BLOG

Bespoke Tailor Dittos.

【 TAILORING-1 】

2025.07.01技術について

 

 

 

 

皆様 こんにちは。

今日から7月、関東も異例の速さで梅雨明けが発表されそうですね。

 

これからピークを迎えつつある夏の暑き中、

時間のかかる BESPOKE は秋冬のご注文も頂いております。

また、H.S ORDERの方は今月末より

『早期受注キャンペーン』も開催されます。

最後に改めてご紹介させて頂きますので御確認頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

t1

 

 

さて、随分と長くBLOGも続けて参りました。

これも一重にご覧下さる多くの皆様方のお陰により、応援により継続してこられました。

以前は技術的な事柄もボチボチ書いておりましたが 気付けば10年前とか、、、。

重複するところは多分にあるでしょうが、改めて大きな写真と共に

そろそろアップデートさせて頂ければと思います。

 

仕事の手を止め、ご丁寧にわざわざ写真を撮る行為は滅茶苦茶にロスタイムでもあり、

真剣に集中していれば撮影し忘れて随分と工程が進んでいたりも!

 

意識して納めた限られた写真より、部分的な工程にはなりますが

改めてご紹介させて頂きたいと思います。

 

 

 

掛け替えなき手作りの洋服、どれだけ長い時間を掛け、

手の込んだ工程と共に技術を駆使して仕立て上げるのか、、、

BESPOKE TAILOREDがどうしても高額になってしまう理由も

垣間見る事が出来ましたら何よりの幸いで御座います。

 

 

 

 

 

 

 

t2

 

ONLY ONEとなる顧客様の型紙を丹精込めて引いております。

その型紙には本当に沢山の情報が含まれており、サイズからデザイン、

ユトリの加減など 誂えるその洋服の設計図となる訳です。

 

 

そんな設計図である型紙の重要性ですが、どんなに卓越した職人が手間暇をかけ

高度なテーラーリングで仕立てたとしても 型紙が悪ければ無用の長物となってしまいます。

ご注文を重ねられ、熟成した型紙は TAILORと ご注文主様の財産でもあります。

靴で言えば木型ですね。

 

 

 

 

打合せ(Be Spoken=BESPOKE)を入念に行ったにしても 1stオーダーではどうしても

私のご提案的な要素が多分に含まれますし、

ご注文主様も着てみなければ分からぬ事は多々御座います。

そういう意味でも仮縫いの恩恵はお互いにとって大変重要でありつつも、

裏地もつかぬ仮組みは滑らず動き辛いので

ご注文主様にとっては慣れぬと分かり辛い事と思います。

 

お仕立て上がって納品された洋服は一回や二回の御着用で判断しようとはせず、

もっともっと着て その服と沢山対話をして下さい。

服が馴染む頃、持たせたポテンシャルは解放され、与えられたユトリ感などは

好みや生活(動き)によりリクエストも出る事でしょう。

そしてご注文主様の『着慣れ』も大切な要素です。

 

次の御機会を頂戴できるのであれば、1stオーダーからの意見や感想、お好み踏まえ

よりご満足度の高い設計図となるよう活かし、引き直します。

 

TAILORとの付き合いは ご自身様の型紙を『育てる』という側面もあるのですね。

 

最初は特に拘りなど無ければ 私へお任せの丸投げでも全然良いのです!

むしろ光栄です!

素敵なレストランがあれば、旬を活かしたシェフお勧めの料理、、、

食べてみたいですよね。

 

ですが、着てみれば絶対に意見や感想は出てくるでしょうし、

全くなければ勿論それも良しです。

 

 

では そんな時間を掛けて練り上げられた型紙を使って裁断し、

以降の工程(TAILORING)よりご覧下さい。

 

 

 

 

 

 

t3

 

前後の身頃は左右2パーツに分けられ、袖は両腕ありますね。

生地の幅は織機の企画次第、大抵は150㎝幅であり 端と端(ミミ)を合わせて二重に

(内に表側がくるように)畳んで左右パーツを効率よくいっぺんに裁断します。

 

生地に型紙をおき(マーキング)、チョークで線を引いた後に裁断する訳ですが

その重要な『チョーク線』は片面にしか引かれません。

当然ながら重ねられた下側となる生地には線が無いので

その線(情報)を写す必要があります。

 

その役目を担うのが 『 切躾 』 です。

躾糸(綿で素朴な太く荒く安価な糸)は白毛(毛ではないのですが)と呼ばれます。

その白毛でチョーク線を地味に縫って参ります。

 

掬って、掬って、掬って、、、渡った糸は鋏で切りながら!

