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生地に付いて

Bespoke Tailor Dittos.
  • 【 ESCORIAL:JACKETING 】

    2021.06.15 Bespoke Tailor Dittos. 生地に付いて

    【 ESCORIAL:JACKETING 】

        皆様 こんにちは。 もう晴れれば夏のように暑いですが、関東甲信もいよいよ昨日には梅雨入りが発表されました。   そんな6月では御座いますが、当店BLOGはAWのお話で御座います。           色や柄も多彩に、魅力的なコーディネートをされた装いは正に三者三様です。 御三方共に上手くグレーを取り入れていますが、 無彩色であるグレーは何でも受け入れ 調和という恩恵に授かれる万能色でもあります。 地味で控えめでもありながら、懐の大きな色であり 紳士服の装いにも欠かせません。           先週はエスコリアルの上着を主体にした N様:ODD 3P のご注文を紹介させて頂きました。 至福なエスコリアルはとてもウール(羊)だとは思えぬ程に 優しい肌触りでソフトな風合いがお楽しみ頂けます。   今週は2021年AW用として、 素晴らしいエスコリアルの生地を入手致しましたので是非お勧めさせて頂きます。 以前にもエスコリアルに付いては御紹介しておりますが、改めて簡単に触れておきましょう。         北アフリカのMAHGREB(マグリブ・マグレブ)地方を起源とする独特で小さな羊がいました。 14世紀 スペインの王室はこの種をエスコリアル宮殿内に向かい入れる事になります。 これが現代にいたる呼称になっている訳ですね。 (その後、この種は一度絶滅したとされていました。)   この独特な羊はメリノ種の羊と比べ個体がとても小さく、 メリノ種の1/3 程度しか毛を採取できません。 そして、その特徴的な原毛は『繊維の宝石』と称されるカシミアより細く、 更にはコイル状のばねの様にカールしており これがナチュラルなストレッチ性を生み出しています。 ウールの原毛で良く使われるSUPER表記で換算すると、 細い毛の部位でみれば SUPER 200レベルの細さに相当するようです。 ウール(羊毛)であってウールではないかの如く 別の特別な獣毛みたいですね。   こんな夢の様なウールが存在し、 今では少しずつ個体数も確保される様になりましたので、 洋服地からニット製品に至るまで様々に見受けられる様になりました。 それにしても まだまだ希少である事には変わりませんし、当然高額でもある夢の服地です。   スペインの王族が独占していた事も頷けてしまいますね。             無彩色によるモノトーンコーデは、ニットでのリラックスしたジャケットスタイル。 FLATCAPも加え、装いに締まりもでますし、渋くてとても品を感じられます。           Joshue Elis   PURE ESCORIAL About 350g     先ずは無彩色:グレーによる3者共演です! これら3種は紡毛糸(WOOLEN)よる生地でありボリューム感と迫力が御座います。   織り柄やトーンの違いにより グレーにも様々な個性と表情がある事が分かりますね。   当たる光の陰影も美しく、これも原毛の細さや質の高さからきますので 勝手に滲み出るホテンシャルの高さを垣間見る事が出来ます。           ベーシックなヘリンボーン柄は濃淡の糸遣いを有効に綺麗なニシンの骨模様を表現致します。 堂々と、かつ落ち着きのある存在感です。         ジャケット地であり、紡毛糸という事もあり 柄出しはこの位が丁度良い塩梅です。 スーチングでは梳毛糸になるので 梳毛か紡毛による織り糸の太さにより柄の出方、表現力に差が出ます。 ( 柄の大小は ドレッシー ⇔ カジュアル に対するバランスも表現している事になります。 )         とても綺麗です、、、、、写真では無理ですが、触ればウットリとしてしまう事でしょう。 もう洋服に料理せず、このまま首に巻いても気持ちが良さそうです!               お次は やはりクラシックな バーリーコーン柄。 この生地は先週たっぷりとご覧頂きました N様の上着に同じです。 遠目には無地の様に溶け込みますが、近くではここまで表情を楽しむ事が出来ます。   先の当店仕入れ分は直ぐに無くなってしまいましたので、 追加仕入させて頂いた次第で御座います。           これも素晴らしい! 一見 白黒の千鳥格子の様に見えますが、千鳥格子ではありません!   これは TWO & TWOという織りであり、日本ではヘアラインと言う織に属すようです。 このモノトーンベースへ 何とパープルでオーバーペーンを重ねているのです。   TWO & TWOとは濃淡2色の糸を交互に経糸・緯糸に織る事により 自然に浮き上がった織り地となります。 面白いのは 表側から見ると縦縞に見えますが、裏側は横縞のボーダーになるのが特徴です。   有名なグレンチェック、これは織りを複合させた格子柄ですが 千鳥格子と共に このTWO & TWO(グレンストライプ)で構成されています。 