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Bespoke Tailor Dittos.
  • 【 BUSH JACKET ③ 】

    2022.01.25 Bespoke Tailor Dittos. STYLE

    【 BUSH JACKET ③ 】

          まだまだ寒い1月の後半では御座いますが、 2月にも入れば巷では春物の立ち上がり商品が並び始める事でしょう。   今週は、BESPOKE TAIOIR が生み出す当店初となる既製服として いよいよ今春デビューに向け 着々と準備が進んでおります 【 BUSH JACKET 】の続きを御紹介させて頂きたいと思います。           KHAKI BUSH JACKET = 1950 PATTERN =           ・・・・・無から丸ごと再生したいガーメント(BUSH JK)があります。 先ずは生地、そして設計(型紙)、縫製仕様を考えつつ準備を進めて参ります。   BESPOKEでは自分が分かれば、出来れば良い訳ですが、 既製品扱いという事は縫製工場さんへ加工委託させて頂く事が 前提となりますので 準備する事柄も山の様に膨らみます。 そして、人様(工場さん)へ拘りと情熱をも含めて 確りとお伝えさせて頂く事がとても重要な事となります。   この度は実益も兼ね、私自身がプロトタイプをこの手で仕立てる事により 全ての具合を確認出来つつ このサンプル自体が工場さんでの大いなる参考ともなる筈です。   という事で、ハンドメイドで仕立ててみました! 兎に角 出来る限り忠実に再現しつつ、ちょっぴり洗練感も出したいです。   リアルガーメント(古着)の持つ歴史から着心地、機能性、格好良さ、そして説得力、、、 全てを踏まえ、兼ね備えつつ それが新品である事。 MY SIZEでHANDMADEであれば正にオフィサー仕様!? (笑)。     今週で3話目となる御紹介ですが、特に2話目を見直して頂けると 再現レベルの高さと拘りが伝わりやすい事と思います。   http://dittos.seesaa.net/article/484599000.html 【 BUSH JACKET ① 】 http://dittos.seesaa.net/article/484793225.html 【 BUSH JACKET ② 】             ・・・・・先ずは生地であるセルラーコットン、 もうAIRTEX社から生地が調達出来れば早いのですが、 調べたところ 随分前から生地は作っていないとの事で、、、、 敢え無く撃沈。 それに代わる生地や素材が出て来てしまったので抗えきれなかったのかも知れません。   私のレベルで調べた限りでは、英国内でセルラーコットンを織ってくれる所を 残念ながら見つける事は出来ませんでした。 ですがイタリアでは既製の生地でも似寄りで良ければ手に入るのです。 そして拘りと共にオーダーとなると、、、ロットが半端では無い事、 そしてイタリア製の生地にしてしまう事自体に抵抗があります。 困りました、突然暗礁に乗り上げます。     !!! であれば、、、。                 ・・・・・世界に誇る日本の技術、、、、 まだまだ様々な分野で日本の技術者、職人の方々が沢山いるではないですか。   日本の尾州といえば奈良時代から繊維産業が盛んな地域であり、 今でも多数の素晴らしい織物工場が頑張って活躍しております。 海外からの評価も高く、超一流メゾンなどにも生地を提供しています。       Kuzuri   見えますでしょうか!? 生地好きの方々には既にお馴染の有名どころでしょう。 1912年創業の老舗 葛利毛織さんに苦労の末 何とか復刻して頂いたのです!!   こいった老舗の長き歴史や技術に裏打ちされた御経験があれば、 生地を分析して同じ様に改めて生み出す事は そう難しい事ではないのでしょう。 現に TAYLOR & LODGE でもそうでした。 ただ、手間とコストも天秤に掛ける必要がありますし、 そもそもこういったセルラーコットンなんて同社でも慣れていない生地である事は明白です。     もう熱意を持ってお願いするしかありませんでしたが、 何とかご協力して頂ける事になりました。 本当に感謝しております。   先ずはAIRTEX社のセルラーコットンを分析すべく、 スワッチ(生地の切れ端)が必要です。 古着のBUSK JKは2点所有しているので、その内の2軍から現物生地を提供させて頂きました。   糸の太さや撚り、織り含めた組織や打ち込み分析、 そして 調達した糸をリクエスト通りに染色、 いよいよ織り上げてフィニッシング、 様々な工程を経てサンプル反が織り上がって参りました。         