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【 TAILORING-3 】
2026.04.21
技術について

Sir Winston Churchill 見事なまでに堂に入った着こなしは流石としか言いようがありません。 なんて普通で自然な佇まい、なんてエレガントなのでしょう、、、。 恰幅の良さ(体形)も個性でもあり、 御自身をよく理解し、許容し、素直である事。 TAILORはただその個性に寄り添い、 ご注文主様がより引き立つような額をお仕立て致します。 お年を召されれば体型変化は当たり前の事であり、 理想を求めれば相応の努力も必要です。 そんな理想的体系から外れてしまえば 現代の既製服では対応できる訳がありません。 お身体のサイズに合ったクラシックで適正なカット(型紙)、 それを高次元で立体的に仕立てる技術、誂えでの当たり前な事だけで ここまで魅力的で格好良く魅せてくれるのです。 当時は今よりも誂えが当たり前であったからこそ、どんな体型の方でも 適正なサイズで美しくエレガントにスーツを着こなされておりました。 ダークトーンなので分かり辛いですが、トラウザースはストライプを合わされております。 https://dittos.seesaa.net/article/513613975.html 【 BLACK LOUNGE SUITS ③ 】 そんな注文服を仕立てる TAILOR が使用する道具類ですね。 イラストは随分と古い時代ですが、Gooseとありますね、ガチョウかい⁉ ガチョウの首の形状より Goose Iron と呼ばれていた時代だそうです。 アイロンと言えば今や電気が当たり前、 その前はガスホースを直接繋げて使うガスアイロンでした。 電気はサーモスタットが付いて温度管理をしてくれますが、 ガスは栓を絞るしかなく とろ火にしていると 気付けば消えてガス臭くなったものです。(着火はマッチ!) 鉄の塊であるガスアイロンの構造は本当にシンプルで 電気の様にまず壊れる事はありませんでした。 温度が上がり続けるので常に下げながら使うのですが 油断すれば焦がしてしまったものです、、、 もう軽く30年以上前の話になります。 とても懐かしいですが、案外職歴長いな! と今 自分で思いました(笑)。 この時代は更に遡り、取っ手の付く天井がカパッと開く蓋になっていて、 中に炭を入れて熱していました。 アイロンの進化を見ただけでも凄いですよね、その点 鋏は大きな進化が無く それだけ究極に完成されたデザインなのですね。 さて、続きを書こうと思いつつも、気付けば早くも半年が経過していました。 今週は TAILORING の続編を書かせて頂きたいと思います。 かなり途中からとなりますので、 下記前編よりお読み頂くと 工程の流れも分かりやすいと思います。 https://dittos.seesaa.net/article/518725887.html 【 TAILORING-2 】 芯据えの後、ラペルハ刺し、端打ちテープカラゲまで進行していましたね。 次は身返しを地縫いして返し、身返し据えから見て参りましょう。 ( 据える=物を動かさないように配置・固定する ) 気付いて撮影した写真があるだけ、、、とはなりますが、御了承願います! 写真はもう地縫い返しして据えまで終わってしまっていますね、、、(汗)。 ここまで来ると上着の顔が見えて参りますので気分もかなり盛り上がるのですよ! ラペル(下衿)は折り返された状態を前提に仕立てられています。 そのラペルが綺麗にロールして身体に寄り添うよう 『ハ刺し』によりクセ付けされています。 身返しはそれを覆う訳ですが、内側(身体側)から部分的に返り線で 折り返される訳ですから重要なのは『外回り量』です。 折り紙を綺麗に角と角を合わせて折り、更にもう一度、更にもう一度。 どんなに気遣っても100%ズレが生じて参ります。 