グレンチェックの服をお持ちの御方はご覧になってみて下さい!           高貴なパープル、とても大好きな色ですが ベースの織り地が強いので 良く見れば、、、といったレベルですね。   だからこそ、派手に感じる事も無く 逆にこのパープルを拾って コーデに有効利用できる楽しさを備えていると言えます!   白の織糸を良く見ると、2本引き揃えて織られているのが見受けられますね。             では、次に有彩色での秀色をご覧頂きましょう。 これから2種ご紹介しますが、先の3種より 織糸細く地薄に感じる生地でもあります。   それだけ上品でエレガントに見える上品な生地となります。         Stanley Mills   PURE ESCORIAL ABOUT 340g   タン、そしてネイビー。どちらも欠かせぬ秀色です。 一番使い回しも効く色であり、押さえておくべきジャケットでもあります。   この2種は先の紡毛と違い、梳毛(WORSTED)が使われています。 織糸が細い分 生地も薄くなり、サラッとした印象になります。   ≪ Stanley Mills ≫ 同社はあまり耳に致しませんが、1890年創業のやはり老舗のミルで御座います。 カシミア含め高級な品質の生産が主だそうで プラダやディオールなどのメゾン等との取引きもしているそうです。 このミルも今や大きな組織に属しており、 早々たるメーカーが名を揃えているグループとなります。   このメーカーは、ファーストクラスの品質とサービスをモットーとしており 知名度は低いものの、隠れた高級服地ミルですね。           この写真より もう少し黄色味があるでしょうか。 日本語だと 小麦色がしっくりと来ます!           とても表情豊かな顔立ち、実は小格子柄であり 小さなバーリーコーン柄となります。 穂は小さく、バーズアイっぽくも見えますね。           綺麗に揃い実に美しい柄出しです。 色味からも秋を感じさせてくれますし、柄からも、、、、。 この上品なバーリーコーン柄、 これに合わせて下物はコーデュロイなど如何でしょう。 正にカントリーを彷彿させる鉄板なコーデの一つでもあります。             次は これまた美しいネイビーです。 シットリとしてしなやか、至福の肌触りは暖かく 万能なネイビージャケットをこれで誂えたらどんなに幸せな事でしょう。         典型的なツイル織り、 ほんのり赤味のあるそのネイビーはビジネススーツのネイビーと一線を画します。 濃ければ濃い程に、要は黒に付かい程に色としてドレッシーな扱いになります。 ネイビージャケットの色は濃過ぎず青味の感じられるネイビーこそお選び頂く色でもあります。     ネイビージャケット、ネイビータイ、何着・何本あっても欲しくなります。 季節やシーン、素材感含め多彩なネイビーをご堪能下さいませ。       では最後に これまたクラシックで美しい格子柄:カントリーチェックをご覧下さい。             Reid & Taylor   PURE ESCORIAL About 340g 4-PLY   1839年 スコットランド創業のミルであり、 かつてはMOXONやTAYLOR&LODGEなどに並び、ウールの中で 頂点でもある最高原毛 Golden Bale も扱っていた素晴らしいメーカーです。   同社はスーチングからジャケッティングまで エスコリアルをバンチで抱える程に扱いこなし、多彩なコレクションは群を抜いています。         発色も大変美しく、原毛が細いからこそ 柄出しのきめ細かさが際立ちます。 クラシックなガンクラブチエックにタンのオーバーペーンが重ねられています。 素晴らしき配色による魅力が溢れています。   このカントリーチェックがツィードでは無くエスコリアルである事に意味があります!           ツィード等とは本当に真逆の質感、、、。 大人の上品でスポーティーなジャケットを是非ワードローブに!               ・・・・・如何でしたでしょうか。 羊の毛(ウール)という括りの中でも本当に様々なウールがあります。 エスコリアルとツィードが 品種は違えど同じ羊と言う動物の毛であるのです。 (品質表示的にみれば、ESCもTWEEDもG.BALEも みな WOOLです。)         毎度ながら写真での色出しが難しく、 ネイビーの色や先のグレーなどもトーンのバリエーション含め この写真だと比較的リアルに出ていると思います。   ですが、やはり生で、御自身の目で見て感じて下さい。 その素晴らしい質感にやられてしまうでしょう。   またエスコリアル未経験の方々におかれましては、今回の出物仕入は素晴らしいチャンスです!         合わせるウエストコートやトラウザースはお任せください! 迷ってしまう程にお勧めが沢山御座います。   ODDでは組み合わせがかなり多彩に成りますので、 皆様の価値観により 最適をお勧めさせて頂きます。       では、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。 今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。          