 

そして、多くの方々は左右非対称もあり そんな箇所は

間違えぬよう左右で糸色を変えています。

 

 

 

 

 

 

t4

 

必要な線に全て印となる躾を打ち終えましたら

今度は二重になっている左右のパーツを分離です!

生地をペラっと捲ると縫われている躾糸が顔を出します。

更に引っ張る事で躾糸の「脚」を作り、その脚を鋏で分断します。

 

慎重に、、、、ここで糸脚を切ったつもりが

チョキンと生地を切ってしまう事がありますので要注意!

 

t5

 

 

 

 

 

 

 

 

t6

 

重ねてある生地を躾糸で縫い、捲って糸脚をカットして少しずつ慎重に。

全てカット出来ましたら分断は完了です。

 

上側に残った糸は草が生えているように見えますね⁉

その草(躾糸)を刈り落とします!

 

t7

 

 

 

 

 

 

 

t8

 

線に躾を打ち、切って糸の印を作り出す(写す)。

この行為を 切り躾 と言います。

 

これで重ねてあった下側の生地にも必要線が写った事になり、

更に生地の表側にも糸印(切り躾)が出る事になります。

これで表裏どちらから見ても正確で左右対称な線の情報が共有できました。

 

イギリスでもイタリアでも この様に切り躾を利用しますが、

イタリアのサルトはもっとビロビロに糸脚を敢えて残していますね。

刈り取ろうが残していようが目的・意図は同じであり、

双方にメリット・デメリットがあるだけです。

 

t9

 

 

 

 

 

 

 

t10

 

お次はダーツ処理です。

型紙を見ると この裁断では『腹癖』がありますので、先ずはそこから!

下方に腰ポケットのフラップ型(横長四角形)が見えますね。

左上に胸ダーツ、右は脇ダーツ、腹癖(ダーツ)は

フラップの頭上 青矢印の三角形となります。

 

このダーツは丁度 腰ポケット作りで切り込みを入れる箇所を利用して取られます。

 

腹癖は本来であれば腹部の出ている方や反り腰体型に

有効であり、必要なダーツでもあります。

腹部が出ていれば前裾は跳ねがちになりますのでケマワシ(底辺距離)を摘まんで

跳ねを抑え腹部を包み込むという目的と効果がありますが、

同時にそれは結果的に前裾を後脇へと吊り上げる効果もありますので、

むしろ後者の恩恵が欲しいがゆえに普通体型でも分量を少しにして採用されたりしています。

主に2面裁断より 3面の細腹を入れた裁断に多いですね、3面は処理も楽です。

 

こんな所にダーツがあるので、赤矢印のカマ底、

そしてウエスト位置でも「ズレ」が生じていますね!

腹癖が処理されると これら赤矢印のズレは解消される事になります。

 

 

 

 

 

t11

 

腹癖となるその三角面を切り取ってしまいます。

切り取られた辺と辺をくっ付けると意図するダーツ効果が生まれる訳です。

 

この辺同士をくっ付ける際に 簡易な接着芯などで貼り合わせてしまったら

腰ポケットが硬くなってしまいます。

そもそも良いテーラーリングであればある程に接着芯は使用しません。

 

故に糸でからげますよ!

ヘリンボーン柄ですから勿論柄も合わせて、、、。

 

 

t12

 

t13

 

 

 

 

 

 

 

 

t14

 

これで辺と辺が綺麗に突合せで繋がりましたね。

クセ取りも行うので この口が空いていると まともにクセ取りすら出来ません。

(この糸は後に切られます。玉縁幅よりはみ出なければ

残しておいても支障はありませんが毛抜きで抜いています。)

 

これで胸ダーツ、脇ダーツ、そして顎ダーツの処理へと進行しますが

勿論全てを同時進行でも構いません。

今回は解説もしやすく順繰りと!

 

 

 

 

 

 

 

 

t15

 

先の型紙写真での 赤い矢印のズレが解消されていますね!

これで腹癖は無かった事になりましたが、その持たせたポテンシャルは

確りと生きていますので 服になった時に違いが出るのですね。

 

 

 

 

 

 

 

t16

 

チャコールグレーの生地が なんだかネイビー調に⁉

 

これで全てのダーツ処理が終わりました。

平面であった生地はダーツ、そしてクセ取りによりかなり立体的になります。

むしろ平らにはなりませんし、平らにしてしまったらダメですよ。

 

次はいよいよポケット作りです。

 

 

 

 

 

 

 

 

t17

 

2面2ダーツ裁断の上着、ダーツにより腰ポケット線が歪みます。

歪んでもクセ取りにより強制的に戻してポケットを作ります。

 

早くも両玉縁が出来ましたよ!

 

 

 

 

 

 

 

t18

 

予めテクニックを駆使して作られたフラップ、

ポケット口径よりほんのり大きめに作るのがミソです!