これが物理的な内回り・外回りであり、車が曲がる時の内輪・外輪差に同じです。 この外回り量が不足しているとペタッと平面的で 折返す事は出来たとしても、ラペルの内側に皴が寄ります。 距離が足りていませ~ん という訴えでり、内回り側に歪が生じる訳です。 その服の生地の厚さやラペルのサイズなど含め、培われてきた経験による感覚と 手加減により その外回り量を与えながら躾で据えて参ります。 また、土台となる前身頃側のラペル(芯地)はハ刺しで強制的な内巻力が掛けられているので 焼いたイカの様に逆側へ反り返るような事は絶対にありません、させません! 躾を外し、部分プレスで綺麗に整わせた状態であり、 これからホール含め部分まとめです。 (まとめとは手縫い工程を指す業界語です。) 本来では仮縫いを行いますので そのまま全てを組み上げるのですが、 仮縫いが終われば分解し ホールなどはパーツとして小さい (型前身頃のみ状態)時の方が本来圧倒的にかがりやすいですね。 分業制のお店だと「まとめ屋さん」に託しますから ほぼ全てを組み上げきって託します。 綺麗なロール(返り)が見て取れますね、角(刻み部)はハ刺しの向きを変え 更に細かく、、、その効果が具体的にも見受けられます。 ノッチドラペルのエッジ(端の出来上り線)は緩いカーブ線を描きます。 ≪ピークドラペルはもっと強いカーブ線を使います。≫ そのエッジのカーブに合わせ、直線であるストライプや 織柄を平行に据えて地縫いされています。 ラペルから下、フロントカットから裾部(内側)ですね。 身返しのここの部分は縦方向に敢えてユトリ(イセ込み)を入れ込んでいます。 とても大切な理由があるのですね。 ユトリを入れれば皴に成りますが、その皴を綺麗に入れ込み 躾で据えたのち、 身返し幅の中心付近へ中星縫い(ダレぬよう、遊ばぬよう、ポジション維持)、 エッジ(出来上り線)から二分星縫い(尺貫法値:約7㎜/内部縫代の安定・固定)、 そして前端鼻っ面へ鼻星縫い(エッジの飾り兼浮を押え固定)が縫われています。 そんな身返しの左端、縦方向に打たれた白い糸(躾糸)は印兼用の躾であり、 ここに裏地を被せてくるラインとなります。 手縫いのまとめ工程が終われば部分プレスで馴染ませ、やっと現写真の状況となります。 フロントカットのエッジをご覧下さい。 お皿の様に反り返っていますね! 人間を円柱に例えれば、着用時には その円柱を限りなく巻き込む様なクセを生じさせるテクニックが内蔵されております。 これは仕上げプレスで程好く目立たぬ程度に馴染ませますので、 お仕立て上がり時には微かに感じるかどうか、、、 こういったポテンシャルが内蔵されて仕立てられているという事が重要なのです。 この様な行為は専門技術者であるTAILOR以外の方々は知る由さえ無いでしょう。 正に調理人が施す「隠し味、隠し包丁」的でもありますね。 ですからラペル同様 ここも逆に(外側に)反り返るような事は 決してありませんし、あってはなりません! お客様方はこんな所、気にした事すらないですよね 当たり前です(笑)。 TAILORの仕事には見えない所でどれだけの手が加えているのか、、、 それがこの先数十年に渡り型崩れする事もなく活きてくるのです。 単に手縫いが偉い訳ではありません、縫いも必要ながら据え工程や 手加減的なテクニックがそこら中で発揮されているのですね。 『 God is in the details 』 としておきましょうか! ハイ、では穴かがりです! もはや老眼鏡は欠かせなくなってしまったお年頃、、、。 シャープで均一、そして美しきバランスである事、 ホールだって重要なデザインです! そして周辺生地を決して歪ませない事、長年使用の摩擦で糸が切れる事があっても、 ボソッと身頃からバレるような事があってもなりません。 ホールはかなり性格が出ますから大抵の場合 ホールを見れば かがった方の仕事への姿勢や価値観、内容もそれなりに分かるというものです。 次は前身頃に裏地を据えて参ります。 