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  • 【 春夏用のお得なお勧め生地 】

    2021.04.13 Bespoke Tailor Dittos. 生地に付いて

    【 春夏用のお得なお勧め生地 】

          静かなる存在感 凛とした佇まい クラシックにして王道たるネイビースーツはバンカーストライプ。 春夏用にふさわしくキッドモヘアが主体ながら、ほど好く抑制された光沢感。 最早 全く同じ物は織り上げる事の出来ぬ往年の逸品である SUPER BRIO。   http://dittos.seesaa.net/article/480508004.html 【 SUPER BRIO ② 】                 さて、4月の中盤に差し掛かっております。 暑過ぎず 寒過ぎないこの時期は貴重であり、スーツが気持ち良く着られます。 皆様 この春夏用の仕込みはもうお済でしょうか。   今週は特価品として仕入れる事の出来た お勧めの春夏地を御紹介させて頂きます。 このメーカーにしては かなりお買い得なので必見で御座います。           ARISTON (アリストン)というブランドで展開されている イタリアの生地は御存じでしょうか。 随分と認知が進んでおり、取り扱いされるお店も増えてきている事と思います。 当店では扱いの少ないイタリア生地ですし、 初耳の方もおられると思いますので簡単に御紹介させて頂きます。         ・・・・・南イタリアに位置する地中海に面した湾岸都市 ナポリ。 海も山もあり、食も美味しき美しい街である事は皆様も御存じの通りです。   1920年 Ferdinando Imparato氏により ナポリに設立されたマーチャントで御座います。 このインパラート社から展開される高品質で素晴らしい生地に対し、 1996年に【ARISTON】というブランド名を付け 更に展開を広げて参りました。   高品質な生地を求め、主要なミルは【CERRUTI】 【CARLO BARBERA】 【LORO PIANA】をはじめ、そうそうたるミルで織らせています。   同社の生地はイタリアを代表する高級アパレルメーカー (ATTOLINIなど)に生地を供給しつつ、その個性的で品質の高い生地をカット販売 (メーカーでは無く、主にテーラー・サルト等の小口)も展開される様になりました。   イタリアらしい発色の美しき色や柄、高品質な原毛によるスーチングから 様々にブレンドされたオリジナルの生地など やはりイギリスには無い魅力をふんだんに盛り込んでおります。   勿論お好みもあるでしょうし、私も全てのコレクションが好きと言う訳ではありません。 しかし、らしさ溢れ 魅力や個性の詰まった素晴らしき生地達は イギリス製もイタリア製も変わりません。 仕立職人として惹かれたものを、皆様へ御紹介させて頂きたいというものを リーズナブルに仕入れさせて頂いた次第です。   高品質は勿論ながら高級な生地達ですから、、、、 今回のお勧めファブリックは是非お見逃しなく!!           春夏用のサラリと綺麗なダークスーツ地、これはキッドモヘア混です。 50% WOOL 50% KID MOHAIR ABOUT 240g         質の高いキッドモヘアによる光沢感、 ヒヤッとしてサラリと幾分コシもありつつ、 半分はウールなので 柔軟さと相殺された気持ちの良い生地です。   この生地の特徴は何と言っても 独特な色出しにもあり ダークネイビーベースではあるのですが、 どことなくチャコールグレー味も感じられる 深きダークなブルーグレー調の色味にあります。 とても品が合ってエレガントなスーチングで御座います。     盛夏を含めた春夏用のダークスーチングで見れば、 キッドモヘア混のスーツは欠かせぬ存在です。 写真からでも その原毛の良さ、生地としての質の高さが感じ取れる事と思います。 間違い無き御選択の一着となるでしょう。                       お次はストライプ、敢えてアリストンらしい個性的な生地となります。 やや線が太めで確りとしたストライプスーチングですね。   ベースは濃過ぎないグレーであり、重々しさが良い意味で無いのも狙いでしょう。 ベース色がもっと濃ければストライプとのコントラストが強くなって主張が強過ぎますし、 春夏という事も考えれば色での軽さも出したい所ですね。           ミミ帯の色、このセンスですよ!   100% WOOL 240g         綾織の逸品であり、艶やかな光沢感があります。 強きストライプは着用されたその御姿にシャープさを与え、 地色の濃過ぎないグレーは涼しげな印象さえ与えます。   先のモヘア混に同じく、光の陰影が美しく表現されます。 艶っぽい洒落た個性を春夏だからこそ表現されてみては如何でしょうか。   着用する側も気分が高揚しますし、 周りの方々からもパワーを与えられる様なスーツとなるでしょう。         この生地は交織で織られています。 右側の地色が薄い面、これが裏側です。   経糸にチャコールグレー、緯糸にライトグレーを使用しており、 綾織りですから表側には経糸が主体となって表現されます。 その縦糸・緯糸のツートンカラーを縞に使っているので、 表裏で逆転した見え方になります!   