フラップの出来上り幅に合わせて糸で印、この糸でグシ縫い(縫った糸を絞り込む)効果も担わせ、

確りと口径に合わせつつ絞り フラップ自体も立体に!

 

腰ポケットはポジション的に腰骨をホールドする位置にありますので

とても強いRを描く必要があります。

故にポケット自体も立体に作られているのは必然でもあるのです。

 

 

例えば安価なスーツを仕立てる縫製工場で作られる腰ポケットはマシーンで作られます。

ダーツで立体になり過ぎると平面で直線に作られるマシーンでは作れなく(利用できなく)

なりますのでダーツの効力は必然的に弱めに設定されています。

(それ以外にも理由があります。)

 

ポケット部や口布には接着芯が張られ、マシーンで自動に作られるポケットは

正にフラット、接着芯によって硬いしとても立体的とは言えませんが、瞬で出来るのです。

だからこそ大量生産ができ 安価で提供出来るのです。

玉縁でさえ縫割りされず片倒し、、、知ってしまえば全くの別物くらいに違います。

(当店H.S ORDERの両玉縁は勿論 縫割り始末でお願いしていますよ。)

 

 

この両玉縁を形成するパーツを口布と呼びますが、この口布地の目の取り方でも

縦地や横地、バイアスでとるお店もあり様々です。

これらは見え方も随分と印象が変わりますが、私は通常縦地、柄が強ければ横地でとっており

バイアスだけは基本的に採用しません。

これらにもメリット・デメリットがあり、何を優先し尊重するのかより

それら手法をチョイスするという事です。

 

技術には意図や意味が必ずあり、それらを理解せず

「昔から、、、周りが、あそこが、、、」というのが一番説得力ありませんね。

 

 

 

マニアック過ぎる内容でしたが、もっと詳しく書き続ければ

あと3~4ページくらい必要です(笑)。

そこにあって当然なポケットの作り方でも相当な違いがあるという事で御座います!

 

 

 

さぁ、差し込んで躾留め!

 

t19

 

 

 

 

・・・・・・今回はここでお終いです‼

かなり中途半端ですが、、、、段々と撮影が減り、急激に工程が進行してしまっているので

急な区切りにもご勘弁くださいませ。

 

次回は芯地、そして芯据え、ハ刺しあたりになるでしょうか。

そのうち続きを書きますので、ご期待せずにお待ち下さいませ。

 

 

ハンドメイドが前提となるBESPOKEのステージでも、お

店が違えば拘りや工程数、仕立てに関する価値観からお値段まで様々です。

 

また、これ(BESPOKE TAILORING)があるべき姿なので

大量生産を前提に安価で提供しようとすれば、どこを どれだけ省き、

簡略化しつつ、機械化できるのかが要となります。

良いモノ作りをしようとすればする程に原点回帰していかなければならない

という事になりますね、当店のH.S ORDERにも言える事です。

 

全てのジャンルに言えますが、良いお店ばかりではありませんし、

そのお値段に対し品質が伴っているのかどうかなど 消費者の私達もある程度は

学びがあると理想的なのかも知れません。

 

 

 

一つ とても強くお伝えしたい事があります。

多くの既製品や大量生産されるモノ作りは基本的には新品時が最高到達点です。

 

職人の手で作り出されたモノ作り、長持ちもしますし新品時が最高ではないのです。

そこから育ち 更に最高到達点を上げ続けます。

長持ちを前提にしているので修理にも考慮された作り方含めポテンシャルを持たせてあります。

 

価値観の違いはありますが、費用対効果的に見ると

BESPOKEは決して高額ではないと思います。

そう思っていなければ こんなお値付けは出来ません。

物の価値、説得力や納得度、そして自己満足度の高さは

往々にして金額に無関係ではないと思います。

 

ご注文主様より頂戴するお代金より、ほんの少しだとしても

ご満足度が上回る事が出来るよう日々精進すると共に、

丹精を込めてお仕立てさせて頂きますので

どうか引き続き 宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・HOUSE STYLE ORDER限定による

『早期受注キャンペーン』 に付きまして。

 

7月23日(水)~8月22日(金) 約一か月間に渡り開催させて頂きます。

 

工場さんが工期を通常より少し長めに頂く分、

ささやかながらお値引きをさせて頂くという企画となります。

 

内容は秋冬物でも春夏物でも構いません。

スーツやジャケット、コートが対象となります。

 

期間前でも「キャンペーン希望」と仰って頂ければご対応させて頂きます。

日程に合わせて工場さんに投入致します!

 

 

どうかこの御機会を有効利用して頂けましたら幸いで御座います。

皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
Bespoke Tailor Dittos.