掛け値なしで この再現力の高さに感動いたしました! とにかく嬉しくて、、、感謝しかありません。 本当に凄いです!   色々と問題やご苦労が多々あった事は言うまでもありません。 渋がる棟梁の声もお聞きしつつ、、、それを乗り越えて頂き、 正に今目の前に復刻されたセルラーコットンがあるのです。 心より感謝しております。   これで改めてこの世にBUSH JKを生み出せます!           BUSH JKを作るにあたり ①②話では沢山のリアルな古着をご覧頂きましたが、 その多くは いや全てはパッカリングがエイジングの味として不可欠でもあります。 オフィサー仕様では無いブロードアロー物は全て既製服であり、大量生産品です。   暑い地方で活躍する服ですから 何度も何度も洗濯を繰り返します。 縮みも大いに貢献し良い塩梅でパッカリングも出てくる訳ですね。   という訳で 私が生み出すBUSH JKも同様です。 洗ったら縮む、だからこそ それを見越したサイズで設計しなければ成りません。   織られた生地の幅は織機により決まります。 長さ JUST  1m で貴重なサンプル反を裁断し、早速 洗濯です!   湯通ししつつ 計2回洗い、これで縮率データをとります。 凄く縮みます、縮みました!   縦横の縮率を把握したら 次は設計です。         ・・・・・洗い込まれたリアルな古着、その結論的なサイズ感、 超細かく様々な個所を計測し、1950 PATTERNの型紙を分析します。 元となる原型は英国裁断書を参考に上記得た情報を落とし込んで 1stパターンの完成です。 シーチングでトワルを組んで確認、若干 型紙修正を得てMASTER PATTERNが引けました。     更に次は このMASTER PATTERNに縮率を落とし込んで また引き直しです。 細かなパーツ含め、縮率が加味されたパターンを全て引きます。   これでやっとプロトタイプを仕立てるべく、裁断へ進行できます。   文章で書くと早いですが、隙間時間にコツコツと、、、、、 時間は相当掛かります。                   ・・・・・プロトタイプ、やっと仕立て上がりました!     BUSH JACKET ② でのリアルな古着と見比べてみて下さい、かなりの自信作です! 再現者が技術を持ったオタクであればある程に 深度が違いますよ(笑)。   結論 3サイズ展開しますが、これはマスターとなる中間サイズです。 そして私自身が着用しますし、洗濯も致します。 着心地や動きやすさ、そしてエイジング含め 全てを検証して参ります。 (ですが寒すぎて まだ試し着くらいですが、、、。)     BUSH JKは完成品を洗濯して縮める事がミソとなります。 という事は、製作段階で出来る限り縮めたくはないのですね。 故に、水もスチームも一切使わず ドライアイロンのみで仕立てます。   これはコットン(植物繊維)だから出来る事であり、 熱だけでも多少縮むでしょう。 サラリと仕上げる必要があります。     では、取りあえず プロトタイプは私が仕立てるので全てハンドという事になりますが 生み出される過程もご覧頂きましょう。   本当に極一部のチョットした所だけ、、、、グレードアップしています。         各パーツの接ぎ目(縫目)は織り伏せという手法により強度と共に、 裁ち目を綺麗に隠す縫い方になります。 ドレスシャツの脇や袖下などに施される縫い方であり、それの幅広版ですね。 工場さんでは専用のミシンが有るのでスルッと簡易に出来ますが、 ハンドだと一度地縫いして縫代を折って巻き込んでステッチ押さえ、、、 という流れになります。   時間が掛かります、だからこそ釦ホールなどに同じく マシーンが開発されるのですね。 これにより 大量生産=安く出来る という事になります。   この写真は既に脇入れです。 前身頃は各ダーツ処理、力芯当て、 ポケット付け、身返しで前返しされています。   裾には小さなサンドベンツ、背中の左右にはプリーツが畳まれ、 肩ヨークとも既に合体されています。         脇織り伏せ & サイドベンツ これら沢山の写真は中間工程さえも工場さんへ渡せます。 ただ、あちら様も勿論プロですから大抵の物・事はサンプルを見れば分かります! (ですが、仕事上では縫製仕様書も改めて作成しなければ成りません。)       ハンドだと取りあえず躾してしまいますね、、、。 勿論 リアルな古着に全く同じ作りです。 全ての工程に付き 綺麗に、丁寧に、正確に出来ますが、時間が掛かります。   工場さんでは これらをどれだけ効率良く綺麗に早く作れるのか、 ここに頭を使います。         