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Bespoke Tailor Dittos.

【 BUSH JACKET ③ 】

2022.01.25STYLE

 

 

 

まだまだ寒い1月の後半では御座いますが、

2月にも入れば巷では春物の立ち上がり商品が並び始める事でしょう。

 

今週は、BESPOKE TAIOIR が生み出す当店初となる既製服として

いよいよ今春デビューに向け 着々と準備が進んでおります

【 BUSH JACKET 】の続きを御紹介させて頂きたいと思います。

 

 

 

 

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KHAKI BUSH JACKET

= 1950 PATTERN =

 

 

 

 

 

・・・・・無から丸ごと再生したいガーメント(BUSH JK)があります。

先ずは生地、そして設計(型紙)、縫製仕様を考えつつ準備を進めて参ります。

 

BESPOKEでは自分が分かれば、出来れば良い訳ですが、

既製品扱いという事は縫製工場さんへ加工委託させて頂く事が

前提となりますので 準備する事柄も山の様に膨らみます。

そして、人様(工場さん)へ拘りと情熱をも含めて

確りとお伝えさせて頂く事がとても重要な事となります。

 

この度は実益も兼ね、私自身がプロトタイプをこの手で仕立てる事により

全ての具合を確認出来つつ このサンプル自体が工場さんでの大いなる参考ともなる筈です。

 

という事で、ハンドメイドで仕立ててみました!

兎に角 出来る限り忠実に再現しつつ、ちょっぴり洗練感も出したいです。

 

リアルガーメント(古着)の持つ歴史から着心地、機能性、格好良さ、そして説得力、、、

全てを踏まえ、兼ね備えつつ それが新品である事。

MY SIZEでHANDMADEであれば正にオフィサー仕様!? (笑)。

 

 

今週で3話目となる御紹介ですが、特に2話目を見直して頂けると

再現レベルの高さと拘りが伝わりやすい事と思います。

 

http://dittos.seesaa.net/article/484599000.html

【 BUSH JACKET ① 】

http://dittos.seesaa.net/article/484793225.html

【 BUSH JACKET ② 】

 

 

 

 

 

 

・・・・・先ずは生地であるセルラーコットン、

もうAIRTEX社から生地が調達出来れば早いのですが、

調べたところ 随分前から生地は作っていないとの事で、、、、

敢え無く撃沈。

それに代わる生地や素材が出て来てしまったので抗えきれなかったのかも知れません。

 

私のレベルで調べた限りでは、英国内でセルラーコットンを織ってくれる所を

残念ながら見つける事は出来ませんでした。

ですがイタリアでは既製の生地でも似寄りで良ければ手に入るのです。

そして拘りと共にオーダーとなると、、、ロットが半端では無い事、

そしてイタリア製の生地にしてしまう事自体に抵抗があります。

困りました、突然暗礁に乗り上げます。

 

 

!!! であれば、、、。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・世界に誇る日本の技術、、、、

まだまだ様々な分野で日本の技術者、職人の方々が沢山いるではないですか。

 

日本の尾州といえば奈良時代から繊維産業が盛んな地域であり、

今でも多数の素晴らしい織物工場が頑張って活躍しております。

海外からの評価も高く、超一流メゾンなどにも生地を提供しています。

 

 

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Kuzuri   見えますでしょうか!?

生地好きの方々には既にお馴染の有名どころでしょう。

1912年創業の老舗 葛利毛織さんに苦労の末 何とか復刻して頂いたのです!!

 

こいった老舗の長き歴史や技術に裏打ちされた御経験があれば、

生地を分析して同じ様に改めて生み出す事は そう難しい事ではないのでしょう。

現に TAYLOR & LODGE でもそうでした。

ただ、手間とコストも天秤に掛ける必要がありますし、

そもそもこういったセルラーコットンなんて同社でも慣れていない生地である事は明白です。

 

 

もう熱意を持ってお願いするしかありませんでしたが、

何とかご協力して頂ける事になりました。

本当に感謝しております。

 

先ずはAIRTEX社のセルラーコットンを分析すべく、

スワッチ(生地の切れ端)が必要です。

古着のBUSK JKは2点所有しているので、その内の2軍から現物生地を提供させて頂きました。

 

糸の太さや撚り、織り含めた組織や打ち込み分析、

そして 調達した糸をリクエスト通りに染色、 いよいよ織り上げてフィニッシング、

様々な工程を経てサンプル反が織り上がって参りました。

 

 

 

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掛け値なしで この再現力の高さに感動いたしました!