光沢も特徴なヴィスコースの裏地です、 随分と海の様にうねうねと波立っていますね! 勿論意図的に縦横へユトリを入れています。 これ、、、とても重要なのですよ。 表地であるウールには柔軟性がり、それなりに伸びます・動けます。 しかし、裏地は伸びません・動きません、、、であれば表裏1:1では 表地のポテンシャルを使えずに裏地の面積JUSTで動きがロックされてしまいます。 そうです、型紙サイズが仮にユトリ無きJUSTサイズでの裏地と見立てれば、 表地のウールは裁断上では同じく型紙サイズでも +α を持ち合わせているのですね。 その余力に付き合える余分(これがユトリ)を裏地には加えておかなければなりません。 (こういった物理的なユトリに加え、 各縫い目ではキセという折襞でも遊びを作ります。) もう一つ、当店では予め縮絨した裏地を使用していますが ヴィスコースやキュプラなどのレーヨン系裏地って驚くほどに縮むのです! 中間工程から仕上げまで、幾度となく熱やスチームも吸う事でしょう。 可愛らしいユトリ分量などでは 縮んで完成前に使い切ってしまうかも知れませんよ。 更に納品後、お客様はクリーニングに出されるかも知れません! 本来ではクリーニング自体をお勧めしませんが、そうも参りません。 縮絨していない裏地を使用し、更にユトリを入れていない(足りない) 据えで仕立てられていたら大変な事に、、、、考えたくもないですが、 BESPOKEは何十年と着用する事を前提に考えられていなければなりません。 このユトリを入れ込んで身返しに手縫いで縫い付けて参ります! 多くのTAILORでは星縫いによる縫い付けが多いでしょう。 もし その縫い糸が切れた場合、単純な鼻まつり縫いより 星縫い(返し縫い)の方が解れにくい(広がりにくい)のです。 これを模して工場さん製ではミシンで裏地と身返しとを地縫い後、 片倒してピックミシンで縫われています。 あっ、もう背裏地据えまで来ています(笑)。 前身頃に裏地を据えたら後身頃と合体、背脇の地縫い、縫代処理。 同時進行で背中の裏地も同工程で進めます。 左右にある背脇縫い目、この縫い目に伴う縫代どうしを中で軽く、緩く、 動けるように縫い留めておきますが、これを中綴じと言います。 様々な動きに対し、表裏でそれなりに連動させておく事が目的です。 現状では表裏は互いに脇縫代でしか定まっておりませんので、 背中心から肩回り、裾周りへと躾で表地に裏地を据えて参ります。 裏地は波が凄いですよね、与え過ぎもダメですが 不足よりは正義という加減で判断します。 故に 打ち込み緩く柔らかい表地の場合は この波(ユトリ)は沢山必要となる訳です。 あっ、同じ理屈な例を思いつきました! 当店ではお勧めしませんが、最近巷では随分と意図的に ストレッチ性を持たせた生地が増えています。 天然素材のナチュラルなストレッチ性ではなく、強制的に産み付けた性能です。 当然 運動に対する追従性は高く動きやすさに直結します。 これ、、、通常のミシン糸では追従できずに必ず切れてしまうと思います。 (ある程度なら独特のテクニックで補う事も可能です。) 無意味ですね、ですから本来では縫い糸自体もストレッチ性のある専用糸 (レジロンなど)で縫わなければ整合性がとれません。 と、考える事が出来ます。 ですが、この例に関し もう少し付け加えると、 ストレッチ性は縦方向ではあまり伸びずに横方向に特化しています。 多くの縫い目は縦方向ですから そこまで大きく干渉しないかも知れませんが、 捉え方としてお話してみましたが、、、余談でした。 因みになのですが、この写真は『完成後』となる写真です。 あれだけ入れた裏地のユトリ、、、、そのまま安易にプレスすればギャザーの様に 所々折り畳まれ、折代による段差も生まれてしまいます。 仕上げのアイロン時、畳まれないように例のユトリを綺麗に入れ込むと波紋の様に、、、 小さく分散した波、風もなく穏やかな天候の日に見る湖程度に収まりますし、納めます。 