フラップの出来上り幅に合わせて糸で印、この糸でグシ縫い(縫った糸を絞り込む)効果も担わせ、 確りと口径に合わせつつ絞り フラップ自体も立体に!   腰ポケットはポジション的に腰骨をホールドする位置にありますので とても強いRを描く必要があります。 故にポケット自体も立体に作られているのは必然でもあるのです。     例えば安価なスーツを仕立てる縫製工場で作られる腰ポケットはマシーンで作られます。 ダーツで立体になり過ぎると平面で直線に作られるマシーンでは作れなく(利用できなく) なりますのでダーツの効力は必然的に弱めに設定されています。 (それ以外にも理由があります。)   ポケット部や口布には接着芯が張られ、マシーンで自動に作られるポケットは 正にフラット、接着芯によって硬いしとても立体的とは言えませんが、瞬で出来るのです。 だからこそ大量生産ができ 安価で提供出来るのです。 玉縁でさえ縫割りされず片倒し、、、知ってしまえば全くの別物くらいに違います。 (当店H.S ORDERの両玉縁は勿論 縫割り始末でお願いしていますよ。)     この両玉縁を形成するパーツを口布と呼びますが、この口布地の目の取り方でも 縦地や横地、バイアスでとるお店もあり様々です。 これらは見え方も随分と印象が変わりますが、私は通常縦地、柄が強ければ横地でとっており バイアスだけは基本的に採用しません。 これらにもメリット・デメリットがあり、何を優先し尊重するのかより それら手法をチョイスするという事です。   技術には意図や意味が必ずあり、それらを理解せず 「昔から、、、周りが、あそこが、、、」というのが一番説得力ありませんね。       マニアック過ぎる内容でしたが、もっと詳しく書き続ければ あと3~4ページくらい必要です(笑)。 そこにあって当然なポケットの作り方でも相当な違いがあるという事で御座います!       さぁ、差し込んで躾留め!           ・・・・・・今回はここでお終いです‼ かなり中途半端ですが、、、、段々と撮影が減り、急激に工程が進行してしまっているので 急な区切りにもご勘弁くださいませ。   次回は芯地、そして芯据え、ハ刺しあたりになるでしょうか。 そのうち続きを書きますので、ご期待せずにお待ち下さいませ。     ハンドメイドが前提となるBESPOKEのステージでも、お 店が違えば拘りや工程数、仕立てに関する価値観からお値段まで様々です。   また、これ(BESPOKE TAILORING)があるべき姿なので 大量生産を前提に安価で提供しようとすれば、どこを どれだけ省き、 簡略化しつつ、機械化できるのかが要となります。 良いモノ作りをしようとすればする程に原点回帰していかなければならない という事になりますね、当店のH.S ORDERにも言える事です。   全てのジャンルに言えますが、良いお店ばかりではありませんし、 そのお値段に対し品質が伴っているのかどうかなど 消費者の私達もある程度は 学びがあると理想的なのかも知れません。       一つ とても強くお伝えしたい事があります。 多くの既製品や大量生産されるモノ作りは基本的には新品時が最高到達点です。   職人の手で作り出されたモノ作り、長持ちもしますし新品時が最高ではないのです。 そこから育ち 更に最高到達点を上げ続けます。 長持ちを前提にしているので修理にも考慮された作り方含めポテンシャルを持たせてあります。   価値観の違いはありますが、費用対効果的に見ると BESPOKEは決して高額ではないと思います。 そう思っていなければ こんなお値付けは出来ません。 物の価値、説得力や納得度、そして自己満足度の高さは 往々にして金額に無関係ではないと思います。   ご注文主様より頂戴するお代金より、ほんの少しだとしても ご満足度が上回る事が出来るよう日々精進すると共に、 丹精を込めてお仕立てさせて頂きますので どうか引き続き 宜しくお願い申し上げます。                   ・・・・・HOUSE STYLE ORDER限定による 『早期受注キャンペーン』 に付きまして。   7月23日(水)~8月22日(金) 約一か月間に渡り開催させて頂きます。   工場さんが工期を通常より少し長めに頂く分、 ささやかながらお値引きをさせて頂くという企画となります。   内容は秋冬物でも春夏物でも構いません。 スーツやジャケット、コートが対象となります。   期間前でも「キャンペーン希望」と仰って頂ければご対応させて頂きます。 日程に合わせて工場さんに投入致します!     どうかこの御機会を有効利用して頂けましたら幸いで御座います。 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。                                  

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