左側胸ポケット、左上の楕円はアームホールであり、白糸の印は袖付けに使う合印です。   フラップの両端には閂を入れました。 古着は省略されていますが、やはり入っていた方が見栄え含め 実用的にも良いに決まっているので取りあえず入れますね! 釦ホールもマシーンが無いのでハンドホールになります。 スーツ等はシルクの糸を使いますが、これはもっと強度があって シルクの様に光沢感もないスパン糸を使用します。     左前身頃フロント、及び腰ポケットフラップが見えます。 こちらにも閂を。 フラップ等の角丸自体もR加減を忠実に!         胸・腰ポケットも、蓋を捲ればポケット口に補強の閂です。 本当に使う事を前提とすれば 閂は入れるべきです。           古着のオリジナルをイメージに、今回ネームも作りました! 拘りはですね、生成りの綿地で 敢えてチープなプリントのネームです。 古着もみなそうですが、織りネームと違い 洗濯でどんどん字が薄くなるでしょう。 それが、それで良いのです!   2022 これは開発、製作されたという年号ですが ブロードアロー物にもみな製造年、工場名と共に責任もって記載されています。         左前身頃裏側です。 胸部、腰部のポケット口に補強用の共地力芯の帯が 前端から脇まで付けられています。 これは主体となる地の生地がデニムの様に頑丈でない限り 補強の為に行われる手法であり、サープラスやワークエアでも 頻繁に見受けられる事でしょう。         クズリさん製のセルラーコットン、素晴らしい雰囲気です。 通気性の高さもオリジナルにそのままです。         左右前身頃、後身頃が合体し、次は肩入れです。 肩が結合するとアームホールが生まれます。 これで7合、8合目位まできました。         各ポケットはですね、、、外回り量が加えられて据えています。 ハンドだと 当たり前の行為であり、呼吸するかの様に普通な事柄です。 こういった言わねば分からぬ小さな技術が自然に内蔵されていると言えます。           ウエストベルトも予め作っておきます。 このハトメ(菊穴)もマシーンが無いのでハンドでかがります。               袖も同時進行しておきます。 バレルカフスにケンポロでシャツの様に腕まくりがしやすいディテールとなっています。 ここはかなり機能性向上に貢献した1950年型の進化ですね。           当店ドレスシャツのケンポロ(丸ポロ)袖開き止りにも閂が施されていますが、 こちらも当然閂を入れておきます。 袖のアウトシームになぞる様 袖開きが作られています。           袖が出来ました。 袖山は低く、かなり腕が上げやすく動きやすい設定です。 シャツの袖は1枚袖ですが、こちらは2枚袖でジャケットに近く 腕に伴った緩い 『くの字』形状を描け、シャープで綺麗なシルエットを生み出します。   これ、、、私個人分なので 袖丈は長いです! 自分に合わせてありますが、既製サイズはもう少し短く。   また、私は右肩下がりですが こんな所もちゃっかり 右肩下がりで仕立てられているのでした(笑)。         肩を入れ、袖を付け、そして衿を付けました。 最後にベルトを付けて組み上がりです。             ベルトも付けました。 バックルは、2話目でも書きましたが 金属製は重過ぎ、強過ぎ、BUSH JKにはパワーバランスが著しく合いません。 その支障(解れ・破けなど)が古着には多く出ている個体が沢山あります。     故にここも変更箇所であり、軽くて丈夫で見栄え良くテイストが合うものへ。 レザーでトリミングされたバックルは 英国サープラスガーメントにちなんで2爪です。 トレンチコートなどでも多く採用されているタイプのバックルですが、 あちらは1爪ですね。 このバックル自体はベルト裏側のボタン一つで簡単に 着脱出来るので、洗濯時には外します。 古着もそうなっているので着脱は楽な分、 古着としてはバックル紛失個体がやはり多いです。   そして このウエストベルト、背中から脇までBODYに縫い付けられています。 縫い止められていないベルト先は動き、 遊んでいるので縫い止まりには随分と力が加わります。 (バックルが重ければ尚更ですね。)   縫い止め部は力芯を兼任させる為 脇ダーツの縫代を有効利用しつつ、 ステッチワークでも補強工夫を施し、更に閂で万全に 目立たぬグレードアップを図っております!           内側衿腰には衿吊りループをオリジナル同様につけてあります。 この衿腰部のみ、実は共地の力芯を抱かせているので 返り具合・落ち着きに伴う安定性が向上されています。 ここにも目立たぬ工夫とテクニックを!         