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【 Fox Bros:COCKTAIL COLLECTION 】
2024.11.26 生地に付いて
師走を目前に控え、 既に街ではクリスマスや年末・年始への動きが出始めていますね。 寒きこの季節にはなにかと集い、 パーティーなども増えてくる時期ではないでしょうか。 英国王のブラックタイ、とてもエレガントであり 拝絹のカフも素敵ですね。 イヴニングフォーマルでの準礼装として ディナースーツ(タキシード)は ドレスコードでいうと『 BLACK TIE 』になります。 ディナースーツ自体は主にブラック、そしてミッドナイトブルーなどで誂えられますが、 そのポジションにはスモーキングジャケットも含まれます。 ( タキシード、これまた呼称がややこしいのですが、米:タキシード、 英:ディナー、仏・伊:スモーキングと呼ばれています。) そもそも 歴史的にはテールコートを着用した紳士が、くつろいで煙草を吸う際に 別室で着替えられた丈の短いラウンジジャケット型の上着であり、 ベルベットやカシミア、ウール含め色は華やかな色が多く使われていました。 故に現在 皆様がイメージしうるタキシードに固まってきたのは もう少し後の時代となります。 敢えてスモーキングジャケットと呼称したのは、多くの方々がイメージするであろう ブラックの典型的なスタイルと区別したかったのです。 このスモーキング(ジャケット)は色のある例えばベルベットなどを使い、 フロントには釦以外にも コード(組紐)と オリベット(装飾釦=仏語:オリーブ型の小さなトマト)で留める装飾的な仕様など 結構なバリエーションがあります。 上着は色物、ですが下物は黒、、、大雑把に言えば そもそもテールコートのスタイルに 上着だけ着替えていただけなので それ以外は引き継がれている事になります。 今では厳密に言うとテールコートとディナージャケットのトラウザースに付けられる 側章も差別しますし、インナーのシャツやタイなども別です。 ただ この流れを見れば、イブニングでの正礼装と準礼装の 違いや流れが理解しやすいですね。 故に スモーキングジャケット = タキシード = ディナージャケット と 同義語として捉えるのが望ましいと言えます。 また、暑い地方などではホワイトがその役割を担い、 それに準ずるカラーなどで仕立てられます。 これら基本的に共通するのは側章の付いたドレストラ―ザウスなわけですが、 これまたもう少し砕けたパーティーであれば側章付きに拘らずに 色柄ものを合わされたりもする訳ですね。 そのパーティーの格や内容(所謂TPO)により、準礼装(ブラックタイ)たる服装にも 多彩にバリエーションを嗜むといった側面があります。 イラストを見ても、ほぼ共通しているのがブラックタイな訳です。 正礼装は 『 WHITE TIE 』ですから、この『 BLACK TIE 』というのは 準礼装のポジションである装いとして認識すると腑に落ちるかも知れません。 さて、ダンディーで有名なダグラス・コルドー氏が率いるFOX BROSでは 今期AWにおいて新しいコレクションが出ましたのでご紹介させて頂きたいと思います。 冒頭でグダグダと語ってしまいましたが、パーティー文化に疎い日本では 今回のコレクションは『 ⁇ 』と成りかねない展開も含まれるので、 タキシードへの解釈と理解を広げて頂いた次第で御座います。 ダグラス氏の込められたメッセージが少しでも伝わるよう願いを込めて! FOX BROTHERS = COCKTAIL COLLECTION = その名もカクテルコレクション、パーティーで着用される様な ドレス用の生地が多くラインナップされた内容になっております。 FOX社の謳う説明では、『 伝統を再定義する 』 とあります。 英国らしく伝統を重んじながらも、現代的な進化や解釈、 時代の流れに伴い企画されているとも言えましょう。 カクテルを片手に、親しき仲間たちと充実した時間を過ごす為には 装いだって その楽しむべき一つの要素でもあるのです。 ドレスアップはなにも女性だけでは御座いません! では、ダグラス社長の拘りをご覧下さいませ。 『Mr, Douglas Cordeux』 自社の服地をBESPOKEで誂え、 自ら着こなすその様に勝る説得力はありません。 エレガントでとても魅力的、ダブルのロングターンな上着には 英国王の様に拝絹のカフを付けられていますね。 