これだけ縦方向のユトリを内蔵しているというポテンシャルを持ち合わせているのですね。 (横方向にも勿論ユトリは入れております。) この他に裾部、そしてダーツや脇、背中心等の縫い目を利用し「キセ」も掛けます。 キセとは折襞であり、その襞は引っ張ると広がるので 動きという 伸び に追従出来る第2のポテンシャルとなります。 正にハイブリッドで表地の性能を余す事無く、 更に縮みへも十分に対応出来得る事になります。 裏地を軽視してはならない事が伝わりましたでしょうか! 脇が入り、裏地据えも終わりました。 次は肩入れです! 皆様、ついてきてくれていますか、、、 今週はここまでとさせて頂きます。 長かったですね、お疲れ様で御座いました。 マニアックにかなり専門的で具体的な内容ではありましたが、 手作りのスーツは何故時間が掛かり、どうしてこんなにも高いのか、、、。 そして平面な生地が立体的に構築され、 美しきシルエットと動き易さが可能となるのか。 そんな素朴な疑問を持たれた方々であれば 少しずつでも ご理解が進めばそんなに嬉しい事はりません。 同じステージとなる BESPOKE SUITS という括りでみてもお店違えば 工程数(手間の掛け方)や手法、技術力などが全然違いますし、お値段も違います。 高品質な良いものには往々にして工学にはなりますが、 必ず裏付けとなる理由がある筈です。 それらを必要な時はいつでも自信を持って ご説明出来なければ説得力もありませんね。 お仕立て上がり、ご注文主様へお納めする時は各所様々なポテンシャルは ひっそりと馴染まされ、気付かれぬ程に冷静で涼しい顔して嫁いで参ります。 能ある鷹は爪を隠しているのですよ! では次の技術論更新まで暫しお待ち下さいませ。 ・・・・・誠に恐縮ながら、来週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。 次の更新は 5月5日(火) の予定となります。 また、GWの期間に付きまして 当店は通常営業であり、お休みも定休日(火曜日)のみとなります。 いつでもお気軽にお声掛け頂けましたら幸いです。 どうか引き続き宜しくお願い申し上げます。
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【 TAILORING-2 】
2025.10.28
技術について

ロンドンにあったテーラー&カッター社は1866年から1970年代初頭まで 100年以上に渡り沢山の書籍を発行しつつアカデミーも運営し 業界の発展に大きく貢献して参りました。 この製図は紳士服が一番エレガントであったと言われる時代の製図であり、 端正で美しきそのあるべきクラシックなバランスは永遠の財産です。 日本の現代的な製図とはかなり違いますが、 体型も違えば価値観も随分と違います。 型紙は2次元ですから 生地を裁断して3次元の立体にすべく、 様々なテーラーリング(縫製・仕立て)術を巧みに用い紳士服へと仕立て上げます。 網目のかかった左側のパーツ、これが前身頃を内側から支える『芯地』です。 軍服をルーツに持つスーツの類は、男らしい構築された肩、 そして立体的な胸部やエレガントなシェイプから構成され、 芯地などは大きく貢献し その凛々しき姿はテーラードたる真骨頂でもあります。 型紙は主体として表地の裁断用であり、その型紙には 沢山の様々な体型的情報が内蔵されている訳です。 芯地の裁断(裁ち合わせ)はそれをベースに抜き取ります。 一般的には先に裁断された前身頃の生地に重ね、 その情報を転写するといった具合ですね。 此度のクライアント様は どの位のボリュームがどこに必要なのか、 ラペルの返りについては、、、そもそも芯地としての強弱は、、、 芯地の構成、組み合わせは果てしなく、 芯地のカッティング自体も価値観により多岐に渡ります。 英国の、そして古いテーラードであればある程 芯地の役割と共に 担うポジションも広く、単にフォルムの形成や支えだけでなく、 補うという要素さえ多分にありました。 