とにかく嬉しくて、、、感謝しかありません。

本当に凄いです!

 

色々と問題やご苦労が多々あった事は言うまでもありません。

渋がる棟梁の声もお聞きしつつ、、、それを乗り越えて頂き、

正に今目の前に復刻されたセルラーコットンがあるのです。

心より感謝しております。

 

これで改めてこの世にBUSH JKを生み出せます!

 

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BUSH JKを作るにあたり ①②話では沢山のリアルな古着をご覧頂きましたが、

その多くは いや全てはパッカリングがエイジングの味として不可欠でもあります。

オフィサー仕様では無いブロードアロー物は全て既製服であり、大量生産品です。

 

暑い地方で活躍する服ですから 何度も何度も洗濯を繰り返します。

縮みも大いに貢献し良い塩梅でパッカリングも出てくる訳ですね。

 

という訳で 私が生み出すBUSH JKも同様です。

洗ったら縮む、だからこそ それを見越したサイズで設計しなければ成りません。

 

織られた生地の幅は織機により決まります。

長さ JUST  1m で貴重なサンプル反を裁断し、早速 洗濯です!

 

湯通ししつつ 計2回洗い、これで縮率データをとります。

凄く縮みます、縮みました!

 

縦横の縮率を把握したら 次は設計です。

 

 

 

 

・・・・・洗い込まれたリアルな古着、その結論的なサイズ感、

超細かく様々な個所を計測し、1950 PATTERNの型紙を分析します。

元となる原型は英国裁断書を参考に上記得た情報を落とし込んで 1stパターンの完成です。

シーチングでトワルを組んで確認、若干 型紙修正を得てMASTER PATTERNが引けました。

 

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更に次は このMASTER PATTERNに縮率を落とし込んで また引き直しです。

細かなパーツ含め、縮率が加味されたパターンを全て引きます。

 

これでやっとプロトタイプを仕立てるべく、裁断へ進行できます。

 

文章で書くと早いですが、隙間時間にコツコツと、、、、、

時間は相当掛かります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・プロトタイプ、やっと仕立て上がりました!

 

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BUSH JACKET ② でのリアルな古着と見比べてみて下さい、かなりの自信作です!

再現者が技術を持ったオタクであればある程に 深度が違いますよ(笑)。

 

結論 3サイズ展開しますが、これはマスターとなる中間サイズです。

そして私自身が着用しますし、洗濯も致します。

着心地や動きやすさ、そしてエイジング含め 全てを検証して参ります。

(ですが寒すぎて まだ試し着くらいですが、、、。)

 

 

BUSH JKは完成品を洗濯して縮める事がミソとなります。

という事は、製作段階で出来る限り縮めたくはないのですね。

故に、水もスチームも一切使わず ドライアイロンのみで仕立てます。

 

これはコットン(植物繊維)だから出来る事であり、

熱だけでも多少縮むでしょう。

サラリと仕上げる必要があります。

 

 

では、取りあえず プロトタイプは私が仕立てるので全てハンドという事になりますが

生み出される過程もご覧頂きましょう。

 

本当に極一部のチョットした所だけ、、、、グレードアップしています。

 

 

 

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各パーツの接ぎ目(縫目)は織り伏せという手法により強度と共に、

裁ち目を綺麗に隠す縫い方になります。

ドレスシャツの脇や袖下などに施される縫い方であり、それの幅広版ですね。

工場さんでは専用のミシンが有るのでスルッと簡易に出来ますが、

ハンドだと一度地縫いして縫代を折って巻き込んでステッチ押さえ、、、

という流れになります。

 

時間が掛かります、だからこそ釦ホールなどに同じく

マシーンが開発されるのですね。

これにより 大量生産=安く出来る という事になります。

 

この写真は既に脇入れです。

前身頃は各ダーツ処理、力芯当て、

ポケット付け、身返しで前返しされています。

 

裾には小さなサンドベンツ、背中の左右にはプリーツが畳まれ、

肩ヨークとも既に合体されています。

 

 

 

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脇織り伏せ & サイドベンツ

これら沢山の写真は中間工程さえも工場さんへ渡せます。

ただ、あちら様も勿論プロですから大抵の物・事はサンプルを見れば分かります!

