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Bespoke Tailor Dittos.

【 DOBCROSS:T様のご注文 】

2024.12.03お客様のご注文

 

 

 

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12月に入りました、これから慌ただしくなりますね。

今週は好天の日も多く、BLOGをご覧下さる皆様方におかれましては

スーツやオーバーコートなど テーラードの服をご満喫されている事と思います。

 

A.イーデン氏の様なチェスターFコートを誂えたくなるような

素晴らしい BLACK CASHMERE を出物で入手し、

無地に届いておりますので是非お勧めで御座います!

 

 

 

 

 

 

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ONではやはりダークスーツが一番シックリときますね。

ネイビーの三つ揃いはベーシック且つ欠かせぬスーツですが、

シンプルだからこそ 生地や仕立ての差が分かりやすくもあります。

手にするグローブはペッカリーでしょうか、

細巻の傘と共にエレガントで渋い英国紳士を感じさせてくれます。

 

反面OFFではフラノやツィードなどで

アースカラーをベースにした格子柄のスーツも欠かせません。

紅葉狩りやご旅行含めカントリーサイドでは欠かせませんし、

普段のタウンユースでもそんなカントリーに想いを馳せ

クリスマスに染まりつつある街の散策や、

夜になればイルミネーションでも見に行きましょうか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今週は極上の生地で三つ揃いを誂えて下さった

T様のご注文を紹介させて頂きます。

 

 

T様におかれましては当店での初注文となります。

この度お仕立てになられるスーツへ込める想いや用途をお伺いし、

生地はお見立てより直ぐに決まりました。

しかし、スタイルは3Pに興味があるものの 2Pにしようかと迷われます。

今までに何度か試した事もあるが なんかシックリとこないので

自分には合わないのではないかとの事。

 

『 絶対にそんなことはありません! 』

 

そんな理由であれば是非とも当店で三つ揃いをお試しください。

温かくなってきたシーズンや、そこまで畏まらないシーンなどでは

ウエストコートを省き、2Pで着用すれば良いだけです。

そもそも論としてスーツは三つ揃いが前提であり、その様に設計・構築されています。

故に厳密にはウエストコートを省いた2Pのスーツは

略式というポジションでもあり、それが普及して一般化したのです。

 

T様のような方こそ 当たり前の様にサラリと三つ揃いを着こなして頂きたいですし、

三つ揃いでお持ちであればウエストコートの着用は選択出来るのです。

今までの三つ揃いやウエストコートへのご経験は一時棚上げさせて頂き、

新鮮なお気持ちで私に託して下さいませ。

 

紳士がスーツを着用して似合わない、、、

確かに着慣れも必要ですが 似合わぬ訳がない。

もしそう思わせたのであれば私達TAILORの責任です。

 

 

T様におかれまして、今後の様々なシーンにおいてエースとなるべきスーツでもあり

スペアのトラウザースも含め結論的には 計4P-SUITS にてご注文を頂戴致しました。

 

 

 

 

 

 

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John Cooper & Son

DOBCROSS

 

98% Super140 WOOL

 1% CASHMERE

1% SILVER MINK

340g

 

http://dittos.seesaa.net/article/498354262.html

【 DOBCROSS 】

 

とんでもなく高品質なスーチングでありますが、既に廃版が決まっています。

なんでも高騰している昨今 新たに織れば幾らになってしまうのでしょうか。

 

ドブクロスとは旧型の織機名であり、開発された地の名でもあります。

詳しくは上記リンクよりご覧下さい。

往年のVINTAGE SUITING では普通であった品質(旧型織機)を、

無理やり現代で復刻したようなものですね!

 

色柄によっては既に入手できません。

ある内に、、、それもあってスペアトラウザースを

お付けになられたのはご懸命な判断で御座います。

 

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吊り用のトラウザースはほぼ初めてだと思いますので、

この度は本質的なあるべき三つ揃いの真骨頂をご体験頂きます。

 

吊り用のトラウザースはメリットがかなり多く、

慣れればベルト用より綺麗に穿けつつ 楽でもあるのです。

ウエストサイズはベルト用と違って締めつける事なく、

敢えて遊びのあるサイジングで誂えます。

 

深き股上は腰位置高く 脚長でスタイルを良く見せ、

三つ揃いとしての調和を図る意図的な設計となります。

リアルなウエスト位置より高い股上ゆえ吊っていなければ

そのポジションを維持できません。

この腰(ウエスト)位置設定は ウエストコート、そして上着にも連動しており、

だからこそ三つ揃いでの調和がとれるのです。

 