芯地とは多少ズレますが例えば昔の紳士たち、一つの例を挙げれば 女性がバストにパットを入れる事がある様に、男性も臀部やふくらはぎ等に 増しパットなどが施されていた時代があります。 ベースとなる芯地に対し、胸増、肩増 など増芯を重ね、 ハ刺しを使ってそれぞれの芯地を一つにマッチングさせます。 このイラストでは最終的にフエルト(ハ刺しされているパート)を足し、 蓋をするように構成されております。 分かり辛いと思いますので一応イラストをご説明すると、 右側のイラストは右前身頃、左側の網目イラストは左側用の芯地単体、 真ん中のイラストが右前身頃(右のイラスト)のひっくり返された裏側(内側)となります。 右のイラストでは腰ポケットのフラップが見えますね、 ひっくり返すと その腰ポケットの袋地、 そして脇ダーツの縫割りされた縫代が見受けられます。 カッティング(製図・型紙作り)や芯の作りなどは どんな服を仕立てたいのかにより手法が違いますので、 それぞれテーラーの(カッターの)思惑、 もしくはクライアント様のご要望により最適解を導き出します。 今週は久しぶりに仕立て術の続きをご紹介したいと思います。 真剣に集中して作業している最中、気付いた都度にしか写真を撮っていないので 結構分かり辛いと思いますが どうかお付き合い頂ければと思います! これは出来上がった芯地であり、この上に前身頃を乗せ 躾糸で据えて参ります。 前身頃は 肩から裾に至るまで、ラペルの端から脇下までホールドされます。 ベースとなる芯地、これは毛と綿の混紡芯地です。(Body canvas) 勿論種類は沢山御座いますが、ベースとなる芯地選びは 私の価値観により選んでいるものをレギュラーとし、 あとはクライアント様のご要望次第で変える場合が有り得るといった具合です。 向かって左側が前端側であり、切り躾がみえますが ラペルの返り線です。 薄いグレーのテープが見えますが、それぞれにそれぞれの分量を切り開いたダーツがあり、 切り抜き突合せにしてテープで止めます。 これらのダーツにより欲しい位置へ欲しい量のボリュームを生み出します。 この意図するボリュームを内側から支え、維持させるのが胸増芯となります。 膨らみにはポツポツと見えるのが貫通しているハ刺しの糸であり、 アームホール側の肩部のみハ刺しされていないのでポツポツしていませんね。 この肩の部分は骨格に伴い前肩(個人差あり)にする処置を施すのですが、 この部分だけは後ほど行います。 胸増芯は『バス芯』と呼ばれ、昔ながらに馬の尻尾を使った芯地です。 とても弾力が強く、ハリコシに富んだ高級な芯地です。(Chest canvas) この弾力が程好くボリュームを内側から押し支え、 立体的な胸のボリューム形成に繋がります。 コスト面含め、この本バス芯を使用していない所もありますし、 そもそも毛芯の代わり含め今ではポリエステルなどで代用する芯地もあるくらいです。 皆様におかれましてはやっぱり昔ながらに天然繊維の芯地が良いですよね! どんな芯地が使われ、どんな作り方をされた服なのか、、、 分解してみないと分かりませんので幾らでも、、、、 お分かりですね、お安い服にはそれなりの理由も必ずあります。 これはベースとなる裁ち合わせされた芯地から更に胸増芯を抜きました。 これからベース芯で発生させたボリュームを こちらでも合わせて発生させる必要があります。 出来芯(既製服含め既にアバウトなサイズで出来上がっている芯地)や 多くのテーラーでは このバス芯にさえ表側のベース芯と同様に 鋏を入れダーツによりボリュームを出させています。 しかし それはナンセンスです! 折角の高級な弾力のあるヘアー(馬の尻尾:緯糸に使われています。)に 鋏を入れてしまうと 願わぬとても大きな副作用が出ます。 では どうやってベース芯に伴うボリュームをダーツ無しで発生させるのか、 それはアイロンによる『クセ取り』です。 右側は裁ち合わせたばかりで素の状態であり、フラットですね。 