(ですが、仕事上では縫製仕様書も改めて作成しなければ成りません。)

 

 

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ハンドだと取りあえず躾してしまいますね、、、。

勿論 リアルな古着に全く同じ作りです。

全ての工程に付き 綺麗に、丁寧に、正確に出来ますが、時間が掛かります。

 

工場さんでは これらをどれだけ効率良く綺麗に早く作れるのか、

ここに頭を使います。

 

 

 

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左側胸ポケット、左上の楕円はアームホールであり、白糸の印は袖付けに使う合印です。

 

フラップの両端には閂を入れました。

古着は省略されていますが、やはり入っていた方が見栄え含め

実用的にも良いに決まっているので取りあえず入れますね!

釦ホールもマシーンが無いのでハンドホールになります。

スーツ等はシルクの糸を使いますが、これはもっと強度があって

シルクの様に光沢感もないスパン糸を使用します。

 

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左前身頃フロント、及び腰ポケットフラップが見えます。

こちらにも閂を。

フラップ等の角丸自体もR加減を忠実に!

 

 

 

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胸・腰ポケットも、蓋を捲ればポケット口に補強の閂です。

本当に使う事を前提とすれば 閂は入れるべきです。

 

 

 

 

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古着のオリジナルをイメージに、今回ネームも作りました!

拘りはですね、生成りの綿地で 敢えてチープなプリントのネームです。

古着もみなそうですが、織りネームと違い 洗濯でどんどん字が薄くなるでしょう。

それが、それで良いのです!

 

2022 これは開発、製作されたという年号ですが

ブロードアロー物にもみな製造年、工場名と共に責任もって記載されています。

 

 

 

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左前身頃裏側です。

胸部、腰部のポケット口に補強用の共地力芯の帯が

前端から脇まで付けられています。

これは主体となる地の生地がデニムの様に頑丈でない限り

補強の為に行われる手法であり、サープラスやワークエアでも

頻繁に見受けられる事でしょう。

 

 

 

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クズリさん製のセルラーコットン、素晴らしい雰囲気です。

通気性の高さもオリジナルにそのままです。

 

 

 

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左右前身頃、後身頃が合体し、次は肩入れです。

肩が結合するとアームホールが生まれます。

これで7合、8合目位まできました。

 

 

 

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各ポケットはですね、、、外回り量が加えられて据えています。

ハンドだと 当たり前の行為であり、呼吸するかの様に普通な事柄です。

こういった言わねば分からぬ小さな技術が自然に内蔵されていると言えます。

 

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ウエストベルトも予め作っておきます。

このハトメ(菊穴)もマシーンが無いのでハンドでかがります。

 

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袖も同時進行しておきます。

バレルカフスにケンポロでシャツの様に腕まくりがしやすいディテールとなっています。

ここはかなり機能性向上に貢献した1950年型の進化ですね。

 

 

 

 

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当店ドレスシャツのケンポロ(丸ポロ)袖開き止りにも閂が施されていますが、

こちらも当然閂を入れておきます。

袖のアウトシームになぞる様 袖開きが作られています。

 

 

 

 

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袖が出来ました。

袖山は低く、かなり腕が上げやすく動きやすい設定です。

シャツの袖は1枚袖ですが、こちらは2枚袖でジャケットに近く 腕に伴った緩い

『くの字』形状を描け、シャープで綺麗なシルエットを生み出します。

 

これ、、、私個人分なので 袖丈は長いです!

自分に合わせてありますが、既製サイズはもう少し短く。

 

また、私は右肩下がりですが こんな所もちゃっかり

右肩下がりで仕立てられているのでした(笑)。

 

 

 

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肩を入れ、袖を付け、そして衿を付けました。

最後にベルトを付けて組み上がりです。

 

 

 

 

 

 

ベルトも付けました。

バックルは、2話目でも書きましたが 金属製は重過ぎ、強過ぎ、BUSH JKにはパワーバランスが著しく合いません。

その支障(解れ・破けなど)が古着には多く出ている個体が沢山あります。

 

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故にここも変更箇所であり、軽くて丈夫で見栄え良くテイストが合うものへ。

レザーでトリミングされたバックルは

英国サープラスガーメントにちなんで2爪です。

トレンチコートなどでも多く採用されているタイプのバックルですが、

あちらは1爪ですね。

このバックル自体はベルト裏側のボタン一つで簡単に

着脱出来るので、洗濯時には外します。

古着もそうなっているので着脱は楽な分、

古着としてはバックル紛失個体がやはり多いです。

 

そして このウエストベルト、背中から脇までBODYに縫い付けられています。

縫い止められていないベルト先は動き、

遊んでいるので縫い止まりには随分と力が加わります。

(バックルが重ければ尚更ですね。)

 

縫い止め部は力芯を兼任させる為 脇ダーツの縫代を有効利用しつつ、

ステッチワークでも補強工夫を施し、更に閂で万全に

目立たぬグレードアップを図っております!