やっと、やっと完成です!!!             先ず 下記は『古着』であり、柔らかくて良い意味でクタっとしています。 リアルでオリジナルのガーメントであり、1967年製です。     年代と工場が違えば同じ1950 PATTERNでも多少違いがあります。 これは工場さんのレベルや価値観の違いがモロに出ています。 この1967年製 古着をメインに 2話目を御紹介致しました。     次の写真が『自作のプロトタイプ』です。             完成し、1回洗濯しました。 洗い加減はまだまだこれからですし、 着込めば着込む程にクタっと感が増してくる事でしょう。 着るのが、育てるのが楽しみでなりません! 無から やっとここまで来ました。         最後に小さなアップデートをもう一つ、 プロトタイプには顎グセを入れました。 1950 PATTERN以前の物は顎グセが入っていましたし、 やはり入っている方が立体的でもあり身体に馴染みます。 他にも別のメリットがありつつ、この縫目一本で格好良さが増します。 (と思っています!)   それ以外はかなり忠実です。 古着の釦にかなり近い英国製の釦をわざわざ取り寄せて採用しています。   釦も似寄りの国産製が多々あるのですが、微妙に違うのですね。 なのでコスト高にはなりますが 自己満含めて英国物で!       脇ダーツはアームホールまで到達していません。 脇下が無駄にゴロゴロと堅くなる事も無く、スッキリとしますよ。 アームホール自体も織り伏せ始末なので 出来れば厚くなる縫代は軽減したい所です。             ベルトを止めていない感じです。 ベルトを止めず 邪魔である様なら、腰ポケットに突っ込んでも良いですし、 背中で留めてしまうもの有りとはなります。 トルソーが小さいので あまりシルエットが出ませんが、 結構なシェイプがカット的に入っています。                       内側は見事なまでにスッキリとシンプルです。 便利な内ポケットもありません。 縫代は全て織り伏せ含めシャープに始末され、勿論裏地も無く、肩パッドも無く、 共地力芯はありますが 当然接着芯などは絶対に使いません。 (勿論 量産品もです!) 究極にシンプルで正にシャツジャケット、地肌に直接でも着用出来ます。                     ・・・・・如何でしたでしょうか。   既に工場さんでも この私製プロトタイプなるサンプルもお渡しし、 試作反の生地で 1stサンプルを作って頂きました。   上手くて小回りも効き、腕が良いのでこういった面倒臭いサープラス物も 手掛けている素晴らしい工場さんです。   これから本生産が始まります。   サイズ展開は 5 ・ 7 ・ 9 の3サイズ展開です。 ネームには参考値としてオリジナルに同じく胸囲・腰囲の数値が入っていますが 分かりやすく S・M・L と御認識下さい。       店頭デビューは4月か5月頃を予定しております。 お値段もまだ決まっておらず、これから計算しますが 【小ロット生産】これが響いてしまうのは否めぬ事実ながら、 こんなにも高い復刻率のBUSH JKは絶対に無い筈です。   食材たる生地などもそうですが、同じく重要なのはカットです。 表層的なデザインやバランス、ディテールを追っかけたレベルだけであれば 探せばもっと安価でいくらでも見付けられるでしょう。   しかし、BESPOKE TAILORが生み出した物はあまり無いと思います。 私が好きで生み出す分、それだけ深く拘りが満載されています。 繰り返しになりますが、オタクな技術者だからこそ 深度のレベルが段違いの筈です。   現時点では サイズ 7(M)でしたら店頭でもご試着頂けますので ご興味が御座いましたらお気軽にお声掛け頂けましたら幸いです。         BUSH JACKET ④ では、 このアイテムの幅広い活用性(着こなし)を御紹介しようと思っております。   今春デビューです 、是非ご期待下さいませ!!           では、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。 今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。                      

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  •  【 BUSH JACKET ② 】

    2021.12.14 Bespoke Tailor Dittos. STYLE

     【 BUSH JACKET ② 】