 

現在 一般的な2Pのスーツがアンバランスで調和がとれていないのは、、、

 

トラウザースを吊らなくなり、リアルな腰位置までウエストライン(股上)を

下げたにも関わらず、対となる上着のウエスト設定位置はそのまま、、、、なのですね。

下物を下げたのですから 当然上下での各ウエスト設定位置がズレる(間が抜ける)

というギャップが生まれる事になります。

 

クラシックなテーラードであるという範疇におき、

例えば 上着が3釦ならセンターの第2釦位置、

2釦なら上の第1釦位置、誤差はあれど この留める釦位置が

その上着での 設計上のウエスト設定位置と言えます。

その設計上なウエスト位置は身体のリアルなウエスト位置ではなく、もう少し高めなのですね。

 

ベルト用トラウザースのベルトで締める腰帯位置は

上着で留める釦位置よりもっと下にありますね、股上だけを下げたからです。

吊り用トラウザースの腰帯位置は その留める釦位置の付近にいるという事です。

 

更に抗えぬ事実として、欧米人と比べて日本人の多くは手脚の長さが短めですね。

同じ身長だとしても腰の位置が結構違うので

余計顕著になってしまうという側面も御座います。

 

 

では、2Pの上下スーツで調和を取ろうとするなれば

吊らないので落ちてしまう分 股上を低くしたトラウザースに合わせるべく、

上着のウエスト設定ラインをベルト用トラウザースの腰位置(帯位置・リアル腰位置)まで

下げる必要がありますが、そんな上着は、、、、、。

 

推測ですが、T様がご経験なされた三つ揃いやウエストコートの類は

設計上の不調和、サイズ感含めたバランス構築に問題があった可能性が考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

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もう一つ 吊り用のメリットです。

お年を召されれば どうしても身体は緩み 余計な肉も付きがちです。

腹部が大きく立体的になった場合、その隆起したウエストポジションで

ベルト用トラウザースの腰位置(腰帯・股上)をキープし続ける事は不可能です。

歩けば、座れば、動けば必ずや ずり落ちます。

 

ですが、吊り用では どんなに動こうがトラウザースの腰位置は絶対に変わりません。

これは 大変重要な事でもあるのです。

 

 

 

 

 

 

 

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シングルブレストのウエストコートは襟付きにされました。

襟は古来より後乗せ仕様にてのお仕立てですが、

これは上着を着てもVゾーン周りがスッキリとして嵩張りません。

しかし、上着の様に身返しより返す仕様も勿論お仕立て可能で御座います。

 

三つ揃いとは3アイテムで一つの服であり、何よりも調和が大切です。

ウエストコートには適正なユトリを内蔵させているものの、

釦を締めれば身体のラインが出る程のフィッティングです。

だからこそ「大は小を兼ねる理論」で作られる既製服の様に

背中のベルトで絞り込む必要がありませんので、

実際には背ベルトなんて飾りの様なものなのですね。

 

 

 

 

 

 

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お座りになってみて下さい!

穿きなれたトラウザースと比べ、帯位置が随分高く、

ウエストコートもそれなにフィットしています。

それぞれに適正なユトリを入れていますが、ここからはお好みです。

きつく感じなければ十分であり、むしろ

このあるべきサイジングに慣れ、基準とされて下さい。

ご心配であればユトリを増やす事も可能です!

 

今回は2回目の仮縫いですから、初回ほどにインパクトは無い事と思います。

 

 

 

 

 

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上着も至ってベーシックでクラシックに。

紳士服は歴史であり、源流は大英帝国です。

多くのスタイルは英国より生まれ、その派生に過ぎません。

 

クラシックな服を作るには歴史を学ぶ必要があり、

それなくして服の説得力なんて生まれないでしょう。

あとはBESPOKEでもありますので、T様のご要望を反映の上で

私の解釈や美意識を介し表現させて頂く事になります。

 

 

 

スーツのルーツは軍服にあれど、このスーツは軍服ではありません。

では何が変わり、何を尊重するのか、、、勿論着心地も重要で御座います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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かなり語っていまいましたが、、、仕立て上がりで御座います。

T様にご着用頂くのが楽しみです!