トラ―ザウスはブラックウオッチ、靴はブラックのサイドエラス! 因みにブラックウオッチはタータンチェック、 タータンはスコットランドのトラディショナルであり正装でもあり、 軍服にも採用されていますので どれだけポジション(フォーマル度)が 高いのかが分かりますね。 この写真では分かり辛いですが、この氏の誂えられたブラックウオッチ・トラウザースには 側章も付けられており、予めディナージャケットに合わせる前提である事を 垣間見る事が出来ます。 そして場面を見てください、カントリーサイドですね。 ≪ OFFICER OF THE HIGHLAND LIGHT INFANTRY ≫ 先ずはフォーマル地に欠かせぬBARATHEA(バラシア)での多彩な展開。 バラシアは菱形の織模様が浮き出ます。 フォーマルから軍服、制服などにも使われているクラシックな生地と成ります。 フォーマル需要が多い事からもブラックを主体にミッドナイトブルーや ネイビーなどは良く見受けられるでしょう。 しかし、そんな枠など氏は軽々と超えて参ります。 ダークトーンでまとめられ、大変シックなカラー展開です。 100% WOOL 320/350g ・・・と、思わせておき マニアックな色まで多彩に表現されています。 また、上記3シーズンウエイトから秋冬ウエイトに! 100% WOOL 370/400g バラシア織でのブラックウオッチ、、、初めて見ました! 氏が穿かれているのは きっとコレですかね⁉ 100% WOOL 370/400g なんてヘビーなウエイト、、、、。 オーバーコートにも良いですが、ホワイト(クリーム)があるので やはりディナージャケットを想定もされているのでしょう。 最早このレベルでは、室外パーティーでないと 空調管理された室内では暑いでしょうね、、、。 そう、ガーデンパーティーだってあり得るのですから こういったポジションもアリなのです。 この位 織り糸が太いと菱形の表情が良く見えますね。 100% WOOL 600/630g !!! コレはトキメキました、、、かなり粋ですね! 一見は黒か紺系に見える、そう思ってしまいますが、 実は緯糸にダークグリーンを使っています。 見え隠れするグリーンが本当にエグくて素晴らしい! これは是非ブラックウオッチのトラ―ザウスを穿きたくなりますね。 きっと このグリーンの糸は ブラックウオッチ用で使用された糸を流用しているのでしょう。 100% WOOL 600/630g 子供の頃、家庭科で使ったフエルトを思い出してしまいました! 何て凄いカラーバリエーションなのでしょう。 FOXと言えばフランネルは欠かせませんから、色の分野でも他の追従を許さぬほど圧倒的です。 同社が、社長が推奨するように 普段着にも是非との事。 楽しくなるようなブレザーを、そしてウエストコートを、トラウザースにだって勿論お勧めです。 100% WOOL 370/400g このキツいピンク、正に英国っぽさを感じずにはいられませんし、 パープルでブレザーやタウンスーツなども、、、 日本では目立ち過ぎるでしょうね。 綺麗なパウダーブルー、その下 深いダックブルーみたいな色に惹かれるのですが、、、 ワクワクさせてくれますね。 写真では加工しても 上手くリアルな色を出せていません、、、、。 このイエロー、くすんだ感じでオレンジ味も感じる独特な色。 上手く伝えられませんが 英国では「GOLD」となるこの色味、大好きです! 英国では『 PRINCESS OF WALES GOLD 』という固有名称をもつ ゴールド色もあり、歴史を感じさせてくれます。 ・・・・・如何でしたでしょうか。 楽しきパーティーが想像できたでしょうか。 私が修行していた若い頃、お世話になっていた老舗TAILORでは グアナコのオーバーコートが飛ぶように売れて(注文が入って)いました。 グアナコとはラクダ科の動物であり、ビキューナと生息地はほぼ同じです。 カシミアの上をいく高級素材として知られています。 顧客層の多くの方々は上質なカシミアのコートなんて既にお持ちの事でしょう。 更に一部の方々はビキューナでさえ所有されているでしょう。 ですが グアナコは着た事ないですよね! 的な感じだったのでしょうか⁉ 当時 私も初めてグアナコの存在を知りました。 もう30年も前の話になりますが、、、。 という事で、相応な方々は既にブラックなディナースーツはお持ちですよね。 だからこそ 新しく『カクテルコレクション』より如何でしょうか! と、、、私とダグラス社長の意見(きっと⁉)という事で仕舞いとさせて頂きます(笑)。 今週も最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