          クリスマスを目前に、 新橋駅前のSL列車もイルミネーションで盛り上げてくれています。 様々に変わる光の色を纏うSLの運転席にはサンタさん!               今週は英国のサープラスガーメントである BUSH JACKET:第二弾をお話させて頂きたいと思います。 皆様、、、ついてきて下さっているでしょうか!!     = 初回をお見逃しの方は 是非下記リンクよりご覧下さいませ。= http://dittos.seesaa.net/article/484599000.html 【 BUSH JACKET ① 】           軍服は様々な環境や試練により次々と進化をして参りました。 現代のスーツもルーツは軍服です。   さて、WW2時含めKHAKI DRILL という カテゴリーの中にBUSH JACKETが存在し、 これから御紹介するのは主に暑き地方に適するよう特化した進化を成し遂げたモデルとなります。 おさらいからご覧頂きます。         1940年 KHAKI DRILL:BUSH JACKET   ある程度のバリエーションも存在しますし、自身用に仕立てられたオフィサー仕様とも成れば より広がるとも言えますが40年代では大体 上記写真の様な仕様となるでしょう。 合わせるトラウザースやショーツの多くは、かの有名なグルカショーツ型も多く存在しました。   上着の特徴ですが、これはかなりのTAILOR MADEです。 当時は現地での仕立て屋さんで誂えられていた事実もあります。 ノッチドラペル(下衿)に第一釦は無く、留める仕様にはなっていないものの 留めた場合に学ランの様な詰め衿型(スタンドカラー)になるのが 垣間見る事が出来るでしょう。 返り衿の原型を彷彿させてくれるバランスです。   フロントは4釦、肩章が付き袖は比較的に現代的なジャケットスタイルですね。 袖口には装飾カフが付けられた筒型の袖です。   顎ダーツ、そして胸・脇ダーツによりウエストを絞り込み、 シェイプの効いた立体的なカットが施されています。 胸にはアイコン的なカモメ型フラップ、 そのポケットにはボックスプリーツが畳まれています。 とても大きな腰ポケットには、横と底辺にマチが設けられた ベロウズポケットに釦付きのフラップが付きます。   生地はとても丈夫なコットンドリルであり、 過酷な環境にも適応し、洗濯にも適していますね。 同時に軍服には多いのですが、釦も全て安易に取り外す事が可能です。         では、これらをベースに 1950年代へ進みます。 どの様な変化・進化があったのでしょうか。           KHAKI BUSH JACKET 1950 PATTERN     これは英国の官有物として開発・生産された既製服であり ブロードアロー物となります。 先ず大きく違っているのは素材です。 トロピカルユニフォームの素材として軽量かつ 通気性に特化したセルラーコットンが採用されています。   『 セルラーコットン 』 セルとは細胞との意味があり、 規則的に空いている穴の様を指したメッシュ系のコットン地の総称と御理解下さい。   衿は所謂オープンカラーになり、 同じく第一釦は無いですから締めることを想定されていません。 肩には肩章が付き、袖付けは折り伏せ縫い、ある意味 より簡易で丈夫になっています。 胸のポケットは40年代とほぼ同じですが、生地が薄くなった為 身頃のポケット口付け部の裏側に『力芯』となる 共地の帯を宛がい二重にして補強されています。 腰ポケットに付いてはマチが排除され、釦も省略されました。 力芯となる裏帯は胸に同様です。   袖口の仕様はシャツの様な形態となり、ケンポロを付け、バレルカフスが付きます。 これで何倍も腕がまくり上げやすくなり 大変重宝されたそうです。   胸・脇の各ダーツはありますが、顎ダーツのみ省略されています。 また、腰をキュッと締めるベルト、、、 大きな特徴として、このベルト自体が後身頃に縫い付けられています。 外れませんから無してしまう心配がないですね!   こうして見ると よりシャツジャケットに近付いたとも言えます。 正にその通りであり、着用される環境と着用者の声がそうさせているのです。         1971年 かの御方も着用されておりますね。 正に1950 PATTERN型です。 この様にインナーや地肌へシャツの様に着ても快適なのであり、 それだけ環境が暑いとも言えるでしょう。 同時に、この1950型がそれなりに長きに渡り着用されていた事も窺えますね。           では、リアルなVINTAGEを前に より具体的にディテールなどもおって参りましょう。           全貌です、、、、私には格好良さを通り越し、美しささえ感じられます。 この類では正に究極の完成度だと思っています。 