 

写真では伝わりませんが、

深みのあるダークネイビーの肌触りはとてもシットリとしつつ、

打ち込みが良いのでクセ取りも大変良く効きます。

 

素材の良さからくる自然な艶、溢れてしまう気品のオーラはご注文主様のもの。

当たり前のものだからこそ最高の食材を使い、最高の調理にて。

 

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ご多用の中、早速ご来店頂きました。

お住まいは近くではありませんが、お仕事で日本各地を巡られております。

壇上で人様の前に立つ事も多いとの事で

是非これからは誂えられたこの三つ揃いと共に!

 

穿かれるとトイレでの「小」が随分楽だとお気付きになるでしょう。

フロント開閉の開き止まりが下まで深いのですね!

既製品含め多くのトラウザースは昔と比べ

開き止まり位置が凄く高くて「小」も、、、。

こんな所も製造的効率化優先ゆえに退化してしまった部分と言えます。

 

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やはり黒靴が似合います。

シングルで上げた裾のレングスもベストバランスですね、

傾斜の恩恵が凄く出るのです。

 

裾口(内側)にはグルリと一周するキックバックテープ(靴擦れ)が

付けられていますが、これも意味があり必要だからこそ、、、

とは言え巷では見慣れぬ仕様かも知れません。

 

 

 

 

 

 

 

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バランスの取れた三つ揃いは、上着を脱いだお姿もエレガントで素敵です。

T様、今までお持ちであった三つ揃いとは

大きく印象が変わったのではないでしょうか。

 

先に語り挙げた各アイテムのウエスト設定位置、

これらが調和しているからこそ生まれる美しさがそこにあります。

と 言いましたが、本来クラシックなスーツとはそういうものです。

あるべき姿を素直に表現しているだけであり、

先人たちの功績たる賜物で御座います。

 

 

ネック部はシャツのカラーに寄り添い、

肩も同じく曲線に上手く馴染む様でなければなりません。

もしインナーたるウエストコートが身体に合っておらずに皴が寄っていれば、

それは上着を着用しても響いてしまいますね。

昔の様なヘビーウエイトの生地ならいざ知らず、現代の生地は明らかに軽く、

薄くなる傾向にありますので よりシビアでもあるのです。

 

 

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T様 素敵です、、、、素晴らしくて本当にお似合いで御座います。

お待ち頂いた甲斐が御座いましたでしょうか。

 

 

 

 

 

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胸部の豊かで立体的なボリューム、

これも設計や芯含め仕立て術の成せる技です。

同時にエレガントなウエストのシェイプや前肩ショルダーが一層

その胸部のボリュームを引き立てます。

 

 

 

 

 

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ご自身では見えぬ後姿、背骨はS字に湾曲していますが

その腰の括れに寄り添い、尻のふくらみに繋がります。

 

ベントを切らぬスタイルこそ一番エレガントであり、

それこそ誂えでなければこうは参りません。

ノーベントは探しても売っていないですから誂えるしかありませんね!

今回 T様におかれましてはノーベントも初挑戦で御座いました。

 

凛々しき後姿は如何でしょうか。

 

 

 

 

 

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T様より素敵な笑顔を頂けました。

これからのお仕事が、ご出張が楽しみになる様なスーツになりましたでしょうか。

 

スーツもパリッとプレスされ、仕立てあがったばかりで緊張状態のまま嫁いでおります。

T様がご着用下されば下さるほどに緊張はほぐれ、寄り添い、馴染んで参ります。

手作りの品は完成時が品質的最高到達点ではなく、

ご自身が育て 更に高みへと登りつめ、見た目は変わらなくとも

掛け替えなき相棒へと変貌を遂げてくれるのです。

 

T様、この度は素敵なご注文を誠に有難う御座いました。

 

この度のスーツは3シーズン用でしたが、季節を味わう春夏物や秋冬物、

そしてこのスーツに見合うオーバーコートなど

御必要となればいつでもお声かけ下さいませ。

 

またお会いできる日を心より楽しみにしております。

 

 

 

 

 

 

装いには様々な『力』があります。

服を介し自身を表現する事でもあり、そんな服が自信に繋がったり、

行動力さえも躍進してくれる事でしょう。

 

お洒落 ≒ 着飾る事は女性だけのものではありません。

男性には男性の着飾り方があり、仕事や人生をも楽しく

充実したものへと活躍してくれる事でしょう。

男性は特に 衣・食・住 の『衣』をもっと楽しむべきです!

 

 

 

皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

 

 

 

 

 

 

 

 
Bespoke Tailor Dittos.