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【 Baby Cashmere:K様のバックベルトコート 】
2024.11.19 お客様のご注文
Jan. 1938 ロンドンの冬、帽子にオーバーコートが欠かせぬ中、 行列を作るクラシックな出で立ちの紳士たち。 アーセナルFC(フットボール)のもと本拠地であるハイバリー、 アーセナルスタジアムでの観戦に並ぶサポーターの方々なのだそうです。 現代の観戦スタイルとは大違いですね、現代までの月日は 随分ガラリとカジュアル化が進行した事が見受けられます。 スポーツ観戦と言えば有名な『ポロコート』が頭に浮かびますが、 こちらは19世紀後半 ポロ競技における英国チームの選手たちが着用していた ウエイトコート(待ち時間に着用)が原型とされています。 これをアイビーの選手たちが自分達もと取り上げ、広がりました。 また、観戦という部分では「スペクテーターシューズ」は正にその名の通りですね。 1900年代初頭より紳士たちが競馬観戦などに好んで穿かれていた所謂コンビの靴です。 つま先や踵、羽の部分などには確りとした革で仕上げ、 歩行時に屈折する部分には柔らかな鹿革を使用していました。 機能性重視ゆえのコンビな靴はスポーティーでもありつつも 決してエレガントさを損なわせぬ魅力があります。 師走まであと僅かに迫り、そろそろオーバーコートも必要になる寒さを前に 着用出来る事を楽しみにされている方々もおりましょう。 オーバーコートには独特な魅力がありますよね。 防寒着である前提であり、ストールやグローブ、 そしてハットを被ってスタイルとしては理想的完結です。 さて、今週は至高のカシミアでオーバーコートをご注文下さった K様のコートを紹介させて頂きます。 ダブルブレストの6釦‐3掛け、ダブルはもともと打合いが深く、 Vゾーンもコンパクトでより温かいとも言えますね。 生地はこれ以上なき至高のベビーカシミア、 そこにセーブルをブレンドしてリップルフィニッシュ。 カラーはドレッシーでエレガントな ミッドナイトブルー であり、 誰しもがそのオーラ―と存在感に頷かざるを得ないでしょう。 http://dittos.seesaa.net/article/451681604.html 【 至高のベビーカシミア 】 こんなにもドレッシーでエレガントな生地だからこそ、 王道的なチェスターフィールドコートを誂えたくなります。 しかしK様は敢えてドレス度合いを下げ、普段使いにも着用しやすくしたいとの事。 着丈はドレス度合いにも大きく関係しますので、膝上丈にするだけで 随分と軽快感が出ますが、丈は膝丈までは欲しいとの事、、、 そして打合いはダブルブレストをご所望です。 希少で貴重、この生地が持つ品位を損なわせぬよう柔らかく砕いて料理しましょう。 チェスターフィールドコートの様に誰しもが分かるエレガントなシェイプを 構築せぬよう胸ダーツは省き、ややナチュラルなシルエットにしつつも バックベルトを付けてデザイン的なアクセントと共にウエストラインも 緩やかな絞りを感じさせてくれるようにしましょう。 カフはターンバック、背中はアクションプリーツを畳む事で機能性と共に スポーティーな要素が加味されますので こんなポジションでは如何でしょうか! オーバーコートに付けられるバックベルトは、左右脇よりのベルトを 釦によってセンターで結合するスタイルが多いですね。 これがスポーツジャケット(ピンチバック)になると そのベルトは大抵身頃に縫い付けられ固定されています。 今回は敢えて釦結合無しのワンピース・バックベルト、 そしてユトリを与えたナチュラルなシルエットをそのベルトで絞り込みます。 ベルト自体もフラシにして(固定せず)後身頃の優雅なドレープを、 この美しき生地が持つ妖艶なドレープを活かす事にしましょう。 仮縫いでは閉じてありますが、背中心には インバーテッドプリーツが裾まで畳まれております。 このオーバーコートを見た時、前からの印象と、後ろから見た印象は ガラッと変わるそのギャプこそが今回のポイントです! ではじっくりとご覧下さいませ、 とても魅力的なオーバーコートに仕立てあがりました。 