 

 

 

 

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内側衿腰には衿吊りループをオリジナル同様につけてあります。

この衿腰部のみ、実は共地の力芯を抱かせているので

返り具合・落ち着きに伴う安定性が向上されています。

ここにも目立たぬ工夫とテクニックを!

 

 

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やっと、やっと完成です!!!

 

 

 

 

 

 

先ず 下記は『古着』であり、柔らかくて良い意味でクタっとしています。

リアルでオリジナルのガーメントであり、1967年製です。

 

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年代と工場が違えば同じ1950 PATTERNでも多少違いがあります。

これは工場さんのレベルや価値観の違いがモロに出ています。

この1967年製 古着をメインに 2話目を御紹介致しました。

 

 

次の写真が『自作のプロトタイプ』です。

 

 

 

 

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完成し、1回洗濯しました。

洗い加減はまだまだこれからですし、

着込めば着込む程にクタっと感が増してくる事でしょう。

着るのが、育てるのが楽しみでなりません!

無から やっとここまで来ました。

 

 

 

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最後に小さなアップデートをもう一つ、

プロトタイプには顎グセを入れました。

1950 PATTERN以前の物は顎グセが入っていましたし、

やはり入っている方が立体的でもあり身体に馴染みます。

他にも別のメリットがありつつ、この縫目一本で格好良さが増します。

(と思っています!)

 

それ以外はかなり忠実です。

古着の釦にかなり近い英国製の釦をわざわざ取り寄せて採用しています。

 

釦も似寄りの国産製が多々あるのですが、微妙に違うのですね。

なのでコスト高にはなりますが 自己満含めて英国物で!

 

 

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脇ダーツはアームホールまで到達していません。

脇下が無駄にゴロゴロと堅くなる事も無く、スッキリとしますよ。

アームホール自体も織り伏せ始末なので 出来れば厚くなる縫代は軽減したい所です。

 

 

 

 

 

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ベルトを止めていない感じです。

ベルトを止めず 邪魔である様なら、腰ポケットに突っ込んでも良いですし、

背中で留めてしまうもの有りとはなります。

トルソーが小さいので あまりシルエットが出ませんが、

結構なシェイプがカット的に入っています。

 

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内側は見事なまでにスッキリとシンプルです。

便利な内ポケットもありません。

縫代は全て織り伏せ含めシャープに始末され、勿論裏地も無く、肩パッドも無く、

共地力芯はありますが 当然接着芯などは絶対に使いません。

(勿論 量産品もです!)

究極にシンプルで正にシャツジャケット、地肌に直接でも着用出来ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・如何でしたでしょうか。

 

既に工場さんでも この私製プロトタイプなるサンプルもお渡しし、

試作反の生地で 1stサンプルを作って頂きました。

 

上手くて小回りも効き、腕が良いのでこういった面倒臭いサープラス物も

手掛けている素晴らしい工場さんです。

 

これから本生産が始まります。

 

サイズ展開は 5 ・ 7 ・ 9 の3サイズ展開です。

ネームには参考値としてオリジナルに同じく胸囲・腰囲の数値が入っていますが

分かりやすく S・M・L と御認識下さい。

 

 

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店頭デビューは4月か5月頃を予定しております。

お値段もまだ決まっておらず、これから計算しますが

【小ロット生産】これが響いてしまうのは否めぬ事実ながら、

こんなにも高い復刻率のBUSH JKは絶対に無い筈です。

 

食材たる生地などもそうですが、同じく重要なのはカットです。

表層的なデザインやバランス、ディテールを追っかけたレベルだけであれば

探せばもっと安価でいくらでも見付けられるでしょう。

 

しかし、BESPOKE TAILORが生み出した物はあまり無いと思います。

私が好きで生み出す分、それだけ深く拘りが満載されています。

繰り返しになりますが、オタクな技術者だからこそ 深度のレベルが段違いの筈です。

 

現時点では サイズ 7(M)でしたら店頭でもご試着頂けますので

ご興味が御座いましたらお気軽にお声掛け頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

BUSH JACKET ④ では、

このアイテムの幅広い活用性(着こなし)を御紹介しようと思っております。

 

今春デビューです 、是非ご期待下さいませ!!

 

 

 

 

 

では、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
Bespoke Tailor Dittos.