ツイル(斜めに走る畝の織地)とツイルの間からは、緯糸のライトグレーが微かに のぞき込む事で織り地に深みと立体感が表情として現れます。                         お次はジャケッティングです。 三者混紡生地は随分一般的に成りました。 この織りネームも3者混用ですね。 しかし、実はこの生地 4者混です!!         50% WOOL 30% LINEN 17% SILK 3% CASHMERE   260g     何て素敵な色なのでしょう、、、、、ウットリしてしまいます。 日本語で言えば 青紫色(藤色)ですね。   リネンらしい節も味わいに、グレンチェックで構成されています。 クラシックな織り柄ながら、色が洗礼されており 涼しげでかなり乙で洒落た色です。   ホワイト(クリーム)のリネンやコットントラウザースを合わせたくなりますね。           主体はウールです。 柔軟性がまず勝ちますので とても柔らかく、 でもリネンのハリ・コシが微妙に入ります。 シルクは光沢感をほんのり与え、 カシミアはスパイスとして より柔らかさを優しく伝えてくれます。   4者の個性が混じり合うと こんな感触に、、、、、。 色も本当に素敵で涼しげでもあり、 大変エレガントで上品なジャケットになる事でしょう。               最後の御紹介となります。 春夏にはやはり欠かせぬシアサッカーの登場です!             先ずこの色味、先のJK地もそうなのですが 高貴なパープル使い、これも所謂藤色ですね。 私の大好きな色でもあり、サッカー地としては珍しいです。   また、サッカー地は この起伏溢れるシボ感が特徴であり、売りな訳です。 昨今のサッカー地はシボが全然出ていない生地もありますが、これは最大級です(笑)。           シアサッカーも好きな生地でして、現在 店頭ディスプレーにも登場しております。 2週に渡り御紹介させて頂きましたシアサッカーのページも ご参考にされて頂ければと思います。   http://dittos.seesaa.net/article/437439735.html 【 SEERSUCKER ① 】 http://dittos.seesaa.net/article/437684692.html 【 SEERSUCKER ② 】   ( このスーツが仕立てられた生地は、 イタリア:SOLBIATI製:100% COTTON(240g)となります。 )                 67% POLYESTER 33% COTTON   230g   先ず シアサッカーは大抵 コットン:100%か、 コットンとポリエステルをブレンドした混紡生地かで分かれます。   コットン:100%は 当然ながら全て天然繊維でもあり、 肌触り優しく風合いも良く、とても気持ちが良いものです。 しかし、デメリットは洗えば(クリーニングなど)縮みますし、 着込めば黄ばみます。 このエイジングを『らしさ』として良しと見るか、そうでないかが判断所です。     ポリエステルが入る事により、 洗っても縮みは抑えられ、強度も増しつつ 更に皺になり辛い。 経年劣化でもある黄ばみもあまり見られず、お値段もお安いのです! 良い事尽くめではありますが、 天然繊維に感じられる優しさは割合程に軽減されると言えます。 言えますが、、、肌着では無いので特に問題と言う訳では御座いません。   双方のメリット、デメリットを踏まえ 皆様の価値観によりお選び頂きます。           兎に角 このシボシボ感、凄いです!! 汗ばんだ体にも張り付かずサラリとして、 もともとシワシワな生地ですから皺も目立ちません。 むしろポリエステルが皺も抑えますので、 脱いで畳み 鞄に仕舞い込んでも全然大丈夫です。 ご旅行などにも最適ですね。     そして捻りあるこの淡いパープル地、これが本当に魅力的で素敵です!     シアサッカーはスーツでもジャケットでも、 是非ワードローブに入れておきたいシリーズです。 この生地はアリストンでありつつ、ポリ主体の安さに加え、 更にお得に仕入れられたので抜群のコストパフォーマンスを誇る事は言うまでもありません!           ウインザー公のワードローブにも当然入っています。 夏を感じる代表格でもありますので是非お勧めで御座います。   タイをされても勿論良いですし、スポーティーなリネンシャツや ポロシャツなどとも気軽に合わせてお楽しみ頂けましたら幸いです。               ・・・・・如何でしたでしょうか。 今回の様にお得な生地達もおりますし、個性溢れる生地達をご覧になるべく 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。             ・・・・・来週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。 本当にお陰様により時間が足りません! 感謝しきりながらも大変恐縮で御座います、、、。   次回は 4月27日(火)を予定しておりますので 引き続き宜しくお願い申し上げます。     どうも有難う御座いました。          

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