寒く感じられる日も出始め、いよいよお仕立て上がりです。 ライニングはネイビーとグリーンによる 交織のヴィスコースをお選びになりました。 丈は膝までありますので裾は表裏結合させず『フラシ』 にさせるのが 理に適った丁寧な始末ながら、その分手間は増えます。 インバーテッドプリーツは多くの布を使うので、その分重くなります。 プリーツ内の奥で釦開閉する仕様もありますが、デメリットとして更なる重み、 厚みも生じますので開閉は切らず、それなりに贅沢なプリーツ量を確保して 素直でシンプルな仕上げにしています。 これだけ開閉量があれば足さばきにも十分ですね。 オーバーコートは脱いで手持ちも想定されるため、 内ポケットの中身がこぼれぬようフラップをお付けします。 リップルたる正にさざ波感、妖艶な光沢感は美しき光の陰影を投影します。 この生地のウエイトは、コーティングとしては中肉級ながら 最高のカシミアですから軽くて暖かい訳であり、 セーブル君の性能も10%分は含まれているので+αですよ! お仕立てを大変楽しみにお待ち下さっておりました。 この日、当店での 1st-BESPOKE SUIT を着てこられての御来店です。 オーバーコートですから インナーたる上着の型紙より導き出された 設計(型紙)であるからこそ、マトリョーシカの様に完璧な相性が生まれるのです。 であれば、仮縫い含めフィッティング確認は原型となるインナースーツにて。 御納品後はお手持ちの様々なスーツにも合わせてお楽しみ下さい。 1stスーツも随分と馴染んできており、K様色に染まりつつありますね。 とてもお似合いであり、キマっております! http://dittos.seesaa.net/article/502852133.html 【 VINTAGE MOXON:K様のご注文 】 深く赤味の強いブラウン、バーガンディーをご所望にてお決め成さったそうです。 英国王はオックスブラッドで誂えられていましたね。 BESPOKEで誂えられたこの靴は、かの名店におられた M氏に御注文されたとの事です。 英国靴らしき顔立ち、クラシックですね。 ではご試着頂きましょう。 内部芯も軟らかに、インナーのスーツが芯となり支えとなります。 動いてフィット感や機能性の確認です! とても綺麗にフィットしていますね、当たり前ではありますが! お仕立て上がりでプリーツの一時中綴じは解除済みですが、 動かなければ開きません。 ここが大事です、例えば着用しただけでプリーツが開いてしまうという事は、 その部位に対する必要距離が足りぬ証拠です。 動いてこそ襞が開き、機能として性能が発動されます。 (今回の場合は敢えて与えた過剰ユトリもあるので、 それ自体も機能面への効果に繋がります。) そのエレガントな後ろ姿は残念ながらご自身では見えませんが、、、。 この御納品日に際し このコートを意識して誂えられたハットとグローブ、 これらもダークなネイビーで揃えられたとの事であり、 とても光栄であり嬉しき気合で御座います。 折角持参したとの事でフルコーディネイトでご堪能も! やはり帽子があると締りが違いますね。 K様、素敵です、、、、完璧な装い、 これをイメージに周辺アイテムも揃えられ 此度コンプリートを迎えました。 グローブやハットは当然 このオーバーコート以外にも合わせ、 活躍してくれる事も前提ながら、一つの重衣料に対し ここまでトータルで揃えられる拘りっぷりは流石であり、 お気持ちも凄く分かります! 今月にはデビューを目論んだご着用予定があるそうです。 月末に向かい寒さも増すと思いますので 是非ともデビューを飾ってくださいませ。 素敵なご注文を誠に有難う御座いました。 ・・・・・如何でしたでしょうか。 やはりオーバーコートは男心をくすぐりますよね。 最近ではかなり久し振りにカシミアの出物仕入れが御座いました。 BESPOKEでは来冬への仕込みとなりますが、 H.S ORDERでは年明けの一番寒い時期へ間に合いますので是非如何でしょうか。 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。 今週も最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。
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