こう見ると、世間的なサファリJKと同じに見えるでしょう。 用途や意味合いは同じですが、私にとってBUSH JACKETはBUSH JACKETなのですね。   パッカリングが雰囲気をより盛り上げます。 パッカリングとは縫い目部分の縮みによるシワシワです。 これは意図的にミシンで出す方法もありますが、 そもそも粗く高速で縫うとなりがちでもあります。 そしてもう一つ、洗いによる縮みが原因により更にパッカリングが大きくなります。 生地が薄ければより顕著であり、エイジングの歴史を感じさせてくれます。   これらのサイズ感は新品時から相当縮んでいる筈であり 見越した設定が成されていなければ サイズ設定の意味が無くなってしまいます。           この個体(VINTAGE)のタグです。 1950 PATTERN KHAKI BUSH JACKET SIZE 7   型は1950年型の型紙(モデル)ですが、1967年:F.FRYER製である事が記載されています。 ブロードアローのマークも確りと付いていますね。 かなり程度の良い古着であり、サイズ感も私自身にピッタリの適合サイズです。       余談となりますが、、、1957 PATTERN というものありまして、 このBUSH JKは更にどの様な変化をしたのか!? 当時 このシャツジャケット型BUSH JKは裾をトラウザースに仕舞って 本当のシャツの様にも着用されていたそうです。 1957年型では そういった部分も踏まえてでしょうが、腰ポケットが排除され、 ウエストのベルトは取り外しができる様になりました。 それはそれでも別に良いのですが、シャツも有りましたし、半袖のBUSH JKもあります。 しかし、古着での半袖は長袖をお直しでカット・処理した可能性もありますね。   ( 全てを詳しく追いかけられるほど詳しくはないので その辺りはご了承頂けましたら幸いです。 )       1940年代から この様な流れを見た時に、 1950年代モデルが私にとって一番琴線に触れ ツボにはまると言う訳で御座います!             ・・・・・では生地から見て参りましょう。 分かり易く言えばメッシュ地ですね。 かなりの通気性を誇り、とても軽いです。 この写真は、左胸部の裏面です。 右端にフロントの釦ホールが見えますね。 そのフロント部分は身返しがあるので、生地は2重になります。 横方向にも2重部分がありますが、ここが胸ポケット口部であり 力芯として裏当てがされている所になります。   英国に AIRTEX社 というメーカーがあり、 70年代位までかなり幅を利かせて活躍していたメーカーです。 同社の優れたAIRTEXという素材(生地)は、下着からスポーツウエア、 そしてこの様に軍服まで多くに採用されていました。           ・・・・・少し寄り道を致します。 私物の古着は 英国製の半袖スポーツシャツです。 昔のシャツはプルオーバー型が主流であり、 被りますから身幅もゆったりとしていなければ成りません。 シャツは被り仕様(プルオーバー)をやめ、現代の様なフロント全開きに移行し 身体のサイズに合わされる様になりました。   着丈も長いです、長いのが普通であり 今のシャツは異様に短すぎですよね。 着用スタイルの想定が違う訳ですが、、、この変にしておきましょう。       生地をご覧下さい。ザックリとしたメッシュ地ですがカノコ編みとかでは無く織物です。 所謂セルラーコットンであり、これもAIRTEX社の生地ではないでしょうか。   タグをご覧下さい。 パックマン兄弟が見えますね! パックマンにしか見えませんが、 CC41 と記載されたマークなのです。   WW2の最中、物資不足を危惧した政府が物作りへの制限を掛けました。 1941年から始まった Controlled Commodity=管理された商品 という事で CC41 です。 1941年から1951年まで続き、審査を通った物が このマークを付けて販売されていたという歴史があります。   もう20年くらい前に購入したとても大事なシャツですが、 自ずと40年代製という事がはっきりと分かる訳です。           ・・・・・では、本題へ戻ります。 じっくりと味わい深きリアルをご覧下さいませ。                           2-PRONG BUCKLE ウエストベルトに付く 2爪タイプの真鍮製バックル、とても英国らしさに溢れます! ゴツくて確り、とても丈夫で壊れる事も無さそうです。 しかし、このバックルは BUSH JKの素材がDRILLならまだ良いのでしょうが、 軽量化されたAIRTEXには重過ぎ、強過ぎるのですね。   腰のベルトは身頃に縫い付けられていると説明しましたが、 この縫い付け止まりに重さと力が掛かりますので直ぐにミシンが解れたり、 切れたり、生地にダメージを与えたりとしてしまう難点があります。   ただ、流石と言うべきは バックル自体もベルトから釦で取り外しが 出来る様になっていますが、当然ながら洗濯への考慮ですね。 ですが、多くの古着ではバックルが無くなっているものが多い事もよくある事実なので、 自分で適したバックルを探して付け直す事も安易に楽しめるでしょう。         袖口は限りなくシャツ型に近付きましたが、 袖自体はスーツの上着の様に2枚袖を採用しており、 緩やかな『 く 』の字のシルエットを描きます。 またケンポロに釦が付きますが、 一応カフスの形態なので袖丈直しも安易に行えますね。         美しい背中のデザインを見てみましょう。 緩やかなカーブに描かれた肩ヨーク、 両サイドにはアウトプリーツが畳まれ これは裾まで続いています。 (途中 ウエストベルトの縫い付けで縫い止められます。)   とてもエレガントな後姿であり、サイドのプリーツはアクションプリーツの役目となって 腕の可動範囲を広げ より動きやすくなっていますし、 裾部でも動きに対し追従できる分量が多いという事になります。       写真センターの縦襞が上記プリーツにあたります。 その左には折り伏せ縫いされた 脇縫い目が見えます。 小ぶりなサイドベンツもついており、裾周りは両サイドの襞分、 そしてベンツの開閉により機動力が更に増されています。             ・・・・・如何でしたでしょうか。 この名品は 多くのブランドやメーカー、デザイナーにサンプリングされ 市場にはイメージを寄せた似寄りが溢れております。 それだけ機能的で格好良く、完成されたデザインだという事です。     サープラスガーメントは既に民間でも普通に愛用される様になり トレンチやダッフルコート、数々のフライトジャケットや軍パン、 セーラ―カラーなどは女子の学校制服にまで、、、挙げればキリがありません。     そして、日本の夏を考えて下さい。 最近ではリモートワーク含め更にカジュアル化は進み、地球は温暖化と言われ、 年々夏が長く辛くなる昨今 これほどに適した洋服はありません。             ・・・・・これはリアルなヴィンテージ衣料です。 リアルが持つ迫力と説得力に勝るものはありません。   まだ私が若かった頃、歴史と共に紳士服を学ぶ上で 紳士服の黄金期とも言われる1930年代の美しきスーツ達へ辿りつきました。   様々な古着を見てきましたし、購入して喜んで着てもいました。 ですが、所詮自分のサイズでは無く、中古であり、、、、 これら美しきスーツを自分のサイズで、自分の手で、 技術で忠実に生み出したいと当時は強く誓ったものです。       そして1950 PATTERNのBUSH JACKETが欲しい、、、、、   リアルな古着は愛用しつつも、自分のフィルターを通し そのリアルに忠実で説得力の頗る高い服を仕立てたい。   サンプリングされる方々の多くは技術者ではありませんので、そ れこそ服を自分で生み出せるオタクなテーラーが復刻したら 如何でしょうか。       構想10年、やっと着手し 新たに生み出します!!       軍服ですからそれなりのタイドアップも似合う訳ですし、 ジーンズなどにも気軽に合わせられます。 天候を気にせず、汚れを気にせず、汗も気にせず 手軽にご家庭で洗濯できてしまう事。 これこそある意味では究極な春夏服でもあるでしょう。               たくさん見て頂いて参りましたが、このBUSH JKは芯で成形もされていませんし、 むしろシャツに近く、ある程度身体に合っていなくても一向に構いません。   だからこそサイズ展開はあれど 大量生産にも向く訳ですね。   便利な内ポケットなどもありません、少しでも薄く、軽く、そして安価に作る事、 これが課され デザインされたこの服のポジションなのです。     自分で仕立てたなら ある意味オフィサー仕様ですね(笑)。     先ずはAIRTEXなる素材、、、、、 そしてサンプル兼 自分用に仕立てて検証、改めて設計(型紙)展開です。   準備は着々と進んでおります。         2022年 BESPOKE TAILORである当店が 初となる既製服を展開致します!!   御共感下さる方々がおられましたら心底お勧めさせて頂きたく、 自信を持って御提案させて頂きます。       デビューは来年春頃です。   皆様、どうか何卒宜しくお願い申し上げます。              

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