左はクセ取りを行ったバス芯であり、 グワっと大きなボリュームが出ているのが分かりますね! このクセ取りという行為で成形できなければダーツで処理するしかない という事になりますので大量生産が前提の縫製工場で作られる 出来合いの芯地は全て基本ダーツ処理です。 これをベース芯に据え、ハ刺しで留め付けるのです。 これが胸増芯ですから肩増芯含め重ね合わせ、 部分的強弱を付けながら芯地を組み上げて参ります。 カタカナの『ハ』の字に見えるのでハ刺しと呼ばれます。 一針一針ボリュームをKEEPさせ、 『この場にいろよ!』とメモリーさせているのがハ刺しです。 少し波打って見えるのは意図的であり、縦方向にユトリを強制的に入れ込みます。 接着する事なく、それぞれの芯地の個性を活かす為にフラシで仕立てられます。 ハ刺しのハの字に伴う大きさやピッチにも意味・意図があり、大き過ぎては勿論ダメ、 細か過ぎても時間が掛かり過ぎであると共に硬さも増してしまいます。 何事も程好く、意図するファジーさがこの位であると私の価値観です。 使われる糸はシルクの手縫い糸、細過ぎず太過ぎない程度です。 若い頃に習った時は綿糸(カタン糸)であり、コストも関係しているでしょう。 (因みに、カタン糸は「コットン」がなまってカタンと呼ばれるようになったとか!) 絹糸はその分高額ですが、芯地と同じ動物繊維である事、 綿糸より滑りと馴染みが良く絡み辛い事などがメリットとなります。 (カタン糸は水通ししてから使っていたので、それはもう絡まりやすかった!) 糸色はですね、、、これ、たまたまの水色なのですね。 全く透けない表地・裏地であれば 使用頻度の低い色を 優先消化する為に使っているので色は色々です(笑)。 もし透ける可能性があれば芯地に色合わせですね。 ハ刺しの糸を良く見て下さい、緩く遊び(たわみ)が見えるでしょうか。 これも意図的であり、狙ってこの緩さなのです。 ハ刺しを終え、組み合わされた芯地として完成です。 私はフエルトを基本的に増しません、フエルトの役割・意図を欲しないからです。 むしろ無い方へメリットを見出しています。 ただし、必要なケースやリクエストがあれば別ですよ。 次の工程は『芯据え』となりますが、その前に芯地、表地それぞれに クセ取りと共に馴染ませるプレスを確りと行い、寝かせます。 織物は生地でも芯地でも 基本的には撚糸により構成されています。 撚糸は熱で一時的にキュっと強く撚りが強くなりますし 動物性繊維は特に動きます。 冷めると元に戻りますので、戻る前に次の工程へ進んではなりません! 寝かしている間は他の作業を進めますよ。 良く寝かせたら『芯据え』というとても重要な工程です。 芯据えとは 表地と芯地を躾糸によりポジション同士を適合させ、 ボリュームを馴染ませ合体させる工程です。 かなり重要なパートであり、ここでも腕の差が出るでしょう。 仕立て上がった服へ多分に影響を及ぼし、 この工程が上手くなければ仕立服のレベルは上がりません。 本気で集中して芯据えを行い、次はポケットを芯地に綴じます。 ここまで芯地と合致すれば 次はいよいよ極薄な部分増芯を噛ませラペルのハ刺しです。 この工程は分かりやすく、かつ有名でもあり目にされた方々も多い事でしょう。 ラペル=下衿 は内側が表側に反り返っている状態で成り立ちます。 ですから綺麗なロールを描き、重なりあった生地たち (表地、芯地、増芯など)を捲ると『内回り・外回り』の作用により フラット時とはズレが生じます。 例えば折り紙を半分に畳み、更に半分、更に半分、、、 角を合わせて綺麗に折れませんね。 それは折り紙の厚みも作用し内側と外側で距離差が発生しています。 ハ刺しというのはメモリーであると言いました。 「ここに、こんな感じでいるんだよ!」という形状を手で作り出し、縫い留めるのですね。 ラペルで言えば捲ってロールを作り、その発生した距離差を そのままKEEPさせておくという事になります。 同じ事を肩パッドでも行いますが、 肩パットの作り出す立体度合いはもっと複雑です! 技術論は説明が難しく、、、文字ばかり増えますね(汗)‼ 刺せましたね! ラペルの角だけ 更に細かなハの字、かつ方向性を変えてあります。 角のその部分だけ更に絞り出すように刺します。 より強く内側に反り返るよう巻き込まれているのが分かるでしょうか! 糸は芯作りで使った糸より更に細い絹糸を使用します。 細い糸でハの字も芯地より細かいですね、そして糸のタワミほぼも無し! ハ刺しは色々な個所で多分に採用されますが、 それぞれのパートでアプローチが違います。 各箇所での役割、担う目的が違いますから 見合う糸やピッチ、 緩さなども違っていて当然なのです。 ラペルのハ刺しの糸色は必ず生地に合わせます。 ハ刺しは掬い縫いでもあり、その時使われる表生地の厚さ、この厚さの半分を掬う訳ですが、 生地が春夏地の様に薄くなればなるほど 当然難しくなります。 そう、芯地でのハ刺しと違い ラペルは裏側に糸が貫通して走っている様ではダメなのです。 故にポチポチとくぼみの様に見える感じとなりますよ。 修業時代は糸が出まくりでしたが練習・経験あるのみです! 段々と指が感覚を覚えますし、針を刺す向こう側(裏側)には 部位を摘まんでいる指を置いていますからその裏指に刺さったら貫通ですね、 そこから引いて針を戻す感じです。 なので慣れない時は指の腹がとても荒れて、、、懐かしい話です。 このラペルへのハ刺しが終われば意図的に付けた折角のロールをガッツリと 本気で潰し込むようフラットにプレスを掛けます。 まっ平らでぺったんこ、平たい板みたいになります。 矛盾した行為の様ですが、 植え付けたハ刺しによる「メモリー」は決して無くなる事はありません。 程好く馴染んで芯地と表地が正に一体化し、一つの下衿として確立されます。 次は端打ちテープ(伸び止め)です。 正確なラペル、そしてフロントの線を引いてキャラコ(縦地の綿サラシ)を付けます。 サラシを湯通ししてプレス、割いて正確な縦地の目でテープ状へと二分割にします。 ですがこの端打ちテープは既製テープもあり、麻のテープなどもあります。 出来上り線に対して据え、部分的に引っ張りめであったりと そこら中に『手加減』が操作として内蔵されています。 カラゲ縫いにより丁寧に表地と、そして芯地へとカラゲて参ります。 このテープは伸び止めでもあり力芯でもあります。 ゴージラインからラペル、フロント、 裾へと芯地の有る所(もしくはもう少し延長)まで! ・・・・・ふぅ~、この度はここまでとさせて頂きます。 見えない所で どれだけの考慮や手作りによる時間が掛かっているのかが 垣間見る事が出来ましたら頑張って書いている甲斐が御座います。 一つ一つの小さな技術には 狙った意図があります。 その技術を用いつつ、更に微妙な手加減が内蔵されているのです。 技術(手法)は一つではなく、多岐に渡りますが、 それぞれにメリット・デメリットが存在します。 全てを理解した上で、この生地ならば、このスタイルならば、 このリクエストだからとチョイスされるのです。 故に技術の懐は広ければ広い方が良く、様々な技術に興味を持つ事が大切です。 服作りとして100点を目指しますが手作りではほぼ有り得ません、 だから楽しく、そして難しく遣り甲斐があるのです。 どの道でも職人は同じですよね! ではまた続きを書きますので、その時まで、、、、、 最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。 ・・・・・恐縮ながら来週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。 次回は 11月11日(火)を予定しております。 2025年も2か月を切っているではないですか、、、! どうか引き続き